板橋区大山でやきとん、もつ焼きの有名店としてまだレポしていなかった最後の巨塔「鏑屋」に遂に訪れた。今回は執事も迎え、勇んで…と言いたいところだが、俺は先に「ひなた 」で生ハートランド、ホッピー3杯、金宮お湯割りを飲み、やきとんやハマグリ、鳥から揚げとかガッツリ食った後だから、全然箸が進まない不本意な状態。一方で、時間的なせいか人気店「鏑屋」の割にスムーズに入店できた。土曜なんか開店前に行列作っていたからね。初めて執事とここに訪れた時には、俺達も行列に加わったなあ(しみじみ)。

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先に入店し、ほどなくして執事も到着。飲み物は二人ともホッピー白。380円キープは偉い。

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ツマミチョイスは全て執事任せで、スタミナ焼きに煮込みをオーダー。スタミナとかの串物は3本縛りというのがきつい。だから一人では入りにくい。

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まず煮込みが出てきたが、直前に訪れていた同じ加賀屋 系「たかちゃん 」よりもつゆだく。執事いわく「しょっぱいな」と盛んに塩味の濃さを訴える。ただし、悪口ではなく酒のツマミに合うしょっぱさだという評価だが。

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出てきた3本のスタミナ焼き。ニンニクを加えた甘辛いタレをたっぷりつけ込んであるような独特の味。焼肉でいうところのカルビ的な味付けだ。しかし、これは「たかちゃん 」よりも深みが無い。同じ味付けのようで、微妙に違う。何だか肉のジューシーさとか歯応えとか物足りない。鮮度の差とかがあるのかもしれない。「鏑川 」もそうだったし、「加賀屋 」ではどこもそうなのだが、大量在庫を冷蔵庫から出して捌いている感が食感から漂う。ただ、今回は臭みはほとんど無かった。多分、タイミングの問題と、濃いタレが良い感じで臭いを覆い尽くしてしまったんだろう。この店は人気店だから回転も早いはずだし。その一方で、「喜多八 」はタレともども臭みがきつかったのがどうにも解せん。「喜多八 」は「加賀屋 」と縁が深いらしいので、レシピとかいろいろ共通点を見出せそうだが。

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執事が「加賀屋 ですね」とつぶやいた後、「この味、何なんですかねえ…」と問うてくるのに対し「味の素」と返答する。執事も納得。間違いなくグルタミン酸ナトリウムの味だ。これも決して悪口ではない。ラーメンでもそうだが、無化調を売りにするのはいいが、明らかに一味足りない料理を出す店が蔓延っている。安易な逃げ道と言うなかれ。俺は化学調味料を活かすのは全く問題がないと思う。「化学調味料を入れると皆同じ味になる」とかいう輩もいるが、確かに基本は同じだが、そこから具材や深み、いろいろな要素を加えることによって個性を発揮するものだ。日本人が白人を見ると区別がつかないとか、アラブ系の人の顔を見ても皆同じ顔に見えるとかいうけど、付き合ったりしている内にだんだん一人一人の個性が判断できてきて、顔も違いがわかってくるのと同じ。やたらと化学調味料ダメ!と全否定するのは、極めてナンセンスだと思う。それを言うなら、日本料理は全て醤油の味だ、とか言っている外国人と同レベルの判断力だ。最近では売る側も気を遣って「化学調味料というと印象が悪いから、旨味調味料と呼んでください」と言い方を変えたりするほど印象が悪い。しかし、日本だけでなく中華料理だって味覇(今は創味シャンタン)にかなり依存している。最初に書いた通り、煮込みだって「加賀屋 」系の美味しい煮込みだが、やはり化調の味は否めない。しかし、スタミナと煮込みが同じ味か? それに、この煮込み、素人が同じように作ろうとしてもなかなか再現できない立派な名物メニューだ。その上で豆腐がド~ンと一丁クラスの大きさで入っているのとか、モツは臭みが無くて柔らかいとか、完成度が高い。俺は「加賀屋 」系に求めるのは、その個性を踏まえて逸脱していなければそれでいい。化調使った使わない等、論点が違う。

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俺は酒はホッピーワンセットでギブアップ。執事はレモンサワーに突入。瓶入りのを中と共に提供するタイプ。つまり、これもホッピーのように中だけ追加ができる、まさに飲んだくれ仕様。中を注文すると、氷と焼酎入りの小さいグラスを持った店員さんが来て、空いたグラスを受け取り、クイッと手早く移し替える。この所作がなかなかに小気味良い。オバサンの店員がやたらと返事が快活で、これにも執事が感心していた。

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そう、化学調味料だ同じ味だといっても、店の雰囲気も味にも大きく影響する。まして、その店のその時の味はいつも同じわけがない! 後は確率的に「ここはいつ来てもいいなあ」と自分が思えるような店を探すべき。

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例えば店内の装飾センス。何なんだこのぶら下がっているいくつもの玉は? 何をイメージしているんだ? これが本当のハイボールってか? 昭和、しかもバブルから20年くらい前で止まっている独特のセンス。でも、これがいとおしくてたまらない人もいるはず(そうか?)。仮に「別に店内の景観なんか気にしてないよ」という人でも、生理的に受け付けない店構えだったから行くのやめた、って経験はあるだろう。

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俺は今回は腹が満ちていたので頼まなかったが、コーンかき揚げや日替わりの刺身系も悪くない。「もつ九 」もそうだったが、居酒屋定番メニューをきちんと揃えているのも、オジサンが安心して通ってしまう理由だ。人気がまだまだ揺るぎそうもない。ただ、もつ焼きとか魚系は決して安くない価格設定だよなあ。

Text by 大王

鏑屋居酒屋 / 大山駅板橋区役所前駅
夜総合点★★★☆☆ 3.9