声論【8】サ行の摩擦音の軽減方法~滑舌矯正マスターの研究成果~ | おおしまゆかこ公式ブログ(アーティスト・ボイストレーナー)

声論【8】サ行の摩擦音の軽減方法~滑舌矯正マスターの研究成果~

このページは2010年6月にアップして以降、多くの皆様にアクセスして頂いております。

最新の見解も含めまして、よりわかりやすい説明を心掛けて、リライトしました。

サ行の発音を改善したい方のお役に立てれば幸いです。

2017/7/27 おおしまゆかこ

■・■・■・■・■・■・■・■・■・■・■・■・■・■・■・■・■・■・■

サ行はローマ字で書くと、次のようになります。

さ(sa)し(shi)す(su)せ(se)そ(so)

ローマ字からもわかるように、シはサスセソと異なる音の種類のため、ここではサスセソについて説明します。

まず、子音のs音(えすおん)だけ、「スー」と発音してみてください。

上手にs音を出せたでしょうか。サスセソはこのs音の後に、すぐさま母音を発音してできる音です。わかりやすいように、s音を極端に強めて、サスセソを発音してみます。下記ページ内の動画の冒頭で発音しておりますので、音声をお聴きください。

「サ行を美しく発音する」
http://katsuzetsusoken.com/youtube/beautiful-s-line

s音を極端に強めたサスセソを聴いて、あなたはどう思いましたか。「s音がうるさい」「s音が強すぎる」と感じませんでしたか。

そうです。日本語はs音が強すぎると耳障りに聞こえるのです。汚い日本語に聞こえます。特に、マイクを使って話すと、こういった音までしっかり拾いますので、シャーシャー、シューシューとノイズがするなあと感じるのです。

s音は音声学では「摩擦音」という音の種類に分類されます。息の摩擦の音、息が擦れる音という意味です。では、息はどこで擦れているのでしょうか。あなたはわかりますか。

答えは、舌先と歯茎の間の狭いスペースです。ここを息が通り抜ける時に、摩擦が生じて、s音となります。s音の場合、発音を生み出す場所、調音点(ちょうおんてん)は、歯茎と舌先の間となります。

ノイズを減らすためには、摩擦を弱める必要があります。弱め方のポイントは次の通りです。

①口をしっかり開けて母音を発音する
②舌は必ずホームポジションに置く(舌先を下歯の裏側に当てたまま発音する)
③息は強く擦るように出さない

摩擦を弱めるためには、息の逃げ道をしっかり確保することが大切です。①②は逃げ道確保です。しかし、逃げ道がしっかり確保できても、息を強く擦って出せば、摩擦は強くなってしまいます。ですので、舌の上を息が優しく柔らかく流れるようにします。マッチを擦るようなイメージで、息を擦らないでください。

息の逃げ道がしっかり確保できているかどうかの確認方法です。

下顎の前に手のひらを置きます。そして、ゆっくり「サスセソ」と発音します。手のひらに息が鋭くストンと当たっていれば問題ありません。息がもわっと当たるか、ほとんど当たらない方は息の逃げ道が確保できていません。息の逃げ道を確保してください。吐く息の量が少なすぎても、手のひらに息が当たりません。息はしっかりと吐きます。

なお、摩擦を弱め過ぎると、当然のことながら、s音になりません。s音は摩擦の音なのですから。適度なs音を探りましょう。

ちなみに、英語のs音は、摩擦が強くないとs音として認識されないようです。また英語のs音は日本語の「サスセソ」とは舌のポジションが異なります。日本語はホームポジション(*)に置きますが、英語は舌先が口中に浮くのです。ご興味のある方は音声学のテキストで口腔断面図をご覧いただくと、その違いがわかると思います。日本語のs音と英語のs音は別物だと捉えてください。

*発音する際の舌の基本ポジションを私は「ホームポジション」と呼んでいます。舌先は下歯の裏側に当たった状態です。「あいうえお」と発音してみて、舌先が下歯の裏側に当たっていれば、その状態がホームポジションだと覚えてください。当たらない方は舌の使い方に問題があります。決して舌が短いわけではありません。詳しくは下記動画などをご覧ください。

母音「アイウエオ」の正しい発音方法
http://katsuzetsusoken.com/youtube/vowel

おおしまゆかこのレッスンのご案内
http://oshimayukako.com/?page_id=654