近親者が風邪をひいた時などは、漢方の良い適応である。しかし近親者の病気で1度処方してうまくいかない時は速やかに治療者を信頼できる他人に変えるべきだと思っている。尾台榕堂の娘も浅田宗伯が治療している。
旧友尾台榕堂の長女、産後血熱解せず、、午後頭痛甚だしく、殆ど蓐労状を具す。余(浅田宗伯)三物黄芩湯を処して、ようよう癒を得たり。 以後その症発動するときは、自ら調剤してこれを服すと云う。
と勿誤薬室方函口訣に記載がある。尾台榕堂ほどの名医が、産後という契機と症状から三物黄芩湯証に気づかないはずがないと思われる。自分の娘という特殊なファクターが尾台榕堂の判断力を鈍らせているとしか思えない。特別な感情が入ると往々にして治療はうまくいかない。正に栗園医訓にある
虚心にして病者を診すべし
という浅田宗伯の言葉の重みを感じる次第である。
参考文献 勿誤薬室方函口訣釈義 長谷川弥人 創元社
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