モンスタークレーマー対応の注意点 | 弁護士吉成安友のブログ

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荒川区西日暮里に事務所を構える弁護士。
大分県豊後高田市の若宮八幡神社の宮司を900年務める家に生まれ,神職資格を持つ。
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 以前、クレーマーへの対処法について書きました(クレーマーへの対処法)。

 もちろん、ここでいうクレーマーというのは、明らかに理不尽な要求を突きつけるいわゆるモンスタークレーマーというべき人のことで、正当な要求や主張をしている人のことではありません。

 前回の記事に結構反響があったので、今回は、モンスタークレーマーへの対応を、注意点という観点から書きたいと思います。

 第1に、隙を作らないことです。

 モンスタークレーマーというのは、意外と知性が低くないことも多く、一方で絶望的に認知の歪み、思考の偏りといったものが生じています。

 こういった人は、だれがどう考えても理不尽な要求を、自分では、正当な要求だと信じ込んでいます。

 そして、自分の都合の悪いことは目に入らなかったり、自分の都合のいいように意味付けする一方、少しでも自分の正当性の根拠になりそうなことは、めざとく見つけて、それを過大に評価し、自分が正しいんだという確信を強めていきます。

 例えば、クレーム対応の担当者が経緯について話している時に、最初に対応した店員の名前を単純な勘違いで間違えて言ってしまったとします。

 この場合、後で勘違いでしたと言っても、モンスタークレーマーが酷い嘘をつかれたという思考から外れることはありません。また、その間違いが本当に些細で、何の影響ももたらさないものであったとしてもモンスタークレーマーの中では途轍もなく重大な事項だという認識になります。そして、この会社はこんな重大なことについて嘘を付く会社だ、だから自分の要求は正しいという発想になります。

 それで、そもそも店員の名前からして嘘を付くようなあんたの会社はどうなってるんだという主張が執拗に繰り返されることになります。

 こんな些細なことでさえ問題となるのですから、事実関係の把握が曖昧なときや知識が不十分なときには、不用意な発言をすることを控え、後から突っ込まれるようなところを作らないことが大事です。

 また、以前のブログでも書いたように下手に出るということも、一つの隙であり、相手に自分の正当性を信じ込ませることになるという点で問題があります。

 さらに、ついカッとなって、「なんだ、てめえ」などと言葉遣いが荒くなったりすると、モンスタークレーマーの方が酷い言葉を使っていた場合でさえも、担当者がこんな暴言を吐く会社はやはり悪い会社だ、だから自分の要求は正しいという発想となります。そして、そのことについて後でしつこく責め立てられることになります。

 第2に、安易な妥協をしないことです。

 一つ小さな妥協をすれば、相手の要求はどんどんエスカレートしていきます。

 また、モンスタークレーマーの特徴として、一度は妥協をした者が、次の要求を飲まない場合、最初から全く要求を飲んでいない場合以上に、激しい憎悪の念を持つ傾向があるように思われます。

 第3に、話せば分かるという期待を過度にしないことです。

 前述のように、モンスタークレーマーは、知性が低くない場合も多く、一見論理性のある話し方をする場合もあります。

 特にこうしたモンスタークレーマーに対しては、論理を切々と説けば、話が通じるのではないかと思いがちです。

 しかし、常識で考えればだれもがおかしいと思うような要求を突きつけてくるモンスタークレーマーには、そもそも強烈な認知の歪みが生じています。それゆえ、いくら論理性があるように見えても、前提が狂っているため、いくら論理を切々と説いても、話が通じません。

 モンスタークレーマーとしても、話し合いを続け関わり合いになる時間が増えれば増えるほど、執着も強くなっていきます。

 したがって、話し合いが平行線を辿ることが分かれば、早々に話し合いを打ち切るべきでしょう。

 脅し的に訴えるぞと言うクレーマーもいますが、訴訟の場で決着を図る方がむしろ会社側にとっても都合がいい場合が多いのではないかと思います。

 余談ですが、判決後は、不当判決だと、裁判所に怒りの矛先を向けるようになることが多いように思われます。

 第4に、モンスタークレーマーが犯罪行為に走った際には、漫然と放置してはいけません。

 この場合、早急に、刑事手続をすべきです。

 モンスタークレーマーは、話し合いを打ち切られると、脅迫罪、強要罪、恐喝罪、名誉毀損罪、威力業務妨害罪に該当するような行為に走りがちです。

 交渉を打ち切られたモンスタークレーマーが、お前の店に火を付けてやるなどと脅したり、この会社は不正を行なっているなどといった誹謗中傷をネットに書き込んだり、店の前で罵詈雑言を叫んだりといった犯罪行為を行うことは少なくありません。

 刑事手続というと、一般に、躊躇があったり、余計に逆恨みされるのではないかという心配をしたりする傾向があるようですが、私の経験上は、迅速に刑事手続きをした方が、問題が小さく終わっていることの方が多いように思われます。

 さすがに犯罪行為については、モンスタークレーマーであっても最初は躊躇がありますが、それに対してなにも反動がないと、感覚が麻痺してきて、怒りにまかせて犯罪行為をエスカレートさせていきます。

 子供のしつけではありませんが、悪いことをしたときにすぐしかるというような対応をすることはとても大事だと思います。

 最後に、以上で述べたこととも関連しますが、モンスタークレーマーに対して、恐れない、怯まないことです。

 攻撃的な人間ほど、実は内面は脆く、弱さを抱えており、それゆえ他人の恐れや怯みにも敏感です。

 相手が恐れている、怯んでいると分かると、モンスタークレーマーは勢いづきます。

 訴訟をするならして構わない、犯罪行為に走ったらすぐに刑事的な対応をすれば良いと、どっしり構えることが大事だと思います。


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