コーヒーとリン酸塩で実験-考察 | ギモンの科学(仮題)

コーヒーとリン酸塩で実験-考察

ちょっと遅くなりましたが、考察してみたいと思います。
いきさつと実験の概要はこちら 、結果はこちら

まず、リン酸塩 とコーヒー濃度の関係から。

ブランクの6.70mg/gという数字と比べると、
リン酸塩 を使用した実験区では、P1-20の区を除き、
コーヒー濃度が7.32~7.63mg/gに、
割合にして、9~14%上がっています。
つまり、リン酸塩 を加えることで、
コーヒーの濃度を上げられるのは確かなようです。
しかし、その効果はせいぜい最大14%程度で、
MyNews で書かれているような、
>3倍も抽出が可能な添加物
ではないことがわかります。
リン酸にして10mgの区と20mgの区を比較すると、
すべての実験区で、なぜかコーヒー濃度が下がってしまいました。
つまり、リン酸塩 をこの実験より多く使用したとしても、
コーヒーの抽出量を上げられる可能性は少ないと考えられます。
(ただ、実験回数が少ないので、追試は必要ですが…)

一方、この実験で、コーヒー濃度を一番上げたのは、
NaHCO3つまり、重曹を使用した区で、
7.47~8.91mg/g、11~32%コーヒー濃度が上がりました。

炭酸塩の効果のほうがリン酸塩 より高いんですから、
コーヒーの抽出に、わざわざ効果が低く、評判が悪い
リン酸塩 を使用する必要性はないかと思います。

次に、リン酸塩 とコーヒーの色との関係です。

コーヒーの色は、結果では吸光度として表しています。
コーヒーの吸光度とコーヒーの濃度は、
他の条件が変化しなければ、比例関係になるはずです。
ということで、比較をしてみると…
コーヒーの濃度と吸光度
↑クリックで拡大します。

直線上に並ぶはずなのに、
一部でコーヒー濃度が高くないのに吸光度が高い、
つまり、薄いのに色が濃く見えるものがあり、
直線上に並びません。

で、一方、多くの食品の色は、その食品のpHによって
変化することが知られています。
そこで、コーヒーの濃度と吸光度が比例すると仮定して、
コーヒーのpHと単位濃度当たりの吸光度の関係を見てみます。
コーヒーのpHと吸光度/濃度
↑クリックで拡大します。

ほぼ直線上に並んでいます。
つまり、コーヒーの色は、pHが高くなるほど、
濃くなるということになります。
pHを5.02から5.88まで変化させると、
吸光度が約30%上がります。
pHをさらに上げれば、もっと色が濃くなるかもしれません。
重要なのは、NaHCO3(重曹)の区も同じ直線上にあることで、
このpHによる効果を出すのに、別にリン酸塩 を使う必要はなく、
炭酸塩でも同様の効果が得られるということです。
おそらく炭酸ナトリウム(Na2CO3)でも効果があるでしょう。

で、まとめてみると、
リン酸塩 の使用でコーヒー濃度は上がるが、
 効果はせいぜい最大14%止まり。
リン酸塩 のpH調整効果で、
 コーヒーの色(見た目の濃さ)を濃くすることができ、
 その効果は、pHを5.02から5.88まで変化させたときに約30%。
リン酸塩 だけで
 3倍も抽出するのは多分不可能。
・重曹でも同等、またはそれ以上の効果がある。
ということになります。

ということで、この記事を読んだ方には、
リン酸塩 はコーヒーを3倍も抽出できる増量剤といった、
変なデマには惑わされないよう、お願いしたいと思います。
(「1.1倍抽出できる」なら本当なんでしょうが(笑))