『真田丸』第15回『秀吉』感想(ネタバレ有) | ~ Literacy Bar ~

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※基本、ネタバレ有となっていますので、ご注意下さい。

先日、録画していた『武田信玄』を見ながら、母親と今年の大河ドラマについて語る機会がありまして、世間の御多分に漏れず、うちの母親も草刈さん演じる真田昌幸にぞっこんでした。草刈スズムシ昌幸が魅力的なキャラクターという点には全く異論ありませんが、私には直江兼続・真田信尹のイケボサポートコンビが至高。演技、挙措、色気、美声、どれをとっても重厚さが求められる大河ドラマの雰囲気があります。いや、草刈正雄さんや近藤正臣さんがアレという話ではなく、作品が彼らに求めている演技は重厚さよりも軽妙さに重きが置かれているということです、念のため。本作は物語の中核を担うキャラクターほど、その傾向が強い。典型が徳川家康ですね。あんなキュートな家康見たことねぇ。兼続や信尹は景勝や昌幸のサポート役という、作品の最前線から一歩退いた存在であるからこそ、従来型の重々しい役柄を担うことで主要人物とのバランスを取っているのではないかと思います。これが善くも悪くも三谷さんの作風でしょう。
まぁ、そんなワケで本作の主要キャラクターに重厚な雰囲気を求めるのは半ば諦めていた今日この頃でしたが、今回の放送ではいい意味で裏切られました。

愛之助さんの刑部、凄くいいじゃん!

それこそ、上記した演技、挙措、色気、美声の他に『風格』まで兼ね備えていました。もしも、予備知識なしで見ていたら、私は愛之助さんが演じているのは徳川家康と思い込んだでしょう。それくらいの風格を感じました。これは先々の楽しみが増えた気分です。反面、今回は如何にも三谷さんの歴史劇という感じで、刑部の他には特に印象に残る場面はなし。悪い点も見受けられなかったのですが、これといって、特筆する箇所もなかったです。
今回は大坂編の主要人物のお披露目という傾向の強い回でしたので、感想記事の項目も人物ごとに評していきましょう。まずは、サブタイの方から。


1.羽柴秀吉

羽柴秀吉「喧嘩売ってんのか?」

安定の小日向さんといいますか。この人は本当に巧い。同じ三谷さんの映画で丹羽長秀を好演していたとは思えない嵌りっぷり。漫画『花の慶次』を実写化するとしたら、秀吉はコヒさんしかいないと思っているので、キャスティング的には大満足です。これ、先週のラストでも書いたように、笑顔の印象が強い割に目は決して笑っていないコヒさんは、秀吉という底抜けの陽気と狂気を内包する男を演じるに好適でしょう。
尤も、内容的にはキャスティングの嵌り具合ほどの印象に乏しかったのも事実。いや、判るよ。茶々が色目を使った若侍を見る目とか尋常じゃない殺意に満ちていましたし、近年大河の悪癖とも思える主人公やヒロインを身分不相応の場面に絡ませるシーンも、実は秀吉が信繁を秀次や景勝の反応を見るための道具に用いていたのが明白でしたし、そこかしこに狂気や才気を滲ませるシーンはあったのですが、ラストで主人公に『あんな人は見たことがない』と言わしめるほどのインパクトはなかった。極端な話、

猿に会ったら勝新にしか見えなかった

くらいの衝撃は欲しかった。前回のヒキも蓋を開けてみると、取引先の社長に気に入られた新入社員がキャバクラに連れていかれるという『島耕作』のようなオチでしたし。まぁ、実際に『島耕作』は殆ど読んだことはないのですが。
勿論、信長と違い、秀吉の出番は次回以降も用意されているので、幾らでも挽回の機会はあるとはいえ、これもラストのナレーションで『この日が秀吉一族のピーク』と語られたことから推察するに、第2部は新しい体制を構築するのではなく、既にある豊臣政権が崩壊していく過程がメインになるのは明らか。構図としては『ダウントン・アビー』第2期と同じですね。そうである以上、物語の冒頭では出来得るかぎりの完成系を提示しておいたほうが、描くほうも見るほうも『破壊の楽しみ』が倍増するってもんです。その辺の描写にも不足を覚えました。何というか……満を持して登場した四番打者が進塁打で終わった感とでも評しましょうか。結果的にマイナスではないし、次の機会が幾らでもあるけれども、モニョッと感が残る秀吉本格登場の回でした。尚、今回の秀吉評で一番印象に残ったのは、

大谷吉継「殿下は一度気に入った若者は始終、傍に置きたがる御方。色々と面倒になるぞ、これから」ニヤッ

これが【アッー!】ネタに聞こえない秀吉はノンケの象徴。はっきりわかんだね。


2.真田信幸

真田昌幸「秀吉がナンボのモンじゃーい!」
堀田作兵衛「先程、戯に儂の乳を吸わせてみたんじゃが……」
佐助「出浦様に正式に弟子入りすることになりました」
出浦昌相「空蝉の術はこれまで。次は火遁の術じゃ」


真田信幸「正直、ぼかぁねぇ、この待遇に我慢できないんだ! 何で僕はこんな変人揃いの家で頑張らなきゃいけないんだよ!」

前回に引き続き、家中での孤立感が半端ないお兄ちゃん。まぁ、スズムシは信長の一件で慎重になっているのは判りますし、佐助と出浦さんは方向性は兎も角、己の本分に精進しているのでアレな芸人を見るような視線を送るのは些か狭量かも知れません。ただし作兵衛、テメーはダメだ。軽い口調ですが、いってることは思わずドンびき。そりゃあ、お兄ちゃんのような人間が疎外感を覚えるのも無理はありません。本来、こういう時は妻にグチるのが一番なんでしょうけれども、それで前回はドツボに嵌っているので、お兄ちゃんにはストレスの捌け口がない模様。色々な意味で八方塞がりです。
次回予告で遂に小松姫が登場しますが、現在のお兄ちゃんの境遇から考えると、鬼嫁というよりも、何かとストレスを貯め込む自爆型のお兄ちゃんの胸に外部から(物理的にも)風穴を開けてくれるタイプの女性として描かれるのではないかと思えてきました……というか、そういう女性でないとお兄ちゃんがガチでストレスの所為で死にます。一方、おこうさんの健康は益々、快癒の方向に向かっている模様。今回はガーデニングにまで手を出していました。これ、マジでおこうさんが最後まで生き残るオチあるぞ(確信


3.石田三成

石田三成「面倒くさい男だな」

『おまえがいうな』とのツッコミを飲み込んだ視聴者も多かったと思われる治部の一言。コイツとッ、作左にッ、だけはッ、いわれたくッ、ないッ! その面倒臭さをさり気にフォローする刑部ぐう聖人。土方榎本を思わせる名コンビです。『理が勝ち過ぎる』という評価は嘗て、土方が榎本を評した言葉であったことを思うと、ニヤリとしてしまいますな。
ぶっちゃけると今回は刑部のほうがメインで、治部は左程の見せ場はなかったのですが、それでも重要なのは治部による信繁への対応の変化。『秀吉にとって有用か否か』で態度を変える治部の思考を刑部は詫びていましたが、理非善悪は措くとして、これは現在の社会でも結構見受けられる対応ですよね。今までは生来の人懐っこさと頭の回転の速さで、殆どの人間と良好な関係を築いてきた信繁でしたが、今は人柄や器量よりも重要視されるものがある世界にいる。それは善かれ悪しかれ、信繁の世界が広がったことの象徴ではないかと思いました。


4.直江兼続

上杉景勝「わしが間に立つ、任せておけ」
直江兼続(まーた余計なことを……)


羽柴秀吉「真田への肩入れは無用とせよ」
直江兼続(よっしゃあっ!)ガッツポーズ


上杉景勝「真田を裏切ることになる」(´・ω・`)
直江兼続(いーじゃん! いーじゃんスゲーじゃん!)


真田信繁「無理難題を突きつけてはきませんでしたか?」
直江兼続(『真田と手を切れ』という)なかなかよい話であった。実は其方を引き合わす件、秀吉に頼むのをものの見事に忘れてしまった(確信犯


今回の笑いのツボは兼続。秀吉と景勝の遣り取りを傍で聞いている兼続の心中を想像すると、いちいち笑いが込みあげてきました。先述のように秀吉一族のピーク的な描かれ方をされていた今回のストーリでしたが、何気に兼続にとっても人生最良の日であったと思います。兼続の秀吉に対する忠誠度はMAXヴォルテージ必至。今でしたら、米沢三十万石という報酬なしでも秀吉の引き抜きに喜んで応じかねません。まぁ、真田との腐れ縁は芯にタングステンワイヤーが仕込まれているとしか思えないレベルで今後も途切れずに続くのですが。兼続、今日だけは喜んでええんやで。糠喜びだけどな。


5.千利休

千利休「ちと、狭うおますなぁ」

これも『おまえにッ、だけはッ、いわれたくッ、ないッ!』という視聴者のツッコミ待ちの台詞。宗匠の茶室の狭さを逆手に取った仕込みネタ、ありがとうございます。しかし、全体を振り返ると今回一番緊迫感があったシーンは茶室の場面でした。勿論、景勝の『この一杯を飲み干したら、俺は秀吉の家臣に成り下がる』という無念と諦観に満ちた表情が主要因と思いますが、宗匠を演じる文枝師匠の存在も大きいのではないかと。いやね、この御方が表情を押し殺した演技をしていると、それだけで妙な緊張感があるのよ。何といいますか、

絶対に笑ってはいけない場面に笑いのプロフェッショナルがいる

ことが猛烈な緊張感を醸し出すのよね。今にも『景勝さん、いらっしゃーい』と叫びかねない文枝師匠の無言が逆に緊張感を生むというか……あの張り詰めた空気の中、ふと床の間に目をやるとYes/No枕が置かれているんじゃないかとか、そんな馬鹿馬鹿しい妄想が捗って仕方がありませんでした。文枝師匠の宗匠は千利休というよりも古田織部を想起してしまいます。緊迫が生じる歪みに一笑を求めるような……まぁ、これは完全に私の妄想なので、誰に同意を求めることもしませんが、それでも、あの場面は妙な緊迫感あったよなぁ。ここ最近の大河ドラマの茶席の中では出色……とまではいかなくても、充分に異色の出来。


6.今週のMVP

今週は全体の出来に反して、MVP候補者が多数。冒頭で触れた刑部を筆頭に、人が変わったんじゃあないのかと思えるほどの包容力を見せた薫さん、安定のスズムシ、老け顔の似合う片桐且元、哀愁漂う愛すべきダメ親父の景勝と生涯最良の日に巡り合えた兼続。絶対に笑ってはいけない茶席二十四時主催者の文枝師匠。圧迫評定の被害者・羽柴秀次もいい味出していました……が、結論はこれ。

MVP・小早川秀秋。
こんなにめんこい金吾は見たことねぇ。


画ヅラに全てを持っていかれました。いや、単純に可愛いという話ではなく、こんなにめんこい子が、この場面にいる全ての人間の人生を狂わせるかと思うとねぇ。ネタバレが過ぎるナレーションよりも、余程、秀吉一族の将来に対する皮肉に思えましたよ。あの偉い太閤も凶悪な鬼武蔵も皆、昔は子供だったんですよね。ただしディオ、テメーはダメだ。


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