交差する表現 工芸/デザイン/総合芸術 | れぽれろのブログ

れぽれろのブログ

美術、音楽、本、日常のことなどを思いつくままに・・・。

27日の土曜日、京都に行って来ました。
京都では現在、リヒテンシュタイン、ゴッホ、狩野山楽・山雪、などなど
面白そうな展覧会がたくさん。
このうち、どれか2つくらい見てこようと思い、京阪電車に乗ってふらりと京都へ。
本当は午前中から出発しようと予定していたのですが、あれやこれやで
岡崎公園に到着したときにはどういうわけか14時を過ぎています。
あんまり時間がない・・・。

この日は連休の初日で、岡崎公園には人がたくさん。
とくに京都市美術館周辺が混んでいる様子で、
時間も遅めだし混んでいるのは嫌やなと思い、リヒテンシュタインとゴッホは諦め、
「空いてそう」という理由だけで(笑)、京都国立近代美術館の
「交差する表現 工芸/デザイン/総合芸術」と題された、
京都国立近代美術館 開館50周年記念の特別展を鑑賞してきました。

自分は国立国際美術館が好きで、"友の会"の会員になっています。
実は国立国際美術館の会員になっていると、
京都国立近代美術館の特別展は無料で入れます。
なのでチケットも買わず悠々と会場入り。
しかし、この日4月27日は何と無料観覧デーとのこと。
一般の人も無料で入れる日のようです。なんとなく損した気分・・・笑。
無料デーなので混んでるかな・・・と思いましたが、そうでもなく
落ち着いて鑑賞することができました。

会場にはゴッホ展の図録を持った人がたくさんおられました。
ゴッホ展の鑑賞に疲れたのか、椅子に腰かけておられる方がたくさんいました。
入場無料を良いことに、休憩中なのでしょうか。
展示は二の次で、ベンチ代わりの入場なんでしょうか・・・笑。

この展覧会は、工芸やデザインといったキーワードでの
京都国立近代美術館のコレクションを中心とした展示となっていました。
ところで自分は工芸については全然詳しくありません。
絵画や写真を鑑賞することは好きで、彫刻や仏像なんかも割と好きなのですが、
実は工芸作品は少し興味の対象外・・・。
大阪の中之島が好きで、国立国際美術館や中之島図書館や
大阪市中央公会堂にはよく行くのですが、
実は大阪市立東洋陶磁美術館には一度も行ったことがないのです・・・。
なんというか「用の美」というものに、あまり縁がありません。
画集や写真集を図書館で見たりするのは好きな子だったのですが、
どうも所有や使用に対する欲求がなく(なので絵も持ってない)、
実用を目的とする傾向が強い工芸作品については少し縁遠いのです。
しかし、展示内容は面白く、楽しく鑑賞してきました。
以下、やや絵画・美術史的な視点になってしまいますが、
覚え書きを残しておきます。


まずはじめに、明治期の内国勧業博覧会に纏わる作品が紹介されていました。
狩野芳崖の悲母観音が登場します。近代日本画の超有名作品。
体は女性っぽいフォルムですが、髭が生えています。
性別を超越した独特の身体、観音様は面白い。
なめらかな身体と服飾の曲線がいいですね
で、合わせて展示されていたのが、川島甚兵衛の悲母観音。
狩野芳崖の悲母観音を元に織物に仕立てた作品で、
こちらの方が内国勧業博覧会に出品された作品のようです。
2作品が並べて展示されていますが、観音様の曲線の微妙なバランスは
どちらかというと芳崖の方がいい(←ダジャレではなく)。
織物へのトレースは意外と難しいのでしょうか。

明治末期、このころ欧州ではいわゆる"世紀末美術"の全盛期で、
アールヌーヴォーが登場するのもこの時期です。
我が国においても、アールヌーヴォー風の装飾工芸が制作されていたようです。
ここで登場するのが、いわゆる"脂派"の画家、浅井忠です。
意外なことに、アールヌーヴォー風のデザインを残しています。
自分は黒田清輝などの外光派が日本の洋画を確立する以前の作品も
意外と好きで、浅井忠も割と好きなのですが、アールヌーヴォー風のデザインは
浅井忠のイメージとは異なる意外なデザインで面白いです。
黒色と金・銀色の組み合わせの小箱の工芸品も展示されています。
尾形光琳の八橋蒔絵螺鈿硯箱を思い出すような作品で、何やら面白い。

大正期、次に登場するのが竹久夢二。
ポスターや挿画など、結構な点数が展示されています。
竹久夢二も画家ですが、キャプションによると夢二のデザインは、
その後の日本のデザイン界に大きな影響を与えたのだそうです。
夢二は絵画史的には大衆的な美人画の画家として有名ですが、
ポスターや挿絵など、確かにデザイン的に面白い。
今回夢二の作品を纏まって鑑賞(意外と自分は夢二をきっちりと見たことがない)
したのですが、夢二は面白いです。
人体の描写・ポージングが結構多種多様です。
描き方も洋画風、日本画風、マンガ風、かと思えばモディリアーニみたいな
雰囲気だったり、晩年のマティスの切り絵みたいな前衛的なフォルムだったり。
今さらですが、夢二って面白いですね。

展覧会の中盤からは、本格的に工芸作品ばかりになってきます。
富本憲吉とか河井寛次郎とかハンス・コパーとかルーシー・リーとか、
なんとなく名前は聞いたことがありますし、過去の京都国立近代美術館の
常設展示で見たものもありますが、湧いてくる感想は「使いにくそうやな」
くらいの感想(←怒られそうですね 笑)。
そんな中、面白いのが八木一夫です。
もはや何の用途に使用するか分からないような、
よく分らない工芸作品を残しています。
「ザムザ氏の散歩」
カフカの小説に登場する人物の造形、まあるい輪っかに穴がぽちぽち。
散歩って、こんなもんにウロウロされたらかなわん・・・(笑)
「距離」
板に手が2本くっついている作品。
両手で何かの距離(幅)を現わしているようです、ナニコレ。

工芸作品は後半になるに従って前衛的、八木一夫的なものが増えて、
意味不明度が増してきます。
単に鞄やジャケットが置いてあるだけのような、レディメイドのような作品だとか、
こういう作品が展示されていると、急に面白がるようになる自分・・・(笑)。
駅前によく設置されているようなモニュメントと変わらないような、
前衛彫刻的な工芸作品もあります。
平面に布や糸をあしらって壁に展示されている作品など、
工芸作品ですが抽象絵画的にも鑑賞可能。
工芸といっても「用の美」といえる作品はだんだんと少なくなり、
素材や制作方法に工芸的要素があるだけで、
前衛彫刻や前衛絵画との差異も曖昧になってきます。
こういう工芸なら面白くて好きです。
戦後美術の流れの中で、このあたりの工芸作品はちょっと体系的に
色々と調べてみたい気もしてきました。


以上、楽しく鑑賞しました。

京都国立近代美術館を後にし、三条通りをトコトコと西へ。
三条河原町方面の商店街、音楽CDや書籍・楽器などを販売しているお店
十字屋三条本店で、関西グスタフ・マーラー交響楽団のチケットを購入。
そんなこんなんでウロチョロしていると、いつの間にやら16時を過ぎています。
あまり時間がない・・・慌てて次の目的地へ。
京阪電車で七条まで下り、京都国立博物館に向かいます。
狩野山楽・山雪の展示を見て来ましたが、
これがびっくりするくらい面白かったです。

ということで、続きはまた次回・・・。