フランス映画祭の5作目は、「美しき棘」です。
ストーリーは、
主人公は母を亡くしたばかりの17歳の少女プリューデンス。父は海外勤務で不在、姉は家にほとんどいつかないため、プリューデンスはガランとした家の中で一人で暮らしている。突然母を失った喪失感を埋め合わそうとするかのように、プリューデンスは偶然出会った同年代の不良少女マリレーヌに導かれ、パリ郊外の小都市ランジスで危険な違法バイク・レースに興じる若者たちのグループと知り合う。バイカーの若者の一人と付き合うようになったプリューデンスはようやく自分の居場所を見出したかに思えたが……。
というお話です。
思春期の頃に身内を亡くすと、表情にはあまり出ないけど、深く傷ついている事が多いと思います。この主人公も、普通に生活をしているけど、母親が突然居なくなったショックで、精神的に不安定になり、何か不安を埋めてくれるものを求めて彷徨うんです。こういう気持ちは、人間なら当たり前ですよね。もう、自分でもどうしていいか解らない、どうしようもない気持ちを、バイクレースなどで、生死ギリギリの危ないことをやっている人たちと混ざることで埋めていくんです。結構、これ、解りますよね。
年を取ると、死というものを受け入れなければならないということが理解出来ますが、高校生くらいだと、どうしても納得出来ないというか、受け入れられないですよね。それなのに、この年になると、死というものが、結構、身近に起こってくるし、ある程度判ってくるので、このジレンマは、本当は、他の家族が一緒に居て、一緒に埋めていかなければならないことだと思うのですが、この映画では、誰も一緒に乗り越えようとしてくれないという、可愛そうな状況なんです。
なんとか楽しくやって、嫌なことを忘れてしまいたいと思っているのですが、無理をしてバイク仲間と一緒に居るので、どうしても一人だけ浮いてしまうというのが、観ているこちらにも伝わってきて、主人公のブリューの辛さがヒシヒシと伝わってきます。無理をしていると、自分も辛いけど、相手も段々とよそよそしくなりますよね。そういう態度の細かいところが、とても良く描かれていました。
ちょっと、暗めの話なので、日本公開してくれるかなぁ・・・。映画としては、とても良い作品だとは思うのですが、万人受けするかと言われると、ちょっと難しいかも知れません。内面的な気持ちの移り変わりを細かくゆっくりと描いていく作品なので、映画祭とかでは取り上げられやすい作品だと思います。
もし、日本公開されることになったら、単館系の作品が好きな方には、お勧めしたいと思います。普通の、全国ロードショー系が好きな方は、あまりにじっくり描いているので、途中で眠くなると思います。公開されたらイイなぁ。