聖アントニウスはキリスト教の聖人。
3世紀~4世紀の人です。
生まれは現在のエジプト、当時はローマ帝国領内です。
キリスト教の家系に生まれ、信仰心が篤く、
後に全財産を捨てて苦行生活に身を投じます。
後に全財産を捨てて苦行生活に身を投じます。
で、この苦行の様子ですが、たくさんの美術作品に描かれています。
そしてこの苦行、なぜか魔物に脅かされる形で描写されます。
たくさんの魔物に囲まれ、それでも信仰を捨てないアントニウスさん。
こういう魔物の描写は、15~16世紀ごろの北方ルネサンスの画家や
20世紀のシュルレアリストたちの独壇場。
たくさんの面白い絵が残されています。
最近の美術の記事は幻想的・怪奇的な絵が多い気がしますが、
今回も懲りずに(笑)怪奇的な絵になりますので、ご了承ください。
マティアス・グリューネヴァルトは16世紀ドイツの画家。
いわゆる北方ルネサンスの画家のひとり。
おそらくこの絵が一番有名な「聖アントニウスの誘惑」のような気がします。
中央のおじいちゃんがアントニウスさんです。
不気味な化け物たちが襲いかかる、危うしアントニウス。
左下には何やら病気に侵された人が描かれています。
16世紀当時、聖アントニウスを描いた絵は、左下の人のような
原因不明の奇病の治癒に効果があるという俗説があったのだとか。
ヒエロニムス・ボッシュも15世紀後半~16世紀の北方ルネサンス画家。
中央に聖アントニウスがいますが、グリューネヴァルトの絵のように
モンスターに襲われているという感じは少なく、
むしろアントニウスさんとはあまり関係なく、
モンスターが勝手にウロチョロしているといった感じです。
モンスターが勝手にウロチョロしているといった感じです。
ボッシュの描くモンスターは結構バラエティに富んでいます。
この絵は3枚1セットのうちの中央の画面です。
前回も登場したピーテル・ブリューゲル。
版画作品を残しています。
右下にアントニウスさん。中央に謎の巨大な顔とお魚。
この絵のモンスターは、怪物というより妖怪だか妖精といった雰囲気です。
ブリューゲルはボッシュの影響を強く受けた画家ですので、
少し絵の雰囲気も似ている気がします。
グリューネヴァルトもボッシュもそうですが、北方ルネサンス系画家は
細かく細部を描き込むので、大きめの画集などで見るのが良いですね。
ブリューゲルはボッシュの影響を強く受けた画家ですので、
少し絵の雰囲気も似ている気がします。
グリューネヴァルトもボッシュもそうですが、北方ルネサンス系画家は
細かく細部を描き込むので、大きめの画集などで見るのが良いですね。
マックス・エルンストは20世紀ドイツのシュルレアリスムの画家。
魔物たちは同じドイツのグリューネヴァルトに近い雰囲気ですね。
中央のアントニウスさんのやられっぷりがどの絵にもまして凄まじい(笑)。
所々にエルンストお馴染みのデカルコマニー
(ガラスなどに塗られた絵の具を転写する)の手法が使われています。
(ガラスなどに塗られた絵の具を転写する)の手法が使われています。
サルバドール・ダリは超有名なスペインのシュルレアリスム画家。
ダリの場合、ちょっと他の画家とは違う雰囲気の絵画になっています。
足のやたらと細長い象や馬は、ダリの他の絵画にも登場するイメージですね。
そしてアントニウスさん、なぜか全裸です。
聖アントニウスが砂漠の中で幻覚を見ている。そんな雰囲気の絵です。
聖アントニウスシリーズでは、個人的にこのダリの絵が一番好きかもしれません。
余談になりますが、苦行の途中でモンスターに襲われる聖人といえば、
お釈迦様が悟りを開く前に瞑想の邪魔をしにマーラ(悪魔)が現れる
仏教説話のエピソードを思い出します。
ユーラシアの西と東で、同じような宗教的エピソードがあるというのも
何やら面白いですね。