映画とクラシック音楽 | れぽれろのブログ

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「映画で使われているクラシック音楽」といったときに、
なぜか昔からよく語られるのが、以下の3つの組み合わせです。

・モーツァルト "ピアノ協奏曲21番2楽章"
  ・・・映画「みじかくも美しく燃え」に使われている
・ラフマニノフ "ピアノ協奏曲2番2楽章"
  ・・・映画「逢びき」に使われている
・マーラー "交響曲5番4楽章(アダージェット)"
  ・・・映画「ベニスに死す」に使われている

これらの曲の解説を読むと、必ず
"この曲は映画「みじかくも美しく燃え」で有名な曲で・・・"
みたいなことが書かれています。
しかし、少なくとも自分はこれらの映画を見たことがないので、
「~で有名な」などと書かれてもピンとこないです。
「ベニスに死す」は有名な気もしますが、あと2作品は現代日本で
果たしてどれだけの人が見たことがある映画なんだろう・・・。
古い映画を挙げて「~で有名」と解説するのも、どうなんだろうと思ったりも。
こういう解説は時代に応じてアップデートして行く必要があるのかもしれませんね。


ということで、以下独断&自分勝手な内容。
「このクラシック曲といえばこの映画を思い出す」を、比較的新しい映画から、
まったくの自分流で並べてみます。
映画のテーマ曲だけでなく、1シーンにさらっと印象的に
使われているものも含みます。
ややマイナーな映画が多いですが、少しでも「そうそう!」と
共感して頂ける方がおられると嬉しく思います。


・ストラヴィンスキー "バレエ「火の鳥」より「子守唄」"
 →映画「ショートカッツ」(ロバート・アルトマン監督)

この映画は20人くらいの登場人物が入り乱れる群像劇。
登場人物の1人がチェロ奏者です。
火の鳥の子守唄は、通常ファゴットの独奏で演奏されますが、この映画の
ある朝の1シーン、チェロ奏者が自宅でこの曲をチェロで演奏しています。
このシーンのしばらく後、別の登場人物の子供が亡くなるシーンに
繋がるのですが、子守唄→子供の死、というリンクが印象的です。
ちなみにこの映画にはドヴォルザークのチェロ協奏曲も
要所要所で何度か使われています。


・リスト "ハンガリー狂詩曲2番(オーケストラ編曲版)"
 →映画「アトミック・カフェ」(ケヴィン・ラファティ他監督)

この映画は40年代~50年代の核兵器に関する映像をコラージュした映画です。
最後にアメリカが核攻撃を受けるシーンがあるのですが、
ソ連からの核攻撃による空襲警報発令から核爆弾投下まで、
ハンガリー狂詩曲2番の出だし部分が使われています。
クラリネットのカデンツァ風独奏のあと、核爆弾がどかーん!
この映画のせいで、どうもハンガリー2番→核爆発という、
へんなインプットがなされてしまいました(笑)
なお、この映画にはこの他にもムソルグスキー「展覧会の絵」の
「古城」も使われており、ソ連のスパイであるローゼンバーグ夫妻の
処刑シーンの前に流れています。


・ベートーヴェン "ヴァイオリンソナタ5番「春」より2楽章"
 →映画「タイム・オブ・ザ・ウルフ」(ミヒャエル・ハネケ監督)

フランスの映画です。
この映画は、何らかのカタストロフが起こった後の世界が描かれる映画で、
最初から最後まで全くBGMが使われていません。
で、唯一出てくる音楽が、登場人物の1人が持ってるウォークマン(?)のような
携帯音楽端末から小さく聴こえてくるこの曲。
殺伐とした映像が続く中、登場人物の1人の女の子が、
そっとこの曲に耳を傾けるシーンは、すごく印象的です。
ベートーヴェンのこの曲がすごく好きになります。
ミヒャエル・ハネケ監督は「ピアニスト」という映画も撮っており、
こちらの映画では、バッハやシューベルトやショパンなど、
たくさんのクラシック音楽が流れる映画です。


・プッチーニ "歌劇「トスカ」より「星は光りぬ」"
 →映画「ヒトラーの贋札」(シュテファン・ルツォヴィツキー監督)

ドイツの映画です。
ナチスドイツの強制収容所で、偽札づくりを命じられるユダヤ人たちのお話。
偽札を完成させないと銃殺になります。
紆余曲折がありながらも偽札が完成し、その後、
収容所の中でちょっとした演奏会のようなものが開かれますが、
そこで登場人物の1人が歌っているのがこの曲。
「星は光りぬ」はそもそもカヴァラドッシが牢屋の中で、
銃殺刑を待ちながら歌う曲。
カヴァラドッシと同じ境遇のユダヤ人が歌う・・・印象に残るシーンです。


・ブラームス "ヴァイオリン協奏曲3楽章"
 →映画「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」(ポール・トーマス・アンダーソン監督)

20世紀前半、アメリカ西部の石油採掘の話。
この映画のメインテーマがブラームスのこの曲。
この曲の3楽章を聴くと、この映画を思い出すようになってしまいました。


・ラヴェル "ボレロ"
・ベートーベン "交響曲7番2楽章"
・サン=サーンス "交響曲3番「オルガン付き」1楽章後半部分"
 →映画「愛のむきだし」(園子温監督)

最後は邦画から。
4時間(!)の映画です。
自分が今まで見た映画で最長かもしれません。
家族・性愛・宗教がテーマの壮大な映画ですが、
基本は盗撮マニアの男の子と新興宗教に入信した女の子のラブコメという、
何だか変わった映画です。
で、この映画で上記の3曲が何度も効果的に使われるのが、すごく印象的です。
"ボレロ"は「奇跡まであと365日」のテロップのあと、
その後1年間をこの音楽とともに描写するという壮大な使い方。
"ベートーヴェン7番"は、新約聖書の「コリント人への手紙」の文句を、
主人公の女の子が延々暗誦するシーンのバックに流れているのが印象的。
"オルガン付き"はラスト近く、心を失った男の子が心を取り戻すシーンで
使われているのがよいですね。
なお、クラシックではありませんが、自分はゆらゆら帝国が好きで、
この映画にはゆらゆら帝国の曲「美しい」や「空洞です」が使われており、
好きな曲がたっぷり詰まった映画で、この辺りも印象的な映画です。