ミトコンドリアと片頭痛 | 頭痛 あれこれ

頭痛 あれこれ

 「慢性頭痛」は私達の日常生活を送る際の問題点に対する”危険信号”です。
 このなかで「片頭痛」は、どのようにして引き起こされるのでしょうか。
 慢性頭痛改善は、「姿勢」と「食生活」の改善がすべてであり、「健康と美容」のための第一歩です。

 前回のコーヒーブレイクでは、以下のように述べました。


人が罹るあらゆる病気の90%は活性酸素が関与


 現在では、人が罹るあらゆる病気の90%は活性酸素が関与していると言われ、さらに、感染症以外の、ほとんどの現代病である生活習慣病(片頭痛、動脈硬化、ガン、認知症を含めて)は、「後天性ミトコンドリア病」と考えられています。


 ミトコンドリアがエネルギーを産生する際に必然的に生み出されるのが活性酸素です。
 「後天性ミトコンドリア病」とは、馴染みのない病名ですが、これは”ミトコンドリアの機能が低下する病気”です。
 今までは、先天性の病気”遺伝的疾患”として考えられていましたが、現在では後天的な発症や、薬による副作用で発症することが証明されています。


 このようなことは、果たして科学的な根拠があるのかどうか不信に思われる方々も多いのではないでしょうか。このため、ミトコンドリアそのものについて述べる前に、謂わばイントロダクシヨンの意味で明らかにしておく必要があります。
 以下は、これまでも再三、引用したものですが・・これは極めて重要な記載ですので、再度、掲載させて戴くことにします。


 片頭痛は15億年前の因縁?
 

 1996年に間中信也先生が開設されたネット上に「頭痛」の老舗ともいうべきHP「頭痛大学」があり、ここに、この当時から、以下のような記載があります。


 ミトコンドリアは、細胞のエネルギーを産生する「発電所」のはたらきをしています。
 それは約15億年前のことでした。当時酸素が嫌いなノンビリやの単細胞生物”A”がおりました。
 当時増えつつあった酸素を利用してエネルギッシュな好気性生物”B”もいました。”A”が”B”に提案しました。
 「Bさん僕と結婚しよう。僕のウチに住んでいいよ。そのかわり君のエネルギーを僕にわけて頂戴」。
 プロポーズが成功して、”A”と”B”の同棲生活が始まったのでした。


 片頭痛には、このミトコンドリアが関係しています。
 片頭痛では、ミトコンドリアの”酸化燐酸化の障害”があり、これによる代謝の異常が、神経機能障害を引き起こし、それが”脳過敏”を強めて片頭痛発作を発現させます。
 ミトコンドリアの代謝機能を是正すれば、片頭痛にならないということになります。
 ミトコンドリアの働きを助ける物質にビタミンB2があります。実際ビタミンB2をとると片頭痛になりにくいのです。
 とすれば、15億年前に細胞AとBが同棲しなければ、片頭痛という病気は生まれなかったかもしれません。


 すなわち、片頭痛は、”ミトコンドリアのエネルギー代謝異常あるいはマグネシウム低下によって引き起こされる脳の代謝機能異常疾患”であると考えられています。 


片頭痛とビタミンB2


 ミトコンドリアは、細胞の中で呼吸し、エネルギーを生産している工場の役割を担っています。ミトコンドリアの働きが低下したり、異常をきたす病気を「ミトコンドリア病」といい、この病気を持つ人のほとんどが、片頭痛を持病として持っています。
 このミトコンドリア病を持つ人々にミトコンドリアの機能をよくするビタミンB2を摂取させると、片頭痛が改善されることが分かりました。
 逆に、片頭痛もちの人たちもビタミンB2を摂取することで、7割近くの人の頭痛が改善することが分かっています。


 1998年にShoenenらによって発表された論文によりますと、ミトコンドリア病の患者さんに1日1回400mgのB2を服用させた所、ミトコンドリアが元気になりミトコンドリア病が改善しました。このミトコンドリア病の主症状が片頭痛です。この事にヒントを得て、ミトコンドリア病に限らず片頭痛の患者さん55人に1日1回400mgのリボフラビン(ビタミンB2)を3ヶ月服用させた所、片頭痛の起す割合が半分に減った患者さんが37名だったと言う事でした。
 その理由は、ビタミンB2がミトコンドリアの電子のやりとり(電子伝達によりエネルギーを産生する)を円滑にしたことにより、ミトコンドリア代謝機能を向上させたからだと考えられています。
 また、ビタミンB2には体内で生成される過酸化脂質を分解する作用もあり、この作用によって片頭痛が軽減された可能性もあります。いずれにしても、ビタミンB2が片頭痛患者の半数以上に改善効果を与えたことは事実ですから、ビタミンB2を積極的にとりたいものです。
 ビタミンB2を多く含む食品としては、牛、豚、鶏のレバーやハツ(心臓)、うなぎ、うに、すじこ、サバ、ズワイガニ、納豆、いくら、タラコ、卵黄、まいたけ、モロヘイヤ、のり、煎茶の茶葉、唐辛子などがあります。

  このようなことは、以下の文献で明らかにされていました。


 Welch KMA, Ramadan NM Review article; Mitochondria, magnesium and migraine. J Neurol Sciences 134 (1995) 9-14
 下村登規夫、小谷和彦、村上文代:片頭痛とミトコンドリア。神経研究の進歩、46(3)391-396,2002
 間中信也:マグネシウムMagnesium、頭痛大学、インターネットホームページ
 後藤日出夫:お医者さんにも読ませたい片頭痛の治し方.健康ジャーナル社

  Schoenen,J., Jacquy, J., Lenaerts, M.:Effectiveness of high-dose riboflavin in migraine prophylaxis:A randomized controlled trial. NEUROLOGY 50:466-470,1998


 このような文献的なエビデンスを基に、下村登規夫先生はMBT療法を提唱されていました。


 下村登規夫:頭痛患者の生活指導の基本と応用ーDASCH diet を中心に頭痛診療のコツと落とし穴,坂井文彦編中山書店,東京, p 164、2003
 下村登規夫、村上文代、小谷和彦、猪川嗣朗:片頭痛治療のトピックス。医薬ジャーナル35(11):2876-2880, 1999
 下村登規夫, 村上文代, 小谷和彦ほか:新しい治療概念「分子治療学(Molecule-basedtherapy)」に基づいた片頭痛の治療. 治療81:1861 ‐ 1865、1999


 このMBT療法を実践された方々の9割は、片頭痛を根治させていました。
 しかし、日本にトリプタン製剤が2000年に片頭痛治療の世界に導入され、2005年に「慢性頭痛診療のガイドライン」が作成された段階では、こうしたMBT療法という素晴らしい治療手段が既に存在していながら一切記載されることなく無視されてきた事実を私達は冷静に見つめ直さなくてはなりません。なぜ、無視されたのでしょうか?
 それは、日本にトリプタン製剤を導入し、金儲けを企む方々にとっては、片頭痛が根治しては都合が悪く、片頭痛が原因不明の不思議で・神秘的な”遺伝的疾患”とされなくては、片頭痛患者さんに一生、トリプタン製剤を服用してもらえなくなるからでした。
 こういったことから、一切、明らかにされることはありませんでした。


 病気の90%は活性酸素が関与・・「後天性ミトコンドリア病」


ミトコンドリア病


  ところで、ミトコンドリア病は大きく分けて2種類あります。先天性ミトコンドリア病と後天性ミトコンドリア病です。


  先天的に、ミトコンドリアの一部が異常をきたし、機能低下する事で起こる”ミトコンドリア病”があります。先天性ミトコンドリア病は稀な病気です。このミトコンドリア病のほとんどの患者さんには、「片頭痛」が存在します。これは、生まれつきミトコンドリアの働きに不具合があります。
  先天性のミトコンドリア病は、細胞核DNAとミトコンドリアDNAの両方に異常を来して発症してきます。


  一方、「後天性ミトコンドリア病」は、ほとんどの現代病に当てはまります。すなわち、ほとんどの現代病は、後天性ミトコンドリア病と考えられています。水や食生活、放射能汚染や環境汚染、有害物質の蔓延などや酸素不足などを原因として、後天的に発症するミトコンドリア病です。
 後天性ミトコンドリア病とは、いろいろな原因でミトコンドリアDNAが傷つくことによって、活性酸素で身体が”酸化”していく全身病です。


  ミトコンドリアDNAは活性酸素によって傷つきやすい特徴があります。
  このようにして傷つけられたミトコンドリアDNAの数が一定数を超えくるとエネルギー産生能力が低下し、「後天性ミトコンドリア病」が発生してくることになります。
 「後天性ミトコンドリア病」とは、馴染みのない病名ですが、これは”ミトコンドリアの機能が低下する病気”です。今までは、先天性の病気”遺伝的疾患”として考えられていましたが、現在は後天的な発症や、薬による副作用で発症することが証明されています。


 ここで、もう少し詳しくミトコンドリア病について説明しておくます。


ミトコンドリア病


 ミトコンドリアの機能障害により引き起こされる「ミトコンドリア病」という病気があ ります。このミトコンドリア病のほとんどの患者さんには、片頭痛が存在します。
 そして、この「ミトコンドリア病」は片頭痛の”モデル疾患”とされるものです。
 こうしたことから、最初に「ミトコンドリア病」について概略を説明します。


ミトコンドリア病とはどういう病気?


 ミトコンドリアは全身のひとつひとつの細胞の中にあってエネルギーを産生する働きを持っています。そのミトコンドリアの働きが低下すると、細胞の活動が低下します。
 例えば、脳の神経細胞であれば、見たり、聞いたり、物事を理解したりすることが障害されます。心臓の細胞であれば、血液を全身に送ることができなくなります。筋肉の細胞なら、運動が障害されたり、疲れやすくなったりします。
 ミトコンドリアの働きが低下することが原因である病気を総称してミトコンドリア病と呼んでいます。多くは生まれながらにしてミトコンドリアの働きを低下させるような遺伝 子の変化を持っている方が発症しますが、薬の副作用などで二次的にミトコンドリアの働きが低下して起きるミトコンドリア病もあります。


この病気の原因は?


 ミトコンドリアの働きを低下させる原因として、遺伝子の変化に由来する場合と、薬物などが原因でおきる場合があります。大部分は遺伝子の変化でおきるであろうと考えられていますが、ミトコンドリアのはたらきに関わるタンパク質は優に1000 を超えると推定されており、それらの設計図である遺伝子の変化がすべてミトコンドリア病の原因となる可能性があります。すでに200 種類程度の遺伝子の変化がミトコンドリア病に関係することがわかっています。
 さらに、これら遺伝子には、細胞の核と呼ばれるところに存在する核DNA(通常のDNAです)に乗っている遺伝子と、ミトコンドリアの中に存在する別のDNA(ミトコンドリアDNA といいます)に乗っている遺伝子があります。新しいミトコンドリア病の原因が核DNA 上の遺伝子から次々と明らかにされています。
 また核DNA に比べると短いミトコンドリアDNA 上の遺伝子にも、病気に関係する変化が患者さんで見つかっています。
  ミトコンドリアDNA はミトコンドリアの中に存在していますが、実は1 個のミトコンドリアの中に5 ~10 個くらい入っています。そのようなミトコンドリアはひとつひとつの細胞に数十から数百個あるので、1 細胞でみるとミトコンドリアDNA は数千個も存在していることになります。ですので、数千個もあるミトコンドリアDNAのほんの一部が変化しても細胞のはたらきに何も影響しないし病気にもなりません。ミトコンドリアDNA の変化で病気になっている人は、通常は変化したミトコンドリアDNA の割合が高いことが知られているのです。


この病気は遺伝するのか?


 核DNA 上の遺伝子の変化でおきる病気の場合は、いろいろな確率で親から子に伝わる可能性があります。しかし遺伝子の変化は生殖細胞(精子や卵)で突然起きることがあって、その場合は変化を持っている子しか発症しません。
  一方、ミトコンドリアDNA の変化で起きる病気の場合は少し複雑です。ミトコンドリアDNA はすべて母から伝わります。受精の時に、母由来の卵の中にはたくさんのミトコンドリア(ミトコンドリアDNA)が詰まっていますが、父由来の精子のミトコンドリアは卵に入っていきません。もし入ったとしても父由来のミトコンドリアは消滅するということがわかっています。つまり受精卵の中のミトコンドリアDNA はすべて母由来になり、もし卵の中に変化したミトコンドリアDNA があればそれが子に伝わることになります。 これを母系遺伝と言います。ただし、変化したミトコンドリアの比率が細胞の中で高くならないと病気にはなりませんので、母が病気だから子も同じ病気になるとは限らず、逆に母は変化したミトコンドリアDNA の比率が低くても、子が発症する場合があることになります。
 変化したミトコンドリアDNA が細胞内で増える理由というのがまだわかっていません。
 いろいろな要因があると推定されていますが、おそらく変化したミトコンドリアDNAを増やしてしまうような核DNA 上の遺伝子の要因があるという考え方があります。ミトコンドリアDNA の変化で起きる病気といいながら、実は核DNA 上の遺伝子が重要な役割を担っている可能性があるのです。


この病気ではどのような症状が?


 ほぼすべての細胞にミトコンドリアが存在します。細胞は同じ種類のものが集まって組 織というものを作ります。神経組織、心筋組織などと呼ばれますが、それらの組織が血管や結合組織などの他の組織といっしょになって、身体のために効率よくきちんと働くよう になっている構造体を臓器といいます。これが脳とか心臓とかになりますが、症状という のはこのような臓器のはたらきが低下した場合に現れます。
  ミトコンドリアのはたらきが低下して起きるミトコンドリア病の場合は、ひとつひとつの細胞のはたらきが低下したり、そのような細胞が消滅したりします。それがどの細胞にも起きる可能性があるので、いろいろな症状が現れることになります。けいれん、脳卒中、精神症状、発達の遅れなどの脳の症状、物が見えにくい、音が聞こえないなどの感覚器の症状、運動ができない、疲れやすいななどの筋の症状など、挙げればきりがありません。
 その中でも、比較的エネルギーを多く必要とする神経、筋、心臓などの臓器の症状が現れ やすいと考えられています。
 ミトコンドリア病の症状の特徴は、あらゆる年齢の方に、あらゆる症状が、あらゆる組み合わせで現れることと言えます。
 ミトコンドリア病の症状として、中枢神経系では、けいれん、ミオクローヌス、失調、 脳卒中様症状、知能低下、片頭痛、精神症状、ジストニア、ミエロパチーが起きます。


  例えば代表的な”主なミトコンドリア脳筋症”では


(1)カーンズ・セイヤー症候群(慢性進行性外眼筋麻痺:KSS)


 この病気は眼球運動麻痺、心伝導障害に網膜色素変性症を伴った病気です。3つの症状が常にそろうわけではありません。ミトコンドリアDNAの一部が欠けています。


(2)脳卒中様発作を伴うミトコンドリア脳筋症(メラス:MELAS)


 脳卒中のような症状と高乳酸血症を示し、若年で発症します。低身長で筋力低下がみら れます。ミトコンドリアDNA内のロイシンtRNAの点変異(DNAの1塩基の欠失、 置換、挿入のこと)が、日本の研究者によって明らかにされました。また最近、日本でL-アルギニン療法が提唱されて注目されています。


(3)ミオクローヌスを伴うミトコンドリア脳筋症(福原病:MERRF)


 このタイプは小脳症状、ミオクローヌス(不随意運動の一種)、筋症状、てんかんが主な症状です。この病気もミトコンドリアDNAのリジンtRNA内の点変異で起こります。

 


 次に、片頭痛の患者のおよそ半分が「マグネシウム不足」が存在します。

 

 以前までは片頭痛とマグネシスムの関連性が明らかになっていませんでしたが、最近の調査では片頭痛を抱えている半分の患者がマグネシウム不足であることが判明しております。


 それでは片頭痛発症に、なぜマグネシウムが関係しているのでしょうか?


 片頭痛は、これまで”ミトコンドリアのエネルギー代謝異常あるいはマグネ シウム低下によって引き起こされる脳の代謝機能異常疾患”であるとされています。

 

 

    下村登規夫先生は、以下のなかで、次のように述べています。


 下村登規夫、小谷和彦、村上文代:片頭痛とミトコンドリア。神経研究の進歩、46(3)391-396,2002


「ミトコンドリアの働きの悪さ」に、マグネシウム不足が加わると・


 片頭痛の方は生まれつきミトコンドリアの機能低下が存在します。ここにマグネシウムが不足すればどのようになるのでしょうか?

 マグネシウムイオンは細胞内小器官(ミトコンドリア)の膜構造ならびに細胞膜構造において膜の安定性を保つ役割をしています。
 細胞膜にはミネラルイオンが通過できる小さな「穴」があり、これを使って必要なミネラルを自在に出入りさせることで細胞内のミネラルイオン濃度の調整しています。ミトコンドリアには、細胞内のカルシウムイオン濃度を適正に調整する作用があります。
 マグネシウムイオンが不足すると細胞内小器官(ミトコンドリア)の”膜構造ならびに細胞膜構造”のイオンポンプの力が弱くなり、細胞内小器官であるミトコンドリア膜の透過性も亢進し、ミトコンドリア内に入り込んだカルシウムイオンは、ミトコンドリア外へ出ていけません。このために、カルシウムはミトコンドリア内に少しずつ蓄積してきます。ミトコンドリア内カルシウムイオンの増加が起こります。このようにして、ミトコンドリア内カルシウムイオン濃度を薄めるために細胞浮腫、つまり水ぶとりの状態になります。
  細胞内のカルシウムイオン濃度が異常に高くなり過ぎますと、ミトコンドリアの調整機能は破壊されてしまいます。その結果、調整機能が壊れたミトコンドリアは死滅してしまいます。
  ミトコンドリアのエネルギー産生やミトコンドリア自体の生死には、ミトコンドリア内のカルシウムイオン濃度が強く関係していて、カルシウムイオン濃度は片頭痛の発症にも非常に大きな原因となります。
  このようになった細胞に、適量のマグネシウムが供給されると、溜まっていたカルシウムイオンなどが排出され、それにつづき、水分も排出されますが、この水ぶとり状態も限度がありカルシウムイオンがある量を超えると、その細胞は不必要となり見捨てられます。そして、後にはカルシウムイオンなどで一杯になった固まりだけが残されます。これが石灰化した細胞のことです。結果的に、この細胞は死滅してしまいます。
 細胞内のマグネシウムが著しく不足すると、カルシウムイオンを細胞外に排出するカルシウムポンプの調整機能が働かなくなり、筋肉は収縮状態(緊張した状態)が続くことになります。片頭痛の前兆や、発症の引き金となる脳血管の収縮は、脳血管細胞内のカルシウム濃度の高まりによっても生じます。それはつまり、マグネシウム不足がもたらす結果でもあるのです。
 このようにして、マグネシウムイオンの低下はミトコンドリア内カルシウムイオンとナトリウムイオンの増加およびカリウムの喪失による細胞内でのカリウムイオンの低下を招きます。このようにして、細胞は興奮しやすくなります。 これが「脳過敏」を引き起こしてきます。このようにしてマグネシウムイオンの減少はミトコンドリアの代謝異常をきたして、神経細胞を興奮しやすくすることになります。これが『皮質拡延性抑制』を発生させることになります。

 

 これらは片頭痛の根本的原因として考えられているものです。

 

 片頭痛では、ミトコンドリア機能低下が生まれつき存在するために、ミトコンドリアはマグネシウムイオンの減少による影響をさらに受けやすくなることになります。マグネシウムイオンの低下は片頭痛発作の結果でなく発作の始まる前から存在しているのです。神経細胞の”興奮性の亢進”はマグネシウムイオンの減少の結果あるいはミトコンドリアの機能低下の結果として生じているものです。このようにして、「脳過敏」が形成されることになります。
 片頭痛とてんかんは密接な関係にあって,「片頭痛は本質的にてんかんの一種である」ことが強調されていますが、”脳の興奮性の亢進”は、上記のことを示すものです。
  そして、マグネシウム不足が持続すれば、ミトコンドリアの働きをさらに悪くさせることに繋がることになり、片頭痛を悪化させる”元凶”にもなってきます。

 

 

 その根拠とする”文献”は以下のものです。


 Welch KMA, Ramadan NM Review article; Mitochondria, magnesium and migraine. J Neurol Sciences 134 (1995) 9-14 2000.04.02


マグネシウム欠乏で片頭痛の起こるメカニズムとして


 更年期以前の女性では、月経前に血中マグネシウムを骨や筋肉へと移行させるため、脳 内のマグネシウムレベルが低下します。
  マグネシウム量が少ないと、カルシウムによる血液凝固作用を阻止するために働くマグ ネシウム本来の働きが出来ないため、小さい血栓を作りやすくする。この小さな血栓が脳の細い血管に詰まり、片頭痛を起こすとされています。
  脳内マグネシウムが減少する事で、神経伝達物質の過剰な活動や神経興奮などを起こし やすくして片頭痛を誘発します。
  マグネシウムの働きとして、血管を弛緩・拡張させる作用がありますので、片頭痛の原因となるけいれんや収縮を軽減がされる。また、脳の神経伝達物質と炎症性物質を制御し、乳酸の蓄積も防ぎ蓄積を減らすことで筋肉緊張を減らし、頭痛を起こしにくくしています。


 またマグネシウムが片頭痛の予防に効果的である、という研究結果が発表されています。
 アメリカではマグネシウムが片頭痛の予防にどれだけ有効かを調べる治験が行われまし た。

 その結果、1 日600mg のマグネシウムを毎日摂取すると、片頭痛の頻度が減り片頭痛の予防に繋がることが分かったのです。
  片頭痛の発作が約4 割減少するという治験結果で、片頭痛予防としてマグネシウムの有効性が注目されました。
 厚生労働省での1 日のマグネシウム所要量は、成人男子280 ~320mg、成人女子240 ~260mg です。
 しかし日本では、ほとんどの人が一日の必要量を満たしていません。
 片頭痛予防として注目されているマグネシウムは食品から摂れる栄養素ですが、なぜ不足しているのでしょうか。
 マグネシウムは海藻類や乾物、豆腐、ゴマなどに多く含まれています。
 しかし戦後、日本人の食生活は肉中心の欧米型へ変わりました。
 昔ながらの和食を食べなくなったことが、日本人のマグネシウム不足につながっているのです。さらに白米、白砂糖、精製塩などの精製食品も、マグネシウム不足の原因と言われ ています。
 また添加物、土・水・大気汚染などが、マグネシウムの働きを阻害しているとも言われています。現代の食生活ではマグネシウムが不足しやすくなっています。
 片頭痛の予防にはストレスをためない以上に、栄養面での見直しがもっと必要です。
 また片頭痛のきっかけになってしまうほかの要因は、妊娠・月経・アルコール・ストレ ス・ある種の利尿剤(この他の薬剤も可能性があります)。
 これらすべて体内や筋肉内・脳内などのマグネシウム量を減らしてしまう原因となります。
 マグネシウムは現代人にとって実に欠乏しやすいミネラルで、よほど気を付けていないと食事から摂るべきマグネシウムも減ってしまうから注意が必要です。
 このように片頭痛発症には、ミトコンドリアが第一義的な側面を有していると考えられ、 症候論の上でも、片頭痛とてんかんという2点がこれを裏付けているようです。


「慢性頭痛診療のガイドライン」では、・・


 マグネシウム,ビタミン B2 ,フィーバーフューは,ある程度の片頭痛予防効果が期待できます.これらの薬剤の副作用には重篤なものはみられず,また安価であることから片頭痛予防薬の選択肢として考慮してもよいでしょう ( 推奨のグレードB ) .
 自然食品やサプリメントとして使用されているものに片頭痛予防効果が示唆されているものがあり,マグネシウム,ビタミン B2 ,フィーバーフューがその代表です.処方薬による予防療法を希望なさらない場合には試みてもよいでしょう.

 そして、ビタミン B2については、片頭痛患者にはミトコンドリア機能の障害があるという仮説から,ビタミン B2 400mg をプラセボ ( 偽薬 ) と比較した試験によりビタミン B2 の有効性が確認されました(推奨グレードB).ビタミン B2 は 400mg という大量ではなく, 25mg の少量でも片頭痛予防効果があるという研究もあります.

 

 このように、専門家は、片頭痛患者にはミトコンドリア機能の障害があるという仮説どまりにしか考えておらず、決して”本命”とは考えていないことが示されています。


 このため、マグネシウム補充は、あたかも楊枝の褄程度の役割でしかなく、マグネシウム補充の重要性が理解されていません。


 しかし、ネット上では、マグネシウムの重要性を指摘するサイトも多いようです。
 なかでも、サプリ「ずきしらずの実」が広く宣伝されているのは、オオイタドリ、フィーバーフュー、塩化マグネシウムが含まれているからです。 そして、多くの片頭痛患者さんには好評のようです。

 


 以上、片頭痛がミトコンドリアの機能の低下する頭痛、すなわち後天的なミトコンドリア病という考え方は、きちんとした文献的なエビデンスのあることです。
 決して、一般開業医の戯れ言ではありません。
 ただ、これを基にしたMBT療法も、最低でも3ヶ月、なるべく半年以上続けることが大切とされていたことから、このような煩雑な方法が一般の方々に広く受け入れられなかった原因なのかもしれません。


MBT療法とは・・


 MBT(Molecule-based therapy)とは鳥取大学の下村登規夫先生が提唱されている「分子に基づいた治療法」のことで、個人の疾病に至った素因を分子レベルで考慮して、すべての疾患を全身的疾患としてとらえ、その物質代謝を改善することによって治療を行なうというものです。(MBTにおける分子とは遺伝子、電解質、神経伝達物質、ビタミン、場合によってはミトコンドリアなどの細胞内小器官をも包括する)
 片頭痛治療では次の5つを標的として選定。主に食生活の改善により各栄養素の補充・機能改善を目指します。
 

 
1. マグネシウム補充:大豆製品(豆腐、納豆など)やほうれん草に多く含まれている。
 
2. ミトコンドリア機能改善:ビタミンB群(豚肉、うなぎ、大豆等)を摂取
 
3. ラジカルスカベンジャー(活性酸素を毒消しする物質)増加:ビタミンC,A,E(果物や緑黄色野菜等)を摂取 

 
4. セロトニン(神経系)改善: セロトニンの前駆物質であるトリプトファン(牛乳や乳製品、ゴマ、大豆製品等)を摂取

 
5. 自律神経系の安定:歩行運動(夕方に40分/回で5回/週以上) の実施

 

 
 摂取は最低でも3ヶ月間続けて下さい。(6ヶ月以上が望ましい。)片頭痛の回数減少など、改善がみられるはずです。

 

 

こういったことから、片頭痛とは・・


 そして、片頭痛は”「後天性ミトコンドリア病」”と考えるべきものです。


 すなわち、片頭痛は”ミトコンドリアの活性低下”という「遺伝素因」をもとに、生まれてから諸々のミトコンドリアの働きを悪くする要因が追加されることによって、さらにミトコンドリアの機能を低下させることによって起きてくる頭痛です。この”ミトコンドリアの活性低下”はミトコンドリアDNAによって先祖代々継承され、生活環境および生活習慣により悪化してきます。
 すなわち、生活環境によって生み出された活性酸素および有害物質などの外部の生活環境要因に、食生活上の問題点、マグネシウム不足・必須脂肪酸(オメガ3とオメガ6)の摂取のアンバランス・鉄不足・抗酸化食品の摂取不足・過食に、睡眠不足や運動不足や不規則な生活などの生活習慣が加わって、ミトコンドリアの機能は低下してきます。


  このようなミトコンドリアの機能を低下させる要因を取り除かない生活を送ることによって、「酸化ストレス・炎症体質」が形成されてきます。


  ここに先述したような「脳過敏」を来す要因3つが次々と追加されることによって、”日常的に感じる極く軽度の頭痛”を出発点として、緊張型頭痛から、片頭痛へと進展していくものです。
  最も、卑近な例を挙げれば、日常的に感じる極く軽度の頭痛に対して、市販の鎮痛薬を繰り返して服用することによって、ミトコンドリアの機能を低下させ、さらに脳内セロトニンを低下させることによって薬剤乱用頭痛を併発させてくることになります。市販の鎮痛薬という”薬剤”が原因となった「後天性ミトコンドリア病」を作る典型例を示していることになります。
  ここにミトコンドリアの活性低下という”遺伝素因”があれば、当然のこととして片頭痛を発症してくるということです。


  このように、片頭痛は”後天性ミトコンドリア病”と考えるべきものです。

 

 


 これまで、こうしたことは以下の記事で明らかにしてきました。

 

 

後天性ミトコンドリア病
 
https://ameblo.jp/yoyamono/entry-12177569015.html


後天性ミトコンドリア異常症 一中毒,神経変性,老化一
 
https://ameblo.jp/yoyamono/entry-12173206724.html


ミトコンドリアの機能低下”説” ??? 
 
https://ameblo.jp/yoyamono/entry-12193517211.html


後天性ミトコンドリア異常症 一中毒,神経変性,老化一
 
https://ameblo.jp/yoyamono/theme-10086055005.html


「片頭痛治療のしおり 最新版」
 
https://ameblo.jp/yoyamono/entry-12242185460.html


片頭痛の包括的治療とは・・
 
https://ameblo.jp/yoyamono/entry-12259780172.html


片頭痛治療上の生活指導とは・・その4
 
https://ameblo.jp/yoyamono/theme5-10086045252.html


「ゲルソン食事療法」
 
https://ameblo.jp/yoyamono/entry-11950044393.html


片頭痛とミトコンドリア その12 活性酸素
 
https://ameblo.jp/yoyamono/entry-12285620853.html


MBT療法(DASCH diet)
   
https://ameblo.jp/yoyamono/entry-11952953287.html


ミトコンドリアの記事
  
http://ameblo.jp/yoyamono/themeentrylist-10086055005.html


ミトコンドリア病とはどういう病気?
   
http://ameblo.jp/yoyamono/entry-11952367809.html