2010年09月04日(土)、深夜零時からの「小説講座」のツイートです。テキストはぼくの小説「彼の青いシャツ Remix」です。初めての、自分の作品の読解をしてみました。
山川健一です。ツイッター上の小説講座を、これから1時間ぐらいやります。TL上邪魔だという方は、恐れ入りますが一時的にでもぼくのフォローを外してください。よろしくお願いします。
posted at 00:01:54
tutico_dx
山川講師、楽しみにしています。
読んでくださる方は、いつものように、途中で感想をツイートして下さってまったく問題ありません。むしろ歓迎します。質問もOKです。できればそのツイートの最後に、以下のようなハッシュタグをコピペしてください。 #yamakenheads
posted at 00:03:22
「文は人なり」って言葉があるよね。フランスの博物学者ビュフォンの言葉です。文章は書き手の考えや性格を表しており、文章を見れば書き手の人格さえわかる、というような意味だと思います。これは、典型的な作家論の立場だよね。
posted at 00:05:23
「作家論の立場」とここで言ったのは、その作家と作品は切り離すことができない、という立場です。批評家の小林秀雄は、 友人の小説家の作品を読まないことで有名だった。
posted at 00:06:03
若い頃は、小林秀雄の本がぼくの教科書だった。最後の講演会にも行ったことがあるくらい。ま、ファンだったわけです。話を戻しますが、小林はその理由を問われ、
「俺は実際の彼をよく知っている。なのになぜ作品まで読まなければならないんだ?」と答えたそうです。
posted at 00:07:48
内山真李
入試の面接で、今読んでいる本はと聞かれ、「小林秀雄の『私小説論』。まだ理解が出来ません」と答えました。それでも通してくれ(面接は学科長でした)、感謝してます。講演、わたしも拝聴したかったです。
しかし、これでは傑作も駄作もどうでもよくなってしまう。つまり、文芸批評というものが成立しない。というわけで、テキスト論が登場します。一度書かれた小説はその作者と完全に切り離して読み論じることができる、というのがテキスト論の立場です。
posted at 00:10:20
そうでなければそもそも批評は成立しなくなってしまうからね。大学の文学部も不要だということになります。
posted at 00:10:54
そのテキスト論を前提にツイートします。テキストはこの間ツイートした
「彼の青いシャツRemixー by山川健一」で、全文をブログにアップしました。http://ameblo.jp/yamaken/
posted at 00:11:11
このツイッター小説は、じつは
「彼の青いシャツ」というかつての短編を、時代背景とツイッターという媒体を考慮して書き直した作品です。音楽で言えばREMIXだね。
posted at 00:11:30
男女のカップルと、オートバイが2台登場しますが、オートバイは恣意的な存在ではなく、これがクルマでは話が成立しない。この作品におけるオートバイは自由と孤独の象徴、もっと言えば
「自立した単独者」の象徴なのです。
posted at 00:11:44
「自立した単独者」は、作家デビューしてから今日まで、ずっと変わらないぼくの文学上のテーマでもあります。
posted at 00:12:30
「ここがロドスだ、ここで跳べ!」の主人公の滝口直樹が娘と乗るのは軽自動車ですが、あそこがオートバイでは逆に困るのです。「こちら側」の世界では血の繋がっていない「娘」を直樹が受け入れる象徴が、最小限の室内としての軽自動車だからです。
posted at 00:12:48
「彼の青いシャツ Remix」は、最初は、普通の情事のようにストーリィが展開します。舞台はほとんどホテルの部屋だけで、あとは2人の会話で展開していきます。もちろんこれは意図的な設定です。
posted at 00:13:14
いろいろな意見があるだろうけど、これも恋愛の1つの形であることに変わりはないとぼくは思います。で、すべての恋愛はどちらが「権力」を奪取するかというゲームみたいなものだというのがぼくの意見なんだよね。
posted at 00:19:13
権力というのは言いすぎかもしれないけど、どちかがイニシアチブをとっていくのが恋愛というもので、民主主義的な恋愛というものは存在しないと思います。
posted at 00:20:05
「彼の青いシャツ Remix」では、目まぐるしく権力の位置が変更されていく。ホテルの部屋の中という密室で、ほとんど会話だけなのに、ストーリィの展開は非常にスピーディで動的なのです。あたかもオートバイの疾走のように。そういう意味では、オートバイは2人の関係のメタファーでもあるわけです。
posted at 00:20:29
bpm120run
なるほど、オートバイは基本的に一人用の乗り物ですし、また映画「イージー・ライダー」やマーロン・ブランドの「乱暴者」でもみられるように、若者の権威に対しての反抗の象徴でもありますよね。
繰り返しますが、この小説は、基本的に部屋の中で男女2人が会話することで成立します。会話から2人の背景が少しずつわかってくるという構造になってるんだよね。その度に力関係が逆転していく。
posted at 00:20:52
会話によって2人の背景が明らかになるにつれて、権力を持つ側が入れ替わるという意味です。ただし問題なのは、
その交代劇があくまでも読者の側で起こるということです。
posted at 00:21:25
いつもリツイート、ありがとう!@ttattala
posted at 00:28:00
こんばんは~。いま、ちょっと休憩してコーヒーいれました。渋谷はまだまだ暑いよ。@hiyoko_gang
posted at 00:29:22
sola723
ゆっくりやってください!でも、こういう企画も楽しいですね。まさかこんな時代がくるとは…って気持ちです。
つづけます。なーんだ「彼」は妻帯者なのかとか、麻実には他に2人も男がいたのかとか、でもその妻は亡くなってるのかとか。新しい背景が少しずつわかってきます。10人の人間がいれば、10通りの倫理というもののコードがあると思います。
posted at 00:31:40
読者はそれぞれ自分のコードにしたがって、「彼」か「麻実」のどちらかに肩入れしていくだろうと思います。
posted at 00:31:48
こうした背景は、じつは登場人物の2人にとってはわかりきったことです。たとえば
「彼が妻帯者だ」ということを麻実は知っているわけで、それを初めて知るのは読者の側です。
こうしたことを小説の進行と共に「知る」のは読者の側なのです。
posted at 00:33:32
「なんだ彼には奥さんがいるのか」→
「え、でも既に亡くなっているのか」というふうに、読者の視線は移行していきます。そこに、いわばこの短編小説の仕掛けがあります。ぼくの他の小説よりも、読者の置かれたポジションに意識的なのです。
posted at 00:34:47
SCraharu
山川さんの小説に影響されてバイクの免許取りました。しかも空冷単発のバイクに乗りました。エアーズロックにも行きました。
テキスト論を前提に言うけど、ある種の短編小説は、この作品を含めて、シンプルに見えながらこうした複雑な構造に支えられているとぼくは思います。
posted at 00:36:35
こうした構造を持つ小説が、どこに向かうか。そこに、作家の個性があらわれます。この作品なら、結末において、2人にどんな形であれ「癒し合う」関係が生まれるかどうか。それがポイントだろうと思います。
posted at 00:37:39
この小説のポイントの1つはは63の、
<麻実はもう一度上半身を起こし、両方の目を見開いた。黒く大きく、きれいな目だった。>だろうと思います。
ここで、男女が初めて正面から向かい合うシーンだからです。
posted at 00:39:21
麻実は、どんな形であるにせよ、「彼」のことが好きで、愛している。そして、60の
、「秘密の関係の人のほうが絶対有利だよね。この人にはなんでも話してつらい思いをさせてると思うから」という言葉の対象は、他ならぬ目の前の「彼」かもしれないのです。
posted at 00:41:07
その辺の女心ってものは複雑で、残念ながらぼくごときではとうてい太刀打ちできません。「彼」も一瞬そう考え、迷う。
「俺はおまえが好きだよ」と言ってしまうかどうか、60における麻実の言葉を聞いて迷いが生じます。
posted at 00:42:33
だって、彼女の「秘密」をいちばん知っているのは、他ならぬ自分なのですから。そして目の前のこの愛しい女は、そういう相手こそが大切だと、たった今告白したわけですから。
posted at 00:44:30
「彼」は迷い、しかしここで「好きだ」と言ってしまえば、砂漠を旅する男が一杯のコップの水に飢えるように、日常生活において麻実の不在に苦しむだろうと思うのではないでしょうか。
posted at 00:45:41
そして、61で言います。
「そういうもんかね」
posted at 00:46:29
この男は、はぐらかして、逃げたわけです。こういうのは臆病であるとも、大人であるとも表現できるよね。いずれにせよ、この短い台詞で、2人の距離は地球と月ほどにも遠ざかってしまう。

posted at 00:47:59
62の麻実の言葉。
「わたしが誰かのわたしになるなんて、やっぱりおかしいもん。わたしはわたしだもの。わたし、切なくなるくらい好きな人にしか抱かれたくない」というのは、「彼」への恋の告白とイコールです。
だからこそ、63につながっていくわけです。
posted at 00:50:03
考えてみれば、男女の恋ってものは、切なく儚いものです。
posted at 00:50:55
sola723
読み手側の人生経験も読書には大いに影響しますね。
70から74まででは、恋の危険な魔法の領域を脱し、2人が日常の時間の流れの中に帰還したことが示されます。
posted at 00:53:11
麻実は男に
「ねえ、ずっと友達でいてくれる?」と聞きます。
彼は78で答えます。
「いいよ。おれの人生、どうせ暇そうだから」
posted at 00:54:51
bpm120run
う~ん、受容したということでしょうか?! 恋愛の力関係から解放された?!
これは、さまざまな事情から恋にすすむことができない相手を、彼が許したということだろうと思います。彼は恋愛関係を切り結べない女である麻実を許し、また、その時彼も許されたのでしょう。
posted at 00:56:23
だからこそ、79で
「そのまま、麻実は目を閉じた」のです。このシーンの麻実は、聖母みたいです。
posted at 00:57:18
そして、小説は結末を迎えようとします。直前、
「ねえ。シャツ、乾くかしら」と、眠っていたと思っていた麻実が言います。
このシャツは孤独な男の魂のメタファーです。つまり麻実は年上の男に、
あなたの魂(青いシャツ)は
ちゃんと癒されるのか(乾くか)と聞いているのです。私なしでも生きていけるのか、と聞いているわけです。
posted at 01:00:33
彼はオートバイで来ているわけだから、着替えのシャツなんか持ってないはずなんだよね。つまり、乾いたシャツを着て──癒された魂を抱えて、朝になればオートバイ乗り=単独者に戻らなければならない。
posted at 01:03:22
「大丈夫だろう」
それが彼の答えです。
posted at 01:03:42
結末は以下の通りです。
<青いツャツと、サイドボードに埋めこまれた発光するデジタル時計を見くらべながら、彼はそう答える。>
シャツは、繰り返しになるけど彼の魂を、デジタル時計は麻実なしでだらだら続いていく日常の時間の象徴です。その両方を、彼は見るわけです。
posted at 01:05:10
ぼくは──もちろん作者だけどさ、この小説をそんなふうに読みました。あ、ちょうど1時間だね。では、真夜中の小説講座を終わりにします。読んでくれて、どうもありがとう。
posted at 01:06:21
High_Hilow
男女だけではなくですね。
うん、それはそうだね。男女を問わず誰かが誰かを愛するってことはさ、切ないよね。@High_Hilow
posted at 01:07:34
sola723
ためになる楽しい講座をありがとうございました!
High_Hilow
切ないですね。先程もすれ違いがありました。それでも止められないんですね、愛する事を。
あー、正直疲れたぁ。批評家ってのは、小説家以上にたいへんだなと思ったよ(笑)。
posted at 01:09:10
Craharu
あなたの魂(青いシャツ)はちゃんと癒される(乾くか)と聞いているのです・・・和歌の世界のようですね。
そうそう! 日本人の情緒的な世界は、今でも和歌に支えられてるんだとぼくは思うんだよね。SCraharu君、男にとってシャツって大事なんだよ。
posted at 01:10:26
hiyoko_gang
切ないからいいのですよね。おつかれさまでした。
SCraharu
シャツは彼の魂の象徴かあ・・・山川さんにとってもきっとそうなんですよね。洗濯屋としても気になります(笑)。
bpm120run
シャツの色が青=ブルーだというのも、孤独と憂鬱を連想させます
人は誰しもが老いる。麻実には彼女の人生設計ってものがあるからね。それを受容することにした──ということではないでしょうか。アイコン、また変えたんだね。とてもいいです。@bpm120run
posted at 01:12:01
bpm120run
お疲れさまでした。リアルタイムで講義を受けているようで面白かったです。
赤いシャツだとロックンロールになっちゃうからさ(笑)。ここは青いシャツがいいと思います。@bpm120run
posted at 01:13:02
bpm120run
この前のステージ衣装ですね(笑)
sibataker
お疲れ様でした。「オートバイ乗り=単独者」この一行が特に心に残りました。ライダーは単車に跨った瞬間から、一人で走らなければならないです。ひとつの真理だと思います。
17cherie
講座、いろんなことが勉強になりました。またぜひお願いします。ありがとうございました。
17cherieさんも読んでくれてたんだね。札幌はもう涼しくなった? otaesanjjf さん、あんまり長くなると他の人の迷惑になると思ってさ。sibatakerさん、遅い時間にありがとう。SCraharu君、男にとってシャツって大事なんだよ。
posted at 01:46:15
bpm120run
思い出した!ストーンズの「Under my thumb」は恋愛の力関係が変わってゆく事を歌ってましたね。
otaesanjjf
あらっ。今回はもう終わってしまったんですか? 延長があるかなあと思っていたのですが、残念!
colorful_voice
お疲れ様でした。少し学生に戻った気分…。よそ見の多い学生ですが(苦笑)
ayucafe
この前仕事でおそくなって、ホテルに泊まって、この小説のことを思い出しながら、下着や靴下を洗濯しました。孤独というのはひとつの充足ですかね。小説って、孤独にフォームを与えてくれますね。素敵なフォームと、解説に感謝。
sola723 さんは、今いい経験を重ねてますよね。恋愛じゃないかもしれないが。ayucafe さん、小説って、「孤独にフォームを与えてくれる」ってのはそうかもしれないです。三島由紀夫は、
小説があるおかげで多くの人は「告白」しないですむと言ってます。
posted at 01:46:47
madokajee
私は昔からそんなセンシティヴな「ろくでなし」の男が大好きですよ。いまだにろくでなしに引っかかりますもん、あはは。
colorful_voiceさん、よそ見の多い学生歓迎だよ。madokajee、だから君達がよく言う「ろくでなし」ってのは、案外と傷ついてるものなんだよ。Jeeper1970 さん、大切な誰かほど傷つけちゃうんだよねぇ。
posted at 01:47:08
ikokochan、いつもありがとう。yosh_guan 、shirohiko、またツイッターで飲み会やろう。kei1970さん、小説は読み込めば読み込むほど応えてくれるよ。ロックと同じです。他の皆さんもありがとう! じゃあ、今夜は店じまい。
posted at 01:47:58
17cherie
札幌も今年は残暑厳しい九月です。全国的に早く涼しくなると良いですね。お疲れ様でした。おやすみなさい。
@17cherie おやすみ~
posted at 02:10:12
sola723
今さらの告白ですけれども、高校時代から読み始めた健さんの作品に、僕の恋愛観はめちゃめちゃ影響されましたよ~。いい思い出です!
責任はとれません(笑。でも、いい思い出なら良かったです。solaさんは、女の人に人気があるでしょうね。素晴らしい女性ほど、子供と同じ本質眼を持っているものですから。@sola723
tutico_dx
お疲れ様でした。リアルタイムで読めなくてすいません。教科書に赤線引きながら授業聞いている様でした。なるほど…そうだよね…ってブツブツ言いながら。それをふまえてブログ編で読み返します。ありがとうございました。
以上、ちょうど1時間のツイートの記録でした。
読んでくれて、どうもありがとう。(山川健一)