ガム噛むと、正答率15%アップ | 横山歯科医院

横山歯科医院

http://yokoyama-dental.info/

[<高齢者>ガムかんだ後、正答率15%以上アップ]

(毎日新聞  2011年2月21日)


食べ物をよく噛むことは、消化促進や肥満予防につながることが知られて
いる。
最近は脳の働きとの関係の研究も進み、心身の健康へのプラスの効果など、
咀嚼(そしゃく)の重要性がさらに注目されている。
【大場あい】


「よく噛んで食べるということは、人間の健康にとっては、いいことずくめの
行為だ」
脳と咀嚼との関係について詳しい小野塚實・神奈川歯科大教授は強調する。
料理や器の見た目(視覚)、味、香りなどの五感への刺激に加え、噛むという
行為で脳に刺激を与えられるからだという。


小野塚さんらはこれまで、65歳以上の高齢者1,000人以上を対象に、噛む
ことと記憶の関係について調べてきた。
64枚一組の写真を覚えてもらい、一部を差し替えたもう一組の写真を見て
「同じものを見たかどうか」を答えてもらうテストで、約2割の人はガムを
2分間噛んだ後に記憶してもらったときのほうが、噛まずに記憶したときより
正答率が15%以上アップした。


東北大などが仙台市内の70歳以上の高齢者約1,200人を対象に実施した調査
では、健康な人は平均14.9本の歯が残っていたのに対し、認知症の疑いのある
人は9.4本だった。
脳をMRI(磁気共鳴画像化装置)で調べると、歯が少ない人ほど、記憶に関係
する海馬付近の容積が減少していた。
小野塚さんは「歯を使って噛むという行為自体に、認知機能にプラスの効果が
あるのではないか」と見る。



泰羅雅登・東京医科歯科大教授(神経生理学)によると、よく噛むからと
いって、アルツハイマー病や脳血管疾患など認知症の原因を予防できるという
根拠はないものの、脳に刺激を与え続ける1つの方法にはなりうるという。

脳から顎を動かす筋肉に信号を伝える「三叉神経」は、歯ごたえなど歯や
口の粘膜の感覚を脳に伝えるルートでもある。
三叉神経は、覚醒(頭がさえた状態)をコントロールする「脳幹」と呼ばれる
部分につながっているため、何かを噛んで脳幹に刺激が伝わると脳の覚醒に
つながるという。
泰羅さんは「ガムを噛むと頭がすっきりするといわれるのは、三叉神経を
介したこうした働きも関係している」という。


だが、噛んで食べるという行為は非常に複雑で、脳との関係についてはまだ
分からないことも多い。
例えば、顎と舌では、それぞれ動かしたときに働いている脳の領域が少し
異なるという。
泰羅さんは「咀嚼は、大脳の内側の大脳辺縁系がつかさどる本能的なシステム
(生きるために食べること)と、大脳新皮質がコントロールする人間の意思や
理性に関係するシステム(楽しんで食べること)の両方が、うまくバランスを
とっていると考えられ、非常に興味深いメカニズムだ」と話す。



「よく噛むこと」の目安として、厚生労働省などは「一口30回」を例に挙げて
いる。
だが、「数えるのが面倒くさい」という人も少なくない。

猪子芳美・日本歯科大新潟生命歯学部講師は「食物繊維を多く含む食品を
メニューに加えると、意識しなくても30回の咀嚼と同程度、食べ物を噛む
ことができる」と提案する。

猪子さんらは、健康な成人男女12人にピーナツ(2粒)と生のニンジンの
角切り、それぞれ約2グラムずつを食べてもらい、
咀嚼回数や咀嚼に関係する筋肉の動きなどを調べた。
咀嚼回数を指定しなかったとき、のみ込むまでの咀嚼回数は、ピーナツが
平均24.5回、ニンジンは27.1回だった。
ちょうど30回咀嚼した場合と比べると、ピーナツの場合だけ咀嚼時間が短く、
筋肉の活動量も少なかった。

猪子さんは「どちらも歯ごたえのある食品だが、ピーナツはすぐに砕けて、
のみ込めてしまう。
一方、食物繊維の多いものは、噛んでもなかなか小さくならないので、時間を
かけて噛むことになる。咀嚼回数を増やすことに一生懸命になるのではなく、
繊維を多く含むものをメニューに取り入れて、食事を楽しむ中でしっかり
食べ物を噛んでほしい」と話す。


http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110221-00000013-maiall-soci