店員に似た生首 | 山田小説 (オリジナル超短編小説) 公開の場

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 仕事が長期休暇期間に入ったので私は久々に繁華街に行ってみた。人生屋の前を通り掛かったのだが、しばらく足が遠退いていた間に店舗が建て替えられていた。入店してみると売り場の面積や商品数が明らかに増大していた。

 久し振りに人生を体験してみたくなって店内を歩いたのだが、棚に陳列されている生首の数が多いので私はなかなか一つに絞り込めなかった。しばらく迷っていたが、店員は一向に姿を現さなかった。以前はよく馴れ馴れしい態度で話し掛けてきて言葉巧みに商品を紹介してきたものだったが、店舗の改装と同時に売り方が変わったのかもしれなかった。

 かつては店員の強引な接客態度を煩わしいと感じて嫌悪していたのだが、一人で生首を品定めしている間に私は段々と心細くなってきた。生首はどれも悲痛な表情を浮かべているので対峙していると自然と気分が滅入ってくるのだった。それで、私は店員に似た生首を探してみようと思い立った。店員の笑顔が懐かしいと感じられていた。


「人生屋」関連

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