歌劇「フィガロの結婚」 (プラハ国立劇場) | れぽれろのブログ

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今日はオペラ「フィガロの結婚」について。

「フィガロの結婚」はモーツァルトが作曲したオペラ。
脚本はロレンツォ・ダ・ポンテ。
モーツァルトのいわゆる「ダ・ポンテ三部作」の第1作めになります。

モーツァルトのオペラで一番好きなのは?、と聞かれた場合・・・
メロディの素晴らしさとモーツァルト晩年の響きが印象的な「魔笛」
フィナーレのデモーニッシュな音楽が革新的な「ドン・ジョヴァンニ」
重唱が特に美しすぎる「コジ・ファン・トゥッテ」
どれを挙げるかは人それぞれですが、やはりモーツァルトとダ・ポンテが
最も気合を入れた取り組んだと思われる「フィガロの結婚」を挙げる人が
一番多いのではないでしょうか?

モーツァルトのオペラで1曲だけ挙げろ、なんてすごく難しいですが、
無理やり挙げるなら、自分もやはり「フィガロの結婚」になると思います。
さらに、今まで聴いたことのあるすべてのオペラの中で、
無理やり1曲挙げろというなら、やはり「フィガロの結婚」になると思います。
それくらい魅力的な音楽だと思います。

「フィガロの結婚」は、何というか、モーツァルトの気合の入れ方が
他の作品と違うような気がします。
個人的にとくに好きなのが2幕と3幕。
2幕はフィナーレ(とっても楽しい重唱の饗宴)は言うまでもなく好きですし、
その前の3つの独唱と2つの二重唱も非常に魅力的で好きです。
3幕は、伯爵と伯爵夫人、それぞれの独唱及びスザンナとの二重唱、
そしてそれらに挟まれた六重唱が特に良いですね。

「フィガロの結婚」の脚本は、意外と好き嫌いが分かれるようです。
無駄が多くて嫌いという意見も聴いたことがあります。
「コジ・ファン・トゥッテ」は、ワンテーマで物語も一本道。
「ドン・ジョヴァンニ」は、もう少し多様な人物が出てきますが、物語の中心に
主人公ドン・ジョヴァンニがおり、彼の個性にすべてが収束するように
お話が進んで行きます。
ところが「フィガロの結婚」は、脚本が比較的入り組んでおり、
群像劇の要素が強く、サブストーリーが多い感じ。
そして、そのサブストーリーの殆どが喜劇的なドタバタです。
この多様性を余計と感じるか、面白いと感じるかで、脚本の好き嫌いは
分かれそうです。
お芝居としては面白いですが、音楽を聴きたい人にとっては、
(無駄な)サブストーリーは余計なことなのかもしれません。
自分は情報量が多いものを好む傾向があるので、
もちろん「フィガロの結婚」の脚本は好きです。

物語は計4組のカップルが入り乱れるお話。
タイトルから考えると、一応主人公はフィガロで、彼とスザンナとの結婚が
物語の重要な要素の一つなのですが、もうひとつ大きなメインテーマは、
アルマヴィーヴァ伯爵と伯爵夫人ロジーナの確執から和解までのプロセス。
2幕と3幕で活躍するロジーナ、複雑な気持ちが音楽で描写されます。
この部分の音楽がやはり良いですね。
そして、最後に浮気性の夫を許すのは、変装していたとはいえ久しぶりに夫と
イチャイチャできたから(というように見えます)というのが、
理想的ではなく何だか現実的で、好きですね。

その他、ケルビーノのキャラクターが良いです。
年上のロジーナに憧れつつ、同年代のバルバリーナとイチャイチャし、
さらにスザンナもからかったりする。
おまけに劇中で女装して(女の子2人に無理やり女装させられる)、
しかも女装姿が異様に可愛いとか、無駄なエロ要素が多いキャラ。
まるで睦月影郎の小説に出てくる少年みたいなキャラです。
(↑・・・変なことを書いてすみません 笑)
そもそも少年キャラを女性歌手が演じると言う時点で、何やら倒錯的です。

そしてこのケルビーノが歌う2幕の超有名アリア「恋とはどんなものかしら」。
ベタで申し訳ないですが、ものすごく好きなメロディです。
短い曲ですが、メロディは多様で、転調と半音階のメロディを繰り返します。
どんどん変容していく音楽。
最後に一応曲を終わらすために最初の主題が帰ってきます。
終わりが必要なので無理やり終わらすだけ。
ワーグナーの無限旋律の萌芽がここにあるという説も聞いたことがあります。


で、なぜ「フィガロの結婚」なのかというと、
お正月早々オペラを鑑賞してきたからなのです。
4日金曜日に、プラハ国立劇場の来日公演を観に
神戸文化ホールに行ってきたのでした。

ということで、この日の公演のことを少し。

オーソドックスでシンプルな舞台でした。
衣装も普通、モダンではなく古典的な演出。
演奏も美しくてよい感じです。
モーツァルトを鑑賞していつも思うことですが、結局何をやっても
モーツァルトの音楽がいい!という感想になってしまいますね。

キャストは・・・いきなりどうでもいいようなことですが
バルトロとマルチェリーナの体型が印象的でした(笑)。
バルトロはいわゆる"リンゴ型肥満"を絵に描いたような体躯です。
マルチェリーナもちっちゃくてぽっちゃりしたおばちゃんです。
キャストによっては主人公より美男美女とか若く見える等の場合もありますが、
今回は違和感はなく、こういったキャラに適したキャストだと思います。

その他、バルバリーナがケルビーノよりすらっと背が高い。
バルバリーナがお姉さんっぽく見えます。
お姉さんと年下美少年という妄想が働きます。
(↑・・・しつこく変なことを書くやつ 笑)
この2人、4幕冒頭であからさまにイチャついています。
そして、このケルビーノの方の歌唱も良い感じでした。

1幕の椅子のシーンや、2幕のケルビーノ大脱出のシーンなど、
いつみても面白いですね。
3幕冒頭で伯爵がゴルフをしていました。
この時代(舞台は17cスペイン)にゴルフってあるんやったっけ?

マルチェリーナとバジリオの独唱はカットでした。
「フィガロの結婚」は過去何度か生舞台を見ましたが、
この2人のアリアはいつもカット。
・・・ちゃんと演奏される舞台はあるのでしょうか?

4幕のフィナーレ。物語のラスト。
伯爵夫人とスザンナが服装を入れ替えるのですが、一番最後の最後、
アルマヴィーヴァ伯爵の前に正体を現す伯爵夫人ですが、
スザンナの服とは違うドレスを着ています。
ここはスザンナの服装でないと、アルマヴィーヴァ伯爵の"気付き"に
繋がらないため、話が合わない気がするのですが・・・どうなんだろう?


ということで、楽しい公演でした。
プラハ国立劇場の次回公演は「魔笛」だそうです。
今秋、関西二期会も「魔笛」をやるようです。
今年は魔笛の年になりそうですね。