常在戦場 | 雑読日記

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読んだ本の感想など

「家康家臣列伝」という副題が付いています。
火坂雅志「常在戦場」です。

副題の通りで、徳川家康の家臣七人の物語が
七編の短編となってまとまっています。

鳥居、井伊、大久保と私でも知っている
高名な家臣だけでなく、裏切り者・石川数正だったり
側室・阿茶の局だったり、さほど有名でない
角倉了以、牧野忠成が含まれています。

とくに角倉了以が良い物語でした。
角倉は武士ではなく商人。
生家は医者で、足利将軍家の侍医になるなど
名門名医の家柄であったとのこと。

同時に商家でもあったそうで、了以はその商家の方の
跡継ぎにあたるわけで、畿内の豪商と言えます。
ある日、家康に呼び出された了以は、朱印船の復活を
任されるのですが、それは重要ではありません。

本編を読んでいて思い出したのは、史記に書かれた
白圭という商人の話でした。(あれ?史記だっけ?)

私が知っている白圭は原典ではなく、
宮城谷昌光「孟嘗君」の登場人物ですが、
彼が天下に対して行った「仕事」は史実だったはず。
すなわち、黄河の治水を私財で行ったというもの。

角倉了以は徳川治世下で、あるときは私財を投じ、
あるときは幕命により河川の掘削を行って
水運を発展させた人物だそうです。

私利私欲で動くのではなく、公利が私利になっている
誠に稀有な、高徳の生き方を見た思いです。

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