プーシキン美術館展 | れぽれろのブログ

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2日の土曜日、三連休の初日、三宮の神戸市立博物館で開催されている
「プーシキン美術館展 フランス絵画300年」と題された展示を見に行きました。

プーシキン美術館はモスクワにある美術館。
ロシアの美術館ですが、今回展示されているのはフランス美術です。
この展覧会、17世紀のフランス古典派から20世紀の現代美術まで、
フランス美術史を大きく俯瞰できる展覧会になっています。
主要画家がほぼ1人1枚揃っているという贅沢な展示。
18世紀の啓蒙専制君主エカテリーナ2世のコレクションから、
20世紀の資産家のコレクションまで、堂々たるラインナップ。
フランス美術史に興味がある方なら。きっと楽しめる展覧会です。


以下、各展示作品の覚え書きなど・・・。


まず初めに登場するのは17世紀~18世紀初頭のフランス古典派です。
ニコラ・プーサンの「アモリびとを打ち破るヨシュア」。
端正な古典主義・・・と言う感じではなく、たくさんの人物たちが入り乱れる、
かなりドラマチックな戦いです。
なんとなく後のロマン主義みたい。
その他、ジャン=バティスト・サンテールという方の「蝋燭の前の少女」、
アレクシ・グリムーという方の「たて笛を持つ少年」など、
なとなくカラヴァッジオやラ・トゥールに通じる光の使い方で、面白いです。

続いては18世紀、ロココの時代。
ブーシェの「ユピテルとカリスト」がありました。
深い森で繰り広げられるロココの官能性、色気漂うレズビアニズム。
自分はフラゴナールが好きなのですが、残念ながら展示はありませんでした。
しかしフラゴナールとよく似た主題の絵がたくさん並んでいます。
グルーズの「手紙を持つ少女」。
手紙を片手にうっとりとした上目遣い。
グルーズならではのクセのある顔立ち。
そして、なぜか(無駄に)胸をはだけています。
いかにもロココ時代の閨房画といった感じ。

続いては19世紀初頭、新古典主義~ロマン主義の時代。
ダヴィッドの小品があります。
廃墟画家ユベール・ロベールの「ピラミッドと神殿」。
エジプトっぽいのとローマっぽいのが混ざっています(笑)。
アングルの「聖杯の前の聖母」。
中心の聖母を挟んでに脇の2人の人物、そして画面下部にも聖杯を挟んで
脇に2つの燭台、
シンメトリックな画面が心地よいです。
そして聖杯と燭台の描き込みが良い感じ。
ドラクロワの「難破して」。
過去記事でも書いたことがありますが、ロマン主義の画家は
なぜか船の遭難が大好き。
ドラクロワもロマン派らしく(?)、船上の災難をドラマたっぷりに描いています。

次はバルビゾン派です。
ミレーの「薪を集める女たち」。
そしてコローの「突風」、この絵は後期コローならではの深い森、
「モルトフォンテーヌの思い出」などと同様の深い緑とグレーの絵。
良いですね。

19世紀後半は印象派が登場します。
この手の展覧会での印象派期の画家コーナーでいつも思うこと、
過去記事でも何度か書いていることですが、
モネ、ルノワール、ドガの大胆さ、これが面白いです。
モネの「陽だまりのライラック」。
人物の上に降り注ぐ陽光を、大胆な絵筆の点々で表現する・・・
それでいて陽光に見えるという面白さ。
ルノワールの「ジャンヌ・サマリーの肖像画」。
皮膚が緑色です(笑)。
しかし濃い緑のドレス、そしてバックのピンク色のせいもあってか、
効果的な肌色に見えます。
そしてルノワールの筆触は良いですね。
ドガの「バレエの稽古」。
人物のポーズやしぐさも良いですが、右下に全く何もないスペースがあるのが
ドガらしい画面構成で、面白いですね。

ポスト印象派、19世紀末~20世紀初頭になると、モネ、ルノワール、ドガの
影響を受けた方々の絵が登場し、大胆さが普通になってきます。
ゴッホ、ゴーギャン、ドニなどが並ぶ。
ゴーギャンの絵は、実物を見ると(自分の場合)なんとなく
緑とピンクが主張してきます。
今回の2枚も緑とピンクが印象的。
「働くなかれ」・・・いいタイトルですね(笑)。
そして、セザンヌの「パイプをくわえた男」。
画面上に溢れる「く」の字のリズム。
至る所に「く」が見つかります。そして全体に斜めの画面構成が楽しいです。
セザンヌは面白いなあ。

20世紀、百花繚乱の時代。
ピカソ、マティス、ローランサン、シャガール、キスリング、レジェ。
有名画家たくさん。
そんな中、このコーナーの個人的な目玉は
ルソーの「詩人に霊感を与えるミューズ」。
ローランサンとアポリネールのカップルを描いた作品。
ルソーはすごく好きな画家ですので、これを見れただけで満足です。
不思議な強度溢れる人物と植物・・・面白い作品ですね。
画集で見たのと少し印象が違うな・・・と思ったのですが、
調べてみると画集などに登場する有名な方はバーゼル市立美術館の所蔵の
作品で、このプーシキン美術館の方は別バージョンなのだそうです。
人物の顔、そして左側のローランサンの髪に纏わりつく黒い花の印象が
だいぶ異なります。
ルソーはいわゆる素朴派の画家ですが、ピカソやシャガールなど、
並み居る巨匠たちの作品の中で
ものすごい存在感を放っています。


ということで、17世紀から20世紀まで、
フランス絵画を存分に楽しむことができました。

昨年から地方の美術館(大原美術館、ひろしま美術館、富山県立近代美術館)を
いくつか回っていますが、これらの常設展示品も、各時代の著名な作品を
俯瞰することができるような並びになっていました。
プーシキン美術館のコレクションも、これらの美術館のコレクションと
似たような印象(規模はもっと大きいですが)。
ロシアも日本も、フランス・西欧美術の収集に積極的・・・。
ということで、まだ行ったことのない地方の美術館にも、
また行ってみたくなってくるのでした。