大殺界は本当にあるの? 1 |  ZEPHYR

 ZEPHYR

ゼファー 
― the field for the study of astrology and original novels ―
 作家として
 占星術研究家として
 家族を持つ一人の男として
 心の泉から溢れ出るものを書き綴っています。

「あなたの金星と天王星ですが、この関係が……」
「あ、あたし、天王星人なんです」
いやいや……その天王星じゃないから。

というようなことを、時折経験するzephyrです。

六星占星術の中には、土星人、金星人、火星人、天王星人、木星人、水星人という六種類の呼称が登場します。
この土星、金星というのは、西洋占星術でいう現実の惑星とは、いっさい関係がありません。
六星占星術はこの6種類に人間を類別し、さらに類別されたそれぞれの金星人などをプラスとマイナスの二種類に分けます。つまり、そのプラス・マイナスの部分まで考慮すると、12種類に分けられることになるのですが、この類別の根拠はいったいなんなんだろう、と疑問に思われたことはないでしょうか?
そしてこの類別された星によって、たとえば金星人は「申酉」の年の前後どちらか1年を加えた3年間が、いわゆる「大殺界」に当てられます(プラス・マイナスによって、前か後ろかが決められる)。

「大殺界って、本当にあるんですか」
こんな質問も、よく鑑定をしているときに尋ねられます。

これについては過去に記事にしたことがあるのですが、六星占星術信者の方の非難を恐れずに、もう一度ここに書いておきましょうか。
ただ、これも九星に関する前記事と同じく、これを使用している占術師を非難することが目的ではありません。
特定の占術が有名になると、その「伝説」ばかりが暴走してしまうことがあります。
そのため本来は良い運気なのに、「大殺界」を真に受けて起こすべき行動を起こさず、逆に損をする人も現実にいるからです。
ただ実際に、「大殺界」に相当する作用が働くことがあります。
つまり本当に大殺界を受ける人もいるのです。この人にとっては、「六星占星術、すげー。ほんとに当たったよ」ということになります。

これには少々、説明が要ります。

じつは過去にも、似たような占いがブームになったことがあります。
私が高校生の頃だったと思います。
ご記憶に残っている方もいらっしゃるかも知れません。
「天中殺」ブームです。
天中殺の時期に家を建てたら悪いことが起きる、車を買ったら事故に遭う、その時期には病気になりやすい、死にやすい、試験に落ちる、失恋する……。
人生の大凶運期、それが天中殺だ。

天中殺の本はばか売れし、ブームの火付け役となった人物はTVにも露出しました。
ところが。

数年が過ぎ、大非難が本の著者に押し寄せてきました。
「その時期に家を建てたが、幸せだ。車を買ったが、事故なんか起きない。天中殺の時期に志望校に合格した。結婚して幸せになった」等々……。
著者は「天中殺」はなかった、と謝罪したという顛末。

じつはこの天中殺と、大殺界がほぼ同じものなのです。
なぜなら、同じある巨大な占術大系の中から取りだした、ごく一部分の知識をベースに作られたのが、この天中殺であり、大殺界だと考えられるからです。

では、その巨大な占術大系とは何か?
四柱推命学です。
そして、その取り出された一部の知識とは何か?

「空亡」です。

空しく亡ぶ、と書くが如く、この空亡に当たる年回りに、何事かやろうとしてもうまく行かない、成就しない、またそれまで維持してきたものがダメになる、などの効果があります。
この空亡のメカニズムについて、やや長くなりますが、ご説明します。

四柱推命学の根底にあるのは、五行思想と陰陽思想です。
五行は「木火土金水」の五大元素であり、この世にあるものはすべてこれが現象化したもの、その生々流転が世界や運気を作っている、そして五行にもまた陰陽がある。
五行のそれぞれの陰陽形態が、十干と十二支なのです。

甲(木の陽)乙(木の陰)丙(火の陽)丁(火の陰)戊(土の陽)己(土の陰)庚(金の陽)辛(金の陰)壬(水の陽)癸(水の陰)。

子(水の陽)丑(土の陰)寅(木の陽)卯(木の陰)辰(土の陽)巳(火の陰)午(火の陽)未(土の陰)申(金の陽)酉(金の陰)戌(土の陽)亥(水の陰)。

この十干と十二支が結合したものが、六十干支です。
干支(えと)とは、十二支だけを指すものではなく、本来は十干との組み合わせのことをいうのです。

陽の干は、陽の支としか組み合わされません。陰は陰と。
なので、10×12=120ではなく、その半分の60個の干支がこの組み合わせから生じます。

甲子、乙丑、丙寅、丁卯、戊辰、己巳、庚午、辛未、壬申、癸酉。
このように最初から組み合わせを作っていくと、十干と十二支ですから、最後の「戌亥」が余ってしまいます。
この余ったものが「空亡」なのです。
そして甲子から始まって癸酉に終わる十種類の干支グループが、戌亥を空亡とする共通基盤を持つ仲間だ、という考えが四柱推命にはあるのです。
つまりこれらのグループは、要素として戌亥を持っていない。
考えようによっては、戌亥がインフルエンザ・ウイルスで、その免疫を持っていないグループといったら非常に分かりやすいでしょうか?
だから、戌亥が巡ってきたとき、ウイルスに感染してさまざまな不都合が起きる。
そういうグループがある。

この戌亥空亡のグループを、六星占星術では「土星人」と呼び、陰陽でその前後の1年を付け加え、戌亥を中心とする3年間を「大殺界」と呼んでいるのです。
そしてこの空亡のことを、かつて天中殺と呼んでブームを引き起こした人がいたのです。

前のグループでは戌亥が余ったので、次のグループで干支を作るときには、戌亥から始まるこのような流れになります。

甲戌、乙亥、丙子、丁丑、戊寅、己卯、庚辰、辛巳、壬午、癸未。
さあ、今度は申酉が余りました。
ここまで説明すると、皆さんにはもうおわかりかと思います。
このグループでは、申酉が空亡なのです。
そしてこの申酉を空亡とするグループは、「金星人」と呼ばれています。

六星占星術ではたいてい巻末の数字の並んだ表から、自分に該当するところを見つけ出し、それに誕生日を加算するなどして(加算した数字が60を超えていたら、60を引くというのは、つまり六十干支だから)、あくまでも数字で星人分けを行っていますから、背景にこのような思想があることを感じさせません。
新しい占いであるかのように思わせますが、じつは四柱推命から出ている(あるいは、共通の思想体系から生み出されている)ことは間違いありません。

お疑いの方がいたら、いろんな人に当てはめて、やってみて下さい。

戌亥空亡は土星人。
申酉空亡は金星人。
午未空亡は火星人。
辰巳空亡は天王星人。
寅卯空亡は木星人。
子丑空亡は水星人。

に、かならずなるはずです。

長くなってきたので、続編はまた明日。

人気ブログランキングへ