同じ場所に、ある程度長く働いていると、
固定客というのも、出来てくる。
嬉しいことに、
遠く離れた日本から来られる方もいれば、
イタリア国内のお客様というのもいる訳である。
正直、
数年前に、スーパーマーケットを合法化する為に法律が変わったおかげで、
メルカート内は、
どこもかしこも、
似たり寄ったりのお店が展開している。
普段、めったに店に来ない、オーナーことおやびんは、
お客さんと接していない分、
世の中の流れから、とうに外れていて、
ほっておけば、
とんでもない値段をつけたりする。
「え~、これ、高くないっすか?」
と聞けば、
「コレは、俺の店だ!」
と言われる始末。
やっぱり、どこか、チンピラめいている、おやびん。
それでも、普段、お店に居ないおかげで、
多少のサービスが出来るのだけは、救われているのかもしれない。
そんな中、
毎回、フィレンツェに来るたびに、
来店してくださる、イタリア人がいる。
プーリアという、
イタリアの南の町から来る、この紳士は、
律儀に、いつも、トリュフ入りのペコリーノチーズを購入される。
2回目の時、
そのことを覚えていた事を知ると、
いたく感動し、
それから、毎回来てくれるようになった訳である。
いつものように、スコント(割引き)をすると、
「今度は、プーリアの名産品を持ってくる!」
そう言って、帰って行った前回。
今回なんと、
本当に、
お土産を持ってきてくれた。
これだけで、既に、感動モノである。
しかも、おじさんオススメのレシピ付きで。
プーリアは、オレッキエッテという、
耳たぶの形をした手打ちパスタが有名で、
それを持ってきてくれた訳である。
世の中には、律儀なイタリア人も居るんだな...
と、普段、
口だけは流暢な人間ばかりを見てしまっているおかげで、
そんな紳士が、数倍、紳士に見える訳である。
これこそ、イタリアンマジック...
出来立てのパスタを食し、
さらに、ハマる、
イタリアの味。
嬉しい限りである。