百星の明は一月の光に如かず
淮南子 / 劉安
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Yahoo! JAPANを退職しました(翻訳)
http://d.hatena.ne.jp/nokuno/20101026
景気が悪くなってくると、経費削減でいろんなつまんない事をしなくてはいけなくなります。
やれ電気を消せ、コピーするな、残業するな etc...
そうした抑圧的な施策は、短期的な利益を上げる事は出来ますが、長い目で見るといろんな意味で貧しい会社を生み出します。
個人に対して費用対効果を考える義務や権利を与えず、コスト意識だけ押しつけられれば萎縮するに決まっています。コスト面だけで考えれば「会社を不在にするのが良い」という結論にしかなりません。悪い事に、費用は総務の人が管理していて、効果を測定する人が上司でお互いに連動していない、という事もあります。
あります、っていうか僕が見る限りほとんどの会社がそうなんですが。
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ま、そうしたコスト圧縮の話とは別に「プログラマーをどのように評価すべきか」というのは難しい問題です。
デザイナーやサウンダーみたいにアウトプットがそのまま社会的評価につながり易い(完全にイコールではないけれど)人々は、割と楽だと思うんです。みんなが良いと思えるモノを生み出す人=評価の高い人な訳ですから。
プランナーやディレクター、プロデューサーみたいなものも、まあある程度は判ります。仕事や金を取って来られないPはダメですから。
これに対して、プログラマーの評価というのは大変難しい。
バグが少ないか?とゲームのセンスがあるかどうか?は別の話ですし、メンテナンスしやすいかどうか?とかも大事な話です。でもじゃあ、それをどうやって計測すれば良いのか?という問いには今のところ答えがありません。
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以下に「なんとなくヨコオが感じるプログラマーの階層」を書いてみます。
S級
基礎能力がメチャクチャ高い人。SPEC。
プログラムが全く苦ではない特殊な人種。
日本語を話すようにプログラムを書く異能力者。
A級
一部の能力が優れている人。
作ったプログラムが使いやすかったり、センスがあったりする。
コミュ力が発達していて、相手の意図を汲み取るのが上手な人も
ココに。
B級
可もなく不可もない。
いわゆる「B級品」という意味ではなく、良く居る一般的なプログラマー。
C級
素人目に見ても判るダメプログラマー。
担当箇所にバグが多く、スケジュールを見積もれない。
作ったものは本人以外には異様に使いづらい。
ひたすら文句を言うタイプもここ。
D級
プログラマー以前に人としてダメなタイプ。
居るだけで害になる人や、途中で投げ出したりする。居ない方がマシ。
これは僕のカテゴライズなので、他の人は違うと思いますが。
それにしてもD級ヒドイ。ヒドスギル。
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で、それらのクラスの比率なんですけど、
S級 2%
A級 5%
B級 86%
C級 5%
D級 2%
こんな感じ。
というかデザイナーとかプランナーとかも似たようなモノな気がします。
本来はB級がもっと細かく分かれてるんだと思いますが、素人から見ると分別できない=「フツーのプログラマ」がほとんどなんです。
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そこで問題になるのはB級の人達の評価。
B級以外の人は、一目で分かるんですが、B級の人達はどう違うのかさっぱりわからない。
言われた事は概ねちゃんとやるし、バグもメチャクチャ出すわけじゃない。コミュ力が極端に低いわけでも無いけれど、みんなに愛される程素敵な人格でもない。
こういう人達を非プログラマが評価するのは大変難しいわけです。
でも会社の仕組み上、やらなきゃいけない。
ということで、客観的に測定可能な部分(労働時間がどうとか印刷量が少ないとか)でなんとかその人のお値段を知ろうとする人が出てくる。
Yahoo Japan では「バグの件数で評価を下げる」という激しいソリューションを導入しているようですが、それもまあ一つの方法でしょう。
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その評価制度が正しいか?と言われても素人には全然わかりません。
それ以外に評価をする方法が無いんですから。
ここで思うんですけど「プログラマーを正しく評価するシステム」は、プログラマーにしか作れないんじゃないですかね。だって自分達の事を一番良く知っている訳ですから。
でも、多くのプログラマーが前出のブログのように既存の評価システムを非難するだけで、具体的な評価方法を提示出来ていない。
上記のブログを読んでプログラマー各位が考えるべきは「Yahoo Japan もダメだねー。どこの会社もヒドイよねウンウン」ではなく、
「プログラマの正しい評価制度とは一体なんだ?」
「なぜ彼は評価制度を変革する事が出来なかったか?」
という所じゃないでしょうか。
このあたりの答えを持たないのに、既存の評価システムを非難するだけじゃ状況は一向に改善しないように思う訳です。
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余談。
僕が今まで出会ったS級・A級のプログラマーの人達ですが、彼等が会社の待遇について文句を言っていたのを聞いた事がありません。
じゃあ会社のプログラマ評価制度は正しかったか?→いいえ。
プログラマに限らず、ゲーム会社の社員評価制度がまともだった事はほとんどありません。では彼等は何故不平を言わなかったのか?
本当は何を考えているのかを知る事は出来ませんが、彼等が信じているのは自分のスキルだけで、他人の評価は気にしていないように見えました。自分の評価ではなく、自分の造り出したプログラムにこそ価値があると思っていた……のかもしれません。
平々凡々たる自分には、そういう姿勢はまぶしく見えるのでありました。
ではまた。
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