西村朗 光と影の響像 | れぽれろのブログ

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2/2の土曜日、大阪はとっても暖かかったです。
前日夜から続いてた雨も上がり、いい感じの日。
この日の最高気温は17℃を超えました。
冬物コートもマフラーもいらないくらいの暖かさだったので、
春物の薄手のコートを出して、気分良く出かけました。

行先は大阪城公園傍のいずみホール。
いずみシンフォニエッタ大阪の第30回定期演奏会、
「作曲家西村朗 光と影の響像」と題された演奏会に行ってきました。

西村朗さんは大阪出身の有名な作曲家。
いずみシンフォニエッタ大阪の音楽監督もされておられる方です。
2009年から3年間、NHK教育の番組「N響アワー」の司会を務められていた
方ですので、ご存知の方も多いと思います。
西村朗さんは今年で60歳になられるとのことで、
それを記念しての演奏会なのだそうです。

ところで、自分は西村さんが作曲された音楽を実はよく知りませんでした。
CDも持ってませんし、きっちりと聴いたことがない。
去年のいずみシンフォニエッタ大阪の定期演奏会に行ったときに、
「来年は西村朗の特集」と言っていたので、
これを機会にちょっとCD探して聴いてみようと思っていましたが、
結局1年間聴かないまま当日を迎えてしまいました。
相変わらずののんびり屋さんぶりなのですが、
こういうことは自分にとっては実はよくあること(笑)。
ということで、全然知らずに曲を聴きに行くことになりました。

今回西村さんの音楽を聴いた印象としては・・・。
すごく響きが楽しい音楽でした。
音楽の要素:メロディ、リズム、ハーモニーのうちの、
ハーモニーの要素(響き)を重視した音楽というか、そういう印象を受けました。
(一部リズムが楽しい曲もありましたが。)
20世紀以降の現代音楽はだいたいメロディをあまり重視しない傾向に
ありますが(ゆえに人によっては物凄くとっつきにくい)、
西村さんも基本的にはそういった現代音楽の傾向と同じ音楽だと思います。
しかし、音の響きが異様に面白い!
弱音から強音へ、そしてまた弱音。寄せては返す波のような音。
楽器の数が増えたり減ったり。音の数が変わる。音色が変わる。
メロディや形式といった要素はできるだけ廃し、
音色のつくり込みにパワーを割いているような印象です。
各楽器の音色を大事にしており、特殊奏法も多用されます。
グリッサンドの多用、木管楽器のグリッサンドなど、何だか大変そう。
(しかもやたらとゆっくりと音程が変わるグリッサンドが多く、しんどそう 笑)
音の情報量は多く、とにかく耳に楽しい音楽でした。

こういう音楽は、実演で聴くに限ります。
後期ロマン派音楽でも、CDなど録音ではなかなか細部の音が
よく聞こえないことが多いですが、実演だといろんな音がよく聴こえるので、
楽しさ倍増。
逆にこういった曲をCDで買っても、ひょっとしたらあまり面白くないのかも・・・?
(我が家の再生機がへっぽこなだけかもしれませんが。)

いずみシンフォニエッタ大阪の演奏会にはだいたい西村さんが来られて
解説などをされるのですが、今回も会場には西村朗さんご本人が
来られていました。
本番前にはプレトーク、そして大学生のときに作曲されたという
ピアノソナタの演奏もありました。
ピアノソナタは3楽章制で、フィナーレが攻撃的で楽しい。
低音がドンドコとリズムを刻む。
プロコフィエフのピアノソナタ7番のフィナーレなんかを少し思い出しました。
そして西村さん、自分のすぐ近くの席に座っておられました。
生西村朗がこんなに身近に・・・!

ということで、以下演奏された4曲の覚書など。

・オーケストラのための「耿」
高校生の時の曲だそうです。今回初めて舞台上で演奏されるのだとか。
短い曲でした。
解説によると、後の曲に比べて音数は少ないとのことでしたが、
確かに後の3曲よりはシンプルな感じ。

・室内交響曲第3番 「メタモルフォーシス」
前半部分は、弱音と強音が繰り返す音の渦。
音楽が徐々に盛り上がって行き、最強音から一気に音数が減って
単一楽器だけが残る、というパターンが多いように思います。
効果的でかっこいい。
コンバスの特殊奏法?も何だかやたらとかっこいい。
中盤からは変拍子祭り。
この辺、リズムが楽しくて体を揺らしてしまいそうです。
(当然揺らすのは自重しました、というかそもそも拍子が複雑なので踊れない 笑)
そしてピアノの低音連打から始まる楽しいリズムの嵐。
ピアノの方、立って演奏されています。
音を強めるためでしょうか。
楽譜に「立って弾け」の指示でもあるのかな?
(マーラー1番の「立って吹け」みたいに。)
この中間部分が異常に楽しいです。
最後は冒頭の弱音/強音のくりかえしが帰って来て終わります。
この曲、かなり気に入りました。

・クラリネットと弦楽のための協奏曲 「第一のバルド」    
休憩を挟み、伝説のクラリネッター、ライスターさんの登場です。
ライスターはドイツのクラリネット奏者で、
ベルリンフィルの奏者を務めておられた方。
5年ほど前、NHK教育の「芸術劇場」という番組で、
ブラームスのクラリネット五重奏曲を演奏されていた記憶があります。
ライスターさんの音色が良くて、
この曲に限ってはクラリネットの音ばかり聴いてました。
クラリネットは結構低音/中音/高音で音色が変わる楽器で、
自分は中音域あたりの音がすごく好きです。
ライスターさんのまあるい音が魅力的。
自分はクラリネットの高音域が実はあんまり好きではないのですが、
うまい演奏だと高音域でも綺麗に音が決まり、気持ちいいです。

・室内交響曲第4番 「沈黙の声」
311以降に作曲された曲で、今回が初演となるのだそうです。
基本的には3番と似た傾向の曲ですが、
3番中間部のリズムの嵐のようなものはありません。
その代わりバウゼが多用されます。
(解説によると、ブルックナー休止ならぬニシムラ休止なのだとか・・・笑)
この曲も3番同様、とにかく音響が楽しいです。
音の数は3番より少ない感じもしました。
若干処女作に回帰しているのかもしれない・・・?
金管楽器が咆哮する大音響(ここがまた素晴らしく良い!)もありましたが、
全体的には3番に比較して、やや静かな印象でした。
チェレスタとハープとマリンバとヴィブラフォンだけの部分だとか
音がものすごく気持ちいい。
その他、オーボエがリードだけで吹いてたりとか(笑)、
特殊奏法も面白いですね。

以上、すごく楽しい演奏会となりました。
何だかんだ言って西村さんのCDも欲しくなってきた気もしますが、
基本的に生演奏が効果的で素敵な曲だと思います。
機会があればまたぜひ生演奏で聴いてみたいですね。

会場を出ると夜。少しひんやりしています。
春物薄手コートだと少し寒いですが、いつものごとく、
大阪城から難波まで歩いて帰ります。
気分がいいと歩きたくなるのです・・・(笑)。