老人の生首 | 山田小説 (オリジナル超短編小説) 公開の場

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 人生屋の商品棚を物色していて苦悶の表情を浮かべた老人の生首が目に止まった。私はその凄まじい形相を見て好奇心が疼き、老人の身に起きた出来事を確かめずにはいられないような気持ちになった。

 私はその生首の履歴書を読み、老人が味わった不幸の概要を確認した。それから、その人生を体験した他の利用者達の感想文にも目を通した。それらの資料から老人の苦しみが病気によるものではないらしいと判明したので私はとりあえず安堵した。私は潔癖性なので病が少ない人生を送りたいと望む傾向があるのだった。

 しかし、それでも私はまだ躊躇していた。それというのも、老人には賭博に熱中する気質があり、その性格が災いして人生が破滅していくらしいのだが、私は似たような人生を過去に何度か体験していて食傷気味になっていたのだった。せめて老人に風変わりな性癖でも備わっていれば面白味が増すのかもしれないが、資料を読んだ限りでは平凡な破綻者でしかない様子なので落胆した。

 自分に合う生首を選ばなければ生涯に渡って違和感に苛まれる羽目になるので慎重に判断する必要があった。検討の結果、私はその老人の生首を購入しなかった。そして、他にもっと面白そうな生首がないだろうかと期待しながら人生屋の商品棚を物色し続けた。


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