丹後を歩く(4) 舞鶴引揚記念館 | れぽれろのブログ

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※2月10日の旅の記録です。

赤レンガ倉庫群を後にし、舞鶴引揚記念館まで、約7kmほど歩きます。
舞鶴湾の海岸線をなぞるように、国道27号線~府道21号線に沿ってトコトコ・・・。
ちなみに、自分は現在大阪南部、泉州方面の
国道26号線の沿線に近い所に住んでいます。
27号線とは連番になるので、意味なく愛着が湧いてきます(笑)。

海沿いを歩いていると、鳥の声がします。
ピーヒョロロと鳴いています。何の鳥なんだろう。
大阪ではあまり聴かない鳴き声です。

あとで分かったのですが、この鳥はトンビとのこと。
優雅に空を舞っています。
電線に止まったりしますが、カメラを向けるとすぐに羽ばたいてしまい、
撮影できません。

唯一何とか取れた写真。

舞鶴引揚記念館1


舞鶴港をパシャパシャ。

舞鶴引揚記念館2


途中、海上自衛隊の学校がありました。
舞鶴といえば旧日本海軍の軍港のイメージが強いですが、
現在でも海上自衛隊の拠点の一つなんでしょうか。

日本板硝子社の工場がありました。
住友系列の会社のようです。
後で調べると、やはり本社は大阪の北浜(中之島の南側)の住友ビル内とのこと。
またしても無意味に愛着が湧いてきます。


途中、やや上り坂になった後、トンネルを抜けると引揚記念館に到着です。

以下は入口に掲げられた「平和の誓い」の写真。

舞鶴引揚記念館3


舞鶴港は元々は軍港、しかし終戦後は軍港としての役目は終え、
満州など大陸から引き揚げて来る人々が到着する港となります。
引揚記念館は、このような引き揚げに関する展示もありますが、
旧ソ連の収容所で強制労働をさせられた旧日本兵に関する展示が
大部分を占めていました。
引き揚げというより対ソ連に対する受難の歴史館。

収容所(ラーゲリ)にて、パン一切れと少しのスープのみで、
強制労働を強いられる日本兵。
自分はソ連の収容所の事実は知っていましたが、
シベリアのみだと思っていました。
しかし、この記念館の展示によると、驚くべきことに
ソ連領内のかなり広範囲にわたって日本兵は分布していたようです。
中央ユーラシア沿い各都市はもちろん、はるか西のモスクワ近辺にも
日本兵はいてたようです。

極寒の中、労働を強いられる日本兵。
寒さに関する記述が多いです。氷点下何十℃の世界。寒そう!
寒がりな自分にとっては、かなりつらい記述。
(この後、この寒さの何十分の一かを体験することになりますが・・・
それはまた次回のお話。)

引揚記念館ですが、総じて旧ソ連に対する怨念を感じる展示でした。
イメージは原爆資料館に近い感じです。
第二次世界大戦後、敗戦国の「人道に対する罪」は、東京裁判や
ニュルンベルク裁判で裁かれましたが、戦勝国の罪は裁かれていません。
空襲や原爆はジェノサイドです。ラーゲリでの強制労働は捕虜虐待です。
しかし、敗戦国たる日本は、面と向かってアメリカやソ連に対し
ジェノサイドや虐待の事実を訴えることはできない・・・。
この状況は、現在でも続いています。
それでも、ジェノサイドや捕虜虐待があった事実は、語り継いでいく必要がある。
引揚記念館は、「引揚」の名を借り、平和を望む気持ちとともに、
合わせてラーゲリの過酷さを告発する意図を持った記念館・・・

そのような印象を感じました。
「過ちは繰り返しません」云々は、戦勝国のジェノサイドの事実を語り継ぐための
敗戦国の方便。これを単純に批判するのは、ナイーヴすぎる気がします。

さて、会場には大陸で生まれ、引き揚げを経験した漫画家や
イラストレーターの展示もありました。
赤塚不二夫、ちばてつや、林静一、高井研一郎・・・
みんな大陸で育ち、引揚を経験した人たちなんだそうです。
林静一はキャンディ「小梅」のイラストで有名な方。結構好きな絵です。
自分はアメ好きなので、小梅ちゃんはお馴染みなのです。
あと、高井研一郎の絵も可愛らしくて好きです。
中学生のとき、友達に「山口六平太」を借りて読んだ記憶があります。

引揚記念館の中には喫茶店がありました。
お腹がすいてきたので、ここでお昼を頂きます。
「海軍カレー」を頂きました。
辛口のビーフカレー、緑の具はピーマンかな?
やわらかめのご飯に、旭日旗(日の丸から放射状に赤い線が出ている旗)が
立っています。お子さまランチ、軍隊バージョン、といった感じ。
引揚カレーが甘口、海軍カレーが辛口とのこと。
引き揚げやら海軍やら、本来の意味を離れて記号としてメニュー化される。
こういうの、嫌いな人もいると思いますが、自分は結構好きです。
海軍カレー、美味しく頂きました。
合わせて、食後にコーヒーを頂きました。

帰りはバスで東舞鶴駅に戻ることにします。
このあとまだ歩く必要があるので、少しパワーを残しておかないといけないため、
歩くのは少しお休み。

バスを待つ間、引揚記念公園をウロウロ。
いくつか写真を取りました。

公園の上の方、高いところから見た舞鶴湾。
橋がかかっています。

舞鶴引揚記念館4


海の上に並ぶポチポチは何なんだろう?

舞鶴引揚記念館5


異国の丘&岸壁の母の詩

舞鶴引揚記念館6


舞鶴はナホトカと姉妹都市なんだそうです。
ナホトカの方向を示したものが。
ナホトカもたくさんの抑留者がいたところ。
何やら複雑な都市関係ですね。

舞鶴引揚記念館7


公園内には「トンビに注意」の看板がありました。
食べ物を狙ってやって来るんだそうです。
ここでさっきの鳥の正体が判明。きっとトンビだったんですね。
公園内でお弁当を食べるとよくないのかな。

ということで、バスに乗って東舞鶴駅に戻ります。
次の目的地は松尾寺です。
丹後シリーズ、次回で最後の予定です。