ブルックナーの9番 (下野竜也&PAC) | れぽれろのブログ

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16日の土曜日、花粉渦巻く中、西宮の兵庫県立芸術文化センターに
行ってきました。
目的は兵庫県立芸術文化センター管弦楽団(PAC)の第59回定期演奏会、
「下野竜也 ブルックナー9番」と題された演奏会です。

PACと下野さんのブルックナーシリーズは、今回で4度目だそうです。
過去に4番、7番、8番が演奏され、今回はブルックナー最後の交響曲、9番です。
自分は4年前、この7番の演奏を聴きに行きました。
で、2年前の8番も聴きたかったのですが、こちらは予定が合わず、聴けず仕舞い。
自分はブルックナーの交響曲の中で1曲だけ選ぶなら、9番が一番好きなので、
今回は楽しみな公演です。

ブルックナーは割と好き嫌いが分かれる作曲家だと思います。
好きな人はとことん好きだが、そうでない人にとっては、
しつこい繰り返しが苦痛だったり、どの番号も同じような構成で同じように
聴こえたり(実際は差異があるのですが)と、あまり楽しくは感じないようです。
「ブルックナーのシンフォニーがかかっていた。
何番のシンフォニーなのかはわからなかったが、
ブルックナーのシンフォニーの番号なんてまず誰にもわからない」
 (村上春樹 「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」より)
・・・という風に、興味のない人にとっては、こんな感じなのでしょうね(笑)。

ブルックナーは形式がはっきりしているので、
分かりやすい/分かりにくいで言うと、分かりやすいと思います。
ソナタ形式の楽章は、ガッチリした第1主題→美しい第2主題
→反動的に激しい第3主題、というパターン。
緩徐楽章もソナタ形式もしくはABABAなどのシンプルな構成。
スケルツォは律義な複合三部形式。
難しくはないと思いますが、聴いて楽しいかどうかが意見の分かれるところ。
自分はというと、当然ブルックナーは好きで、とくに緩徐楽章がすごく好きですね。
あと、ブルックナーは版の違いによる細かい差異なども、
マニア心をくすぐる要素ですね。(自分はこの辺はそんなに詳しくないですが)


いつもの如く能書きが長くなりましたが・・・
以下、この日の感想等々の覚え書きです。

この演奏会の前半は、ヴォーン・ウィリアムズのオーボエと弦楽のための協奏曲。
知らない曲でした。
オーボエ以外はすべて弦楽器のみという小編成の曲。
民謡風の旋律が続く美しい曲でした。
1楽章の第2主題(?)のリズミカルな主題など、
なんだか日本の民謡みたいに聴こえます。
全般的に美しい曲で、うっとりします。

後半はメインのブルックナー9番です。
まずは1楽章。
第1主題からオケが大音響で鳴り響く!金管が吠える!すごい音圧です。
これぞブルックナーの生演奏!はやくもゾクゾク感が。
一転して美しい第2主題。
自分はブルックナーのソナタ形式の第2主題が好きです。
どの番号の曲もだいたい第2主題は美しくて良いですね。
第2主題の高音で盛り上がる部分などは、がっつりテンポを落として歌っています。
下野さんのコントロールがいい感じです。美しい!
第3主題は後半の長調になる部分が好きです。
展開部もオケの大音響部分が良いです。生演奏の醍醐味。
あとこの楽章、再現部で第2主題が帰ってくるところが好きです。
1楽章にて早くも満足。

2楽章はスケルツォ。
ブルックナーのスケルツォは律義な複合三部形式なので、
メイン主題は、少なくとも4回聴くことになります。
これがしつこくて嫌いだという人も聞いたことがあります。
自分もブルックナーの楽章の中では、実はスケルツォは
そんなに好きではないのですが、9番のスケルツォは結構好きだったりします。
メイン主題のダダダンダンダン・・・の怪しいリズムがかっこよくて良いですね。
この曲の中間部、弦のメロディに絡みつくように入ってくるフルートも好きです。
同じ主題のしつこい繰り返しも、実演だとこれが以外と楽しいものです。

そして、いよいよ3楽章。
曲に入る前に、なぜか居住まいを正してしまいます(笑)。
ブルックナーの緩徐楽章は、だいたいソナタ形式かABABA形式ですが、
9番だけは何だか形式がはっきりしない、幻想曲風といった感じです。
何だかブルックナーでは珍しいような楽章ですが、この楽章はすごく好きです。
第1主題(?)が徐々に盛り上がり、例によって大音響。
大音響で盛り上がった後は、ワーグナーチューバが登場する弱音の世界。
この弱音、生演奏で綺麗に響かせるのは意外と難しいようです。
去年聴いたシュターツカペレ・ドレスデンなど、
こういう部分は非常に綺麗なんだろな、などと余計なことを考えてしまいます。
そして美しい第2主題(と思われる部分)、ここがまたいいですね。
冒頭が再現され、展開部のような部分。
途中の木管楽器の同音連打が続く部分、警報音みたいにやたらと耳に付きます。
生で聴くとこういう部分が楽しいですね。
そして最後の盛り上がり、クライマックスの大音響、ゾクゾク・・・!
その後、再現部に入りそうな雰囲気になりますが、第1主題の盛り上がり部分は
再現されず、そのままあっさりと曲は終わってしまいます。
何だかそっけない終わり方ですが、この終わり方、意外と好きです。

この曲は4楽章がなく、未完です。
しかし、3楽章で終わって良かったように思います。
この3楽章のあと、どんな4楽章が来ても、余計な楽章に
思えてしまうような気がします。
シューベルトの未完成交響曲と同じで、未完で良かった曲のように思います。
自分はブルックナーの緩徐楽章が好きなので、7番なんかを聴いていても、
「もう2楽章で終わってもええのに」なんて思ってしまいます(笑)


あと、どうでもいいことですが、ブルックナーの演奏会の場合、
なぜか会場には年配の男性の人ばかりになる傾向があるように思います。
この日も自分の周りを見渡しても、何だか年上の人ばかり・・・。
自分が最年少ではなかろうか、という気になってきます(笑)。
しかし、この日は40代くらいの女性の方もかなり多いです。女性比率高し。
大阪のシンフォニーホールや京都コンサートホールだと、確実に男性ばかりに
なりそうですが、この辺りが兵庫県立芸術文化センターの一味違うところ・・・?
さすが「定期演奏会でチケットを売り切るオケ」だなと思いました。

・・・ということで、この日も楽しい演奏会でした。
下野さんのブルックナー、ぜひ次は5番を聴いてみたいです。