荒川弘版『アルスラーン戦記』第34章『魔の山』感想(ネタバレ有) | ~ Literacy Bar ~

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※基本、ネタバレ有となっていますので、ご注意下さい。

巻頭企画に第2期の速報が掲載されたアニメ版『アル戦』。サブタイトルが『風塵乱舞』となっているので、原作の6巻までいくと思われます。旧劇版は『征馬孤影』で『中断』しているので、少し得をした気分ですが、第三期が決定した場合、第一部最終巻の『王都奪還』一冊で2クールという贅沢な構成になるのか、2クールを分割して後半は第2部に突入するのか、それとも、第三期は1クールで『王都奪還』に専念するのか。何しろ、日曜夕方のアニメ枠は激戦区。『鉄血』第2期の開始時期にも影響するので、色々と想像してしまいます。しかし、アニメ版『アル戦』が夏スタートとなると『鉄血』第2期は早くても来年ということに……? あ、今回のポイントは5つ。


1.ネタバレ

ザンデ「父や俺はパルスに正統の王位を回復するため! あえて一時ルシタニアに膝を屈する、その真似事をしただけのこと!」

固有名詞こそ出していないものの、ヒルメスの計画を大筋でネタバレしてしまうザンデ。黄蓋が赤壁の戦いで『俺が曹操に下ったのは船団に火を放つため!』と放言するようなものです。背後で聞いていたルシタニア兵も、これには苦笑いを通り越して、ドン引き。ヒルメスが居合わせていたら、即座に舌を刳り貫かれても文句はいえません。そう考えるとヒルメスをエクバターナに召還したギスカールは、ザンデの生命の恩人といえるでしょう。他人に見えないところで功徳を積み重ねる王弟殿下に幸あれ。


2.おまえが弱いんじゃねぇ 俺が強過ぎるんだ

ダリューン「二度も通用すると思うな」

一刀の元にザンデを叩き伏せたダリューン。流石はマルダーンフ・マルダーンです。先回はオフェンスオンリーのザンデの太刀筋に不意を突かれただけで、手のうちが判ってしまえば、如何ようにも対処できるのです。聖闘士同様、ダリューンに同じ手は二度通じないのです。まぁ、ダリューン相手に二度目があるだけでも充分強いのですが、ファランギースが『あの男はもはや、お主の強敵ではありえぬ』と評したように、既に両者の格付けバトルは済んでしまいました。『たった一度の勝利が蚊トンボを獅子に変える』というオーガの言葉もあるとはいえ、勝てたかも知れない初戦で勝ちきれなかったバトルは、往々に生涯の戦績に影を落とすものですから。


3.食言

ダリューン「見苦しいぞ、ザンデ! 前言を忘れたか!」
ザンデ「やかましい!」
ファランギース「父親ほどの矜持は持ち合わせておらぬようじゃ」


『俺に勝ったら全てを教えてやる』という前言を【なかったこと】にして、ダリューンに挑みかかるザンデ。暑苦しさのうえに見苦しさまで重なったザンデですが、先述のように自分の知っていることの半分くらいは暴露しちゃっているので、ザンデを責めるのも可哀想ではあります。だいたい、ファランギースが『矜持があった』と評したカーラーンも銀仮面はヒルメスの一言で伝えられる話を勿体ぶった言い回しをした挙句、途中で果ててしまっているので、あまり高評価するのも考えものです。
そのファランギース。逃げるザンデを背中から射抜こうとする辺り、なかなかに容赦がありません。甲冑で防いだからいいようなものの、折角の証言者を喪うところでした。まぁ、ファランギースもザンデから、これ以上の情報を引き出すのは難しいと考えたのかも知れません。


4.腐ァランギース

ギーヴ「そんな不注意な真似をすると、ろくでもないことが起きるものだぜ」

原作でも『そのろくでもないことをしようとした』と突っ込まれたギーヴの馬泥棒未遂。不覚にも愛しのファランギース殿の馬を忘れていたように見えますが、原作でも描かれたように以前のファランギースの馬はザンデの大剣の贄にされているので、ギーヴが判らなかったのは無理ありません。また、のちに仮面兵団の中にヒルメスがいるか否かを判断するに際して、本人の声を聞けば判ると楽士らしい豪語を口にしたギーヴが、ダリューンの声に気づかなかったのも、この時点でダリューンとは出会って間もない間柄なので、当然のことといえるでしょう。初対面に近い男の声を聞き分けられるギーヴのほうが色々と嫌です。しかし、

ギーヴ「一流の男に認められるのは嬉しいものだ」

とダリューンと握手を交わすギーヴを見るファランギースが遠景とはいえ、今まで描かれた中で一番いい笑顔をしているのですよ。あっ……(察し


5.魔の山

ファランギース「正統の王の証、聖剣ルクナバードが眠るデマヴァント山です」

一ページブチ抜きで描かれたデマヴァント山。次回辺りにアルスラーンたちがルクナバードを探しに山麓麓のダンジョンに挑みそうな雰囲気ですが、この時点では全くそんなことはないままに物語は進んでいきます。『何でデマヴァント山の遠景で次回へのヒキなのか』と不思議に思いましたが、よく考えたら、デマヴァント山はザンデの生涯で唯一、マトモな活躍の舞台になる場所じゃあないですか。今回前半で『残念な子』を通り越した『アホの子』全開になってしまったザンデへの、荒川センセのフォローなのかも知れません。尤も、作中の『正史』でザンデの活躍が書き残されたかは疑問。形式上は『正統の王』であるアルスラーンに敵対したヒルメスに仕える『逆臣』ですし、上記場面の殆ど唯一の目撃者であるギーヴも、敢えてムサ苦しい野郎の活躍を詩にする為人ではありませんからねぇ。何やら、ヒルメス以上にザンデが可哀想に思えてきました。

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