今年の大河ドラマはよくも悪くも漫画チックな雰囲気があります。先回は完全に『ワンピース』の世界でした。今回のサブタイトルからは『BOYS BE……』の匂いがしていたのですが、さて、実際はどうであったでしょうか。
海賊討伐の功績で更なるランクアップが期待できると盛りあがる平氏一門。まぁ、海賊どもの殆どは検非違使にも突き出さずに裏から手を回してテメェたちの手駒にしたんですが、そんなことはシレッと忘れたフリをするのが大人の態度というものです。
平忠盛「生命を喪うた者たちのうえに……益々、平氏の繁栄を築いてゆく。それがこれから先の我らの使命と心得よ!」
相変わらず、忠盛パパンは格好いいなぁ。『ボクは人は斬れましぇぇん!』とか『イクサはイヤにございまするゥ』とかいってた近年の大河ドラマの主人公たちなんざ、パパンの足元にも及ばないよ。戦を生業にしている以上、犠牲はつきもの。しかし、彼らも御家のために散っていったわけですから、その喪われた生命をムダにしないためにも自分たちの信じる方途を邁進する。こんな描写、当たり前といえば当たり前なのですが、それをちゃんとやってくれることのありがたみを噛み締めています。
平氏の元に匿われている兎丸。自分たちが検非違使に突き出されないように平氏がかなりの賂を融通していることにブチぎれる。いや、アンタたちを守るためなのですが……と思いましたが、兎丸としては都が飢饉に喘いでいる現今、平氏が自分たちの繁栄のためだけに不当に富を独占しているのだとしたら、それは許せないし、その恩恵に与ることで自分たちが生かされているのだとしたら、それも許せないのでしょうね。この辺はアウトローの気概を感じます。
兎丸「おまえら、どんな汚いことしとんねん? 自分ら平氏だけがのしあがるために、おまえら動いておるんだったら、俺は絶対に許さんからなぁ!」
平清盛「無論、その時はそうするがよい! 俺についてきたことを決して悔やませはせぬ!」
厨二病から快癒した清盛君、完全に平氏の一員です。序盤の危なっかしい言動にヒヤヒヤさせられましたが、あれがあったからこそ、今回の台詞に主人公の成長……とはいかないまでも変化を感じることができました。やっぱりね、主人公は序盤で一度、ドン底まで突き落とさないとダメですよ。産声で戦をとめるとか、生まれた段階でスーパーウーマンとか、そんな主人公で起伏のある物語ができるわけないですよ。
平盛康死去。
早い、早いよ、佐戸井けん太さん。
白河法皇の伊東四朗さんもそうでしたが、いい役者が早く退場するは悲しい。大河ドラマで『へうげもの』をやる時には是非、前田ありなん侯利家を演って欲しいですね。その盛康の遺言で鱸丸が平氏一門に加わります。平盛国誕生の瞬間。てっきり、オリキャラのままで終わるかと思っていたら、平氏一門の中でも数奇な運命を辿った人にジョブチェンジですよ。漸く、上川隆也さんがキャスティングされた理由が判りました。これでオリキャラ枠は兎丸に専念できますね。
アバンタイトル&OP終了。
時子登場。『源氏物語』に夢中のドロンジョ様です。恋に恋する乙女。この女性が数十年ののちに孫を抱えて文字通りに【nice boat】することになるとは……時の流れって残酷ですよね。尤もドロンジョさまの朗読に字幕スーパーを出す演出は余計っぽかったかな。侍女を相手に『源氏物語』の内容を語りあうみたいな場面にしたほうが自然であったと思います。
そんなこんなで何時の日にか光る君と巡り逢う日が来ることを夢見るドロンジョ様ですが、そんな彼女に道端でぶつかってきたのが、
平清盛「どけ! どけ! 腹は痛いし……厠は遠過ぎ……ぁ」
『BOYS BE……』路線終了のお知らせ。
のちに継室になる女性の眼前で野糞をする大河ドラマの主人公って何年ぶり……否、何十年ぶり……ていうか、今までに存在したか? 幾ら何でも主人公の扱いが酷過ぎるぞ。けしからん。もっとやれ。
海賊討伐の恩賞を賜る忠盛パパン……とはいっても、今回、恩賞を受けたのは忠盛ではなく、清盛。別段、清盛の功を評価したわけではなく、忠盛を出世させて武士を公卿に連ねるのは人事のバランスからも貴族のプライドからも拙いと鳥羽上皇は判断したようです。この説には私も賛成。歴史パートの脆さが目につく本作ですが、この描写があったのは嬉しかった。全てを承知のうえで承諾する忠盛&清盛にあんまりチョーシに乗んなよ、オメーらは所詮は皇家の狗だと釘をさす忠実もよかったですが、ここでブチぎれなかった清盛に成長を感じました。しかし、幾ら何でも清盛の格好は小汚過ぎるぞ。流石にここはもう少しマシな衣装を用意してやれよと思いました。
高階基章&明子登場。
清盛の最初の妻ですね。義父になる高階基章は『独眼竜政宗』の鈴木重信&『翔ぶが如く』の大村益次郎を演じた平田満さん。常連さんが出てくるとホッとします。貧乏貴族という点が強調されていますが、これは終盤の展開でも判るように旭日の勢いの平氏と従六位の近衛将監に過ぎない高階基章の娘との縁談が如何に釣りあわないものであったかを表すためでしょうね。
出会ったその日のうちに清盛に娘を嫁に貰ってくれと頼む高階基章。夕餉の汁を吹く清盛。脚本的には唐突な感は否めませんが、キャラの心境としては吹くのが当然。つーか、清盛のほうも明子に一目惚れのご様子。こっちのほうは『BOYS BE……』路線を継続中。
しかし、物語は純情路線から一転。
そう、この大河ドラマがR15指定されてもおかしくない鳥羽ちゃん&たまちゃん&得子さんの愛憎劇場のお時間ですよ。
得子ちゃんが女児を出産する。乳母にあやされる叡子内親王。男児を生めなかったのでメチャクチャ不機嫌そうな得子ちゃん。この1分足らずの場面で昨年の大河ドラマを凌駕しているな。現代の価値観はさておき、当時はこうだったんだよ。こういう価値観をきちんと描いてこそ、物語の終盤で清盛が地位や身分に拘わりなく、明子を選ぶことのタメにもなるんだよなぁ。
女児で安心したと嫌味ったらしいことを口にする堀河局。しかし、当のたまちゃんは心底、得子さんの出産&女児の誕生を寿ぎ、大量の産着をプレゼントします。そう、たまちゃんは何処までも天然なんですよ。悪気は全然ないんですよ。単に他人の心と空気が読めないだけなんですよ。しかも、自分が皇子を生んだ時の経験を語りながら、今回は皇子を生めなかった得子さんに『貴女も頑張れ』とかいう。こーゆー無邪気な善意が如何に女のプライドを傷つけるか、たまちゃんには全く判らないですね。
御影「何故、お受け取りになったのでございますか! 斯様に嫌味たらしい祝いの品を……」
得子「嫌味ならまだよい……! あれはまこと、祝いをしに参ったのじゃ! 忌々しい……!」
嫌味の一つもいわれれば怒りのぶつけようもある。しかし、100%の善意に基くプレゼントで怒りを向ける矛先を失った得子さんは、その冥い情念を鳥羽ちゃんにぶつけます。衆目も憚ることなく、鳥羽ちゃんを押し倒すと、
得子「皇子をお産みしとうございまする……! 何としても、上皇さまと私の皇子を……!」
ドMのNTRからフェムドム属性に調教させられた鳥羽ちゃん。以上、本日の鳥羽ちゃん&たまちゃん&得子さんの愛憎劇場でした。面白かった。
佐藤義清が崇徳帝に召される。崇徳帝が詠んだ、
『瀬をはやみ 岩にせかるる 滝川の われても末に 逢わむとぞ思ふ』
は高名な小倉百人一首にある一首ですね。劇中では義清は単なる恋歌ではなく、その奥に別の思いがあるように感じています。これはアレかな、鳥羽上皇との和解を望んでいるということなのかな。叔父子ではなく、普通の親と子になりたいということなのかな。この辺は先の展開を待ちたいと思います。
明子とドロンジョ様のガールズトーク。
うん、よく判らん。女のいってることはよく判らん。サッパリだ。多分、恋に恋するドロンジョ様と実際の恋と現実の間で苦悩する明子の対比を描きたかったのでしょうが、何分にも私に恋愛譚を読み解く素養がないのでよく判りませんでした。そんでもって、縁結びの願掛けとばかりに神社に向かうドロンジョ様一行が現場で清盛と遭遇。テンプレだ。ついでに清盛に反発するドロンジョ&必死に会話を繋ごうとする清盛に話をあわせてくれる明子。最終的に清盛とドロンジョ様と結ばれることを思えば、これもテンプレだ。ごめんなさい、恋愛譚はよく判りませんのです。ただし、明子との話の途中で清盛が『危うい所を一門の者たちに救われた』と素直に話したのはよかったです。俺はロンリーウルフだぜ、ヒャッハー! とかいっていた時分に比べて成長したよな。
藤原家成と宗子の会話。
恐ろしい。実に恐ろしい。本人のいない所で縁談が進んでいる。いや、当時は当たり前のことなんですが、これ、現代で実際にやられたことのある人間としてはマジで恐ろしいんですよね。親とか親戚とかって怖ーわ。この場面は藤原家成と宗子は従兄弟同士であることをベースに構成されており、憧れの従姉妹が複雑な事情の家に嫁いだことを気にしていた家成が清盛に嫁を持たせることで宗子の負担を軽くしてやりたいと考えているなど、歴史劇としては兎も角、ホームドラマとしてはなかなかの出来でしたが、この辺の事情はもっと早い段階、例えば清盛元服の場面とかで触れておいてくれたほうが、今回の場面も印象が深まったと思います。ちょっと惜しかった。
明子への恋文を佐藤義清に代筆させる清盛。
贅沢ってレベルじゃねーぞ!
この辺は如何にも青春群像といった感じですね。劇中当時の義清は清盛個人のマブダチですから、こーゆー贅沢な使い方もできるわけですよ。義清が『会心の出来ではない』といっていたから、この歌はドラマオリジナルなのかな。そして、返信されてきた歌を読みあげる清盛。
佐藤義清「……なるほど」(フッ)
平清盛「おい、さっぱり判らんぞぉ! ウヒャヒャヒャヒャ!」
本当に主人公の扱いが酷過ぎる大河ドラマだな。そろそろ可哀想になってきた。
見事に玉砕したことを知らされた清盛は直談判に及びます。まず、義清に歌の代筆を頼んだことを正直に詫びます。これは地味ですがいい場面。清盛の真っ直ぐな心と魅力が表れていました。こういう小さい描写の積み重ねで主人公の魅力を形成していって欲しいですね。
しかし、このあとの明子の理屈が全然わからなかったです。ごめんなさい。マジ、こういう場面は苦手なんですよね。一応、判ったつもりになて書いてみると、
明子「親父はさー、アタシが住吉大社の力がなけりゃ幸せになれねーと思ってんのよねー。そーゆーふーに育てられてきたから、アンタに求婚されても、それはアタシの魅力じゃなくて、住吉大社の御縁としか思えないわけよー。そんな神頼みの人生? アタシは真っ平御免なわけ。そんなわけでアンタの求婚には応えられねーわ。マジ御免」
みたいな感じかな。それに対して清盛は、
平清盛「知らんがな、ヴォケ。俺は俺の意志でオメーを見初めたんじゃ。ウダウダいってねーでおまえの人生半分よこせ」
と答える。何かよく判らない場面でした……が、この一部始終を『源氏物語』大好き人間のドロンジョ様が見ていた点を考えると、何時か白馬に乗った光る君が現れると夢想しているドロンジョ様に、マニュアルにもシキタリにも囚われない泥臭く光らない君が、一個の人間として女性に体当たりする様子が焼きつけられた場面なのかな。つまり、ここは清盛と明子ではなく、ドロンジョ様の将来に対して伏線が張られた場面なのだと思うことにします……が、やっぱり、判りにくかったです。
清盛の結婚宣言。藤原家成からの縁談とか、花嫁の父の官位の低さに親戚衆がウダウダいう。まぁ、当然だわな。しかし、
平忠正「右近衛将監……高々、正六位ではないか」
平家貞「清盛さま、現今がどういう時であるか、判っておいででしょうな? 如何なる家と結ばれるかで一門の行く末が決まってくるのでございますよ?」
既に驕る平家の姿が見え隠れしている気もする。それでも、
平清盛「勝手を申して皆には迷惑をかけるやも知れぬが、どうか、お許しを頂きたく……お願い申しあげまする」
深々と頭を下げる清盛。DQN時代の欠片もねェ。これは視聴者としても後押しせざるを得ない。忠盛パパンの許しも出たことで、好きあっている二人は結ばれました。めでたしめでたし……で終わらねェのが今年の大河ドラマなんだよな。
家盛は純粋に兄の結婚を喜んでいますが、他の者は大なり小なり、今回の縁談に含む所がある。アンチ清盛の忠正は勿論、家貞も平氏一門の先を考えれば正六位程度の貴族との縁談を喜べる筈がない。特に怖かったのが宗子さんですよ。終始、無表情で明快な言葉も発しませんでしたが、従兄弟の藤原家成が用意してくれていた縁談をブチ壊した清盛の結婚に好意を抱けないでいます。否、もしかしたら、家盛ですらも、これで自分に高貴な公家との縁談が舞い込むことで平氏の棟梁への方途が開けるかも知れないと思っていないとはいいきれない。
源頼朝「これは平氏一門、各人の胸にさまざまな波紋を投げかけ、清盛に更なる試練を与える決断でもあった」
好きな異性と結婚できてめでたしめでたしで終わらせない、いいヒキでした。あ、ついでにラストシーンで忠盛パパンがOPの今様を吟じていたのは、清盛の結婚に嘗ての自分と舞子を見ていたからでしょうね。そして、それを敏感に感じた宗子との会話。何気ない台詞しかありませんでしたが、その分、底に秘めた感情のドロドロさを感じました。ハッピーな話題のくせに嫌に不気味な雰囲気で今回は〆。
次回!
遂にあの男が大河ドラマに帰ってくる!
悪左府「近頃の都は乱れきっておりまする。徹底して……粛清……致します」
山本副長、お帰りなさい……って、今回も山本さんの役目は粛清なのかよ! 山本さんも悪左府も大好きな私にとっては楽しみな回になりそうです。
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