夜話 1322 「蝉しぐれ」再見 | 善知鳥吉左の八女夜話

善知鳥吉左の八女夜話

福岡県八女にまつわる歴史、人物伝などを書いていきます。

夜話 1322 「蝉しぐれ」再見 


藤沢周平の「蝉しぐれ」を映像化したものにNHKのテレビドラマと某社の映画がある 

テレビの方は内野聖陽 映画では市川染五郎が主演 

ダントツにテレビの方が優れている 

主人公牧文四郎と 幼ななじみのお福とのフレッシュな恋心が 成人した身分の違う両者に淡く流れる抒情性をテレビはよく表現していた 昨日の三度目の「蝉しぐれ」は八女図書館のDVDを借りて観た 

観終わって すぐに用意していた映画のDVDにとりかかった 

比較しするつもり
善知鳥吉左の八女夜話
 

テレビと映画では俳優に違いがあった 悪家老の平幹二郎が優れていた それに石橋蓮司も 

この一作ですつかり内野聖陽ひいきになった 

テレビの小室等の作曲 音楽と歌曲が優れていた 

欅御殿での死闘に主人公に加勢する布施鶴之助が映画では省かれていた 映画化するには登場人物の削除が必要だつたのか 

原作者の訴える憐憫の情が希薄になった


やはり時間をおかずに比較するがいい 

苦笑いしながらの評である 

テレビとそっくりの同じ場所が映画で出てきたのには驚いた 

文四郎が父の遺骸を大八車で運ぶ坂道のシーン 

あの坂道はテレビと同一の場所 

坂の右側の木の皮が変な剥げかたをしている 

カメラのアングルも同一と見た  

映画狂を自認しているこの老人の眼をくらますことは出来ぬとニヤリとした 

そこで顔が引きつった 

テレビと映画が同一監督ならば とあわてて調べたら テレビの脚本家と映画の監督は黒土三男   

あの坂道で父の遺体を大八車で運ぼうとする文四郎を手伝うお福との無言劇のシーンは秀逸だつた 

映画監督黒土さん 同じ坂道を選んだに違いない


黒土さん あの坂道のシーンは この老人は訪ねて実感してみたいほど気に入った


山本健吉夫人の石橋秀野さんの最後の句に「蝉しぐれ」が詩われていたことを思い出した