イギリスの絵画 | れぽれろのブログ

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西洋美術史で中心的な役割を果たす地域といえば、やはりフランスです。
多くの人が知っている有名画家のうち、半分くらいはフランス人でしょうか。
イタリアといえばルネサンスで有名。
オランダは17世紀の絵画史の中心地。
ドイツといえば、北方ルネサンスやロマン主義や20世紀の表現主義。
スペインはベラスケス、ゴヤ、ピカソのように、
美術史の節目で希有な才能が生まれる国です。

西欧の大国のうち、イギリスは美術史の中で少し扱いが地味な印象があります。
ですが、イギリスの絵画も意外と面白いものもあります。

なぜかイギリスの絵画は、幻想的、耽美的、
場合によっては怪奇的な要素を強く感じる絵が多い気がします。
そんなイギリスの有名画家たちの作品を並べてみます。


・ニュートン/ブレイク

ニュートン

ウィリアム・ブレイクは18世紀~19世紀の画家。
大陸のロマン主義時代に先駆けて、幻想的な作品をたくさん残した方です。
作品は水彩画と版画が中心。
ダンテの「神曲」を主題にした絵画作品など有名ですね。
この作品は同じイギリス人の科学者アイザック・ニュートンを描いたもの。
ニュートンさん、なぜか全裸です。
暗い闇の中、全裸で怪しげな岩に腰掛けて作図中・・・。
肖像画を描いても、なんとなく奇怪な雰囲気になるのがブレイクの面白いところ。


・雨・蒸気・スピード/ターナー

雨・蒸気・スピード

ウィリアム・ターナーも同じくロマン主義の画家。
風景画が多いですが、年を経るうちにどんどん風景が
幻想的・抽象的になっていくのがターナーの面白いところです。
この絵は雨の中を走る汽車を描いたものですが、
全体的に描写が荒く、不思議な雰囲気の絵になってます。
印象派風のようにも、見方によっては表現主義的にも見えます、
フランスをはじめとする大陸の国々が、こういった絵を描くようになるのは、
ターナーより数十年後の時代です。


・夢魔/フュースリ

夢魔

ヨハン・ハインリヒ・フュースリは元々はスイス人ですが、
イギリスに定住した方で、イギリス美術史の中で登場してくる人です。
これまた幻想的で奇怪な絵。
睡眠中の女の子の元に現れる、馬のようなものと猿のようなもの。
悪夢を現わしたものでしょうか。


・オフィーリア/ミレイ

オフィーリア

19世紀後半になると、イギリスではラファエル前派というグループが現れます。
ルネサンスのラファエロ以前を志向するグループですが、
なぜか耽美的な雰囲気の絵が多いです。
画家ではロセッティが一番有名だと思いますが、
ラファエル前派の絵を1枚挙げるなら、このジョン・エヴァレット・ミレイの
「オフィーリア」が一番有名だと思います。
同じイギリス人のシェークスピアの戯曲の1シーンの絵画化。


・ペルセウス/バーン・ジョーンズ

ペルセウス

同じくラファエル前派から。
ギリシャ神話のペルセウスの絵画化です。
現在のファンタジー系ゲームのイラストに出てきそうな絵ですね。
一部のゲームのキャラデザインなどを見ていると、
ラファエル前派の時期のイギリス美術の影響が強いようにも思います。


・サロメ/ビアズリー

サロメ_ビアズリー

ビアズリーは19世紀後半の世紀末美術のカテゴリで語られる画家の一人です。
同じくイギリス人であるオスカー・ワイルドの「サロメ」の挿画で有名ですね。
これはサロメがヨカナーンの首に口づけする瞬間。
首から流れ落ちる血液が装飾的な線を描き、画面下の花に滴り落ちる。
何とも幻想的な感じで、画面構成も楽しいですね。
好きな絵です。


幻想・耽美・怪奇というキーワードでイギリスの作品を選んで来ましたが、
コンスタブルやレノルズなど、綺麗な風景画や人物画を描く方もおられます。
個人的にコンスタブルの風景画はすごく好きです。
そんな中、イギリスといえば忘れがたい人がもう一人います。


・当世風結婚/ホガース

当世風結婚1

以前にもこのブログで取り上げた絵です。
ウィリアム・ホガースは18世紀の画家で、風刺的要素の強い作品が多いです。
この当世風結婚もそんなシリーズの中の1つ。
風刺やカリカチュアといえば、19世紀フランスのオノレ・ドーミエなんかが
有名ですが、ドーミエの100年ほど前にイギリスではこのような絵画が
描かれていました。
このウィリアム・ホガース、ウィリアム・ターナー、ウィリアム・ブレイクを合わせて
「イギリス美術の3大ウィリアム」と自分は勝手に呼んでいます(笑)。


とういうことで、たまにイギリス美術をあれこれ見てみるのもまた、面白いです。