常総市の大水害 - 国交省の不作為② | 追憶の骨 (bones)

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音楽や映像だけでは残せない、あの時の僕たち。


(堤防決壊直後の様子 報道ステーション 9月10日)


堤防決壊直後の街の様子を、グランドレベルで伝えた報道ステーションの映像。この報道姿勢には頭が下がる。実によくやっている。

今回は新石下地区で起きた河川堤防決壊についての話だ。


■ 水位情報

鬼怒川は1級河川、管理責任は国交省の河川事務所にある。

河川の管理には莫大な税金が投入され、水の利用や治水など様々な事業が行われている。当然、河川に関する情報量も最も多い。


これは鬼怒川についての情報サービス、国交省がやっている。

「雨量と水位のリアルタイム情報」

僕たちは台風が来ると、テレビで報道される気象庁の情報に注意する。それは当然の事だ。しかし、河川の水位情報は気象庁ではなく国交省にある。河川が氾濫するか、しないか、それは国交省じゃないとわからない。

これらの情報は防災のために役立てられる…、はずだ。


■ 工事予定 


この図は、平成26年に国交省が出した「鬼怒川 直轄河川改修事業」という資料から抜粋したものだ。興味がある方にはぜひ一度全編を見てほしいと思う。

かさあげ・拡築(中妻(上)・三坂・新石下・本石毛地区)

今回堤防が決壊した地区は改修工事が予定されていた。この地域の危険性は認識されていたという事だ。ただし、赤い部分が「今後7年で実施」、青い部分は「20~30年で実施」と分けられているので、緊急性は低いという認識だったのかもしれない。


■ 堤防決壊シュミレーション

(報道ステーション 9月10日)

これは報道ステーションが報じた「鬼怒川堤防決壊シュミレーション」だ。国交省のHPにある(今はないかも?)ものだ。

堤防が決壊した場所はほぼ一致しているという。

(ANNnewsCH 9月12日)

そしてこれが実際の常総市の様子。分かりやすいように川の下流から上流へ矢印を入れてみた。

シュミレーション通りの浸水が起きている。

この大水害は決して「ソーテーガイ」ではないのだ。


■ 活かされない情報

国交省は、鬼怒川のリアルタイム雨量・水位情報を有し、新石下地区の堤防が危険だと知っていて、さらに堤防決壊シュミレーションまで事前にデータとして算出していた。

つまり堤防決壊の予測が可能だったのだ。

なぜそれを活かさなかったのだろう…??

堤防の改修工事については、緊急度もあり、位置的な順位(下流から)もある。今回の場所が工事未着手だったことは仕方がない。なので、堤防決壊自体を防ぐことはできなかった。

しかし、こうした情報を活かしていれば、人的被害を最小限に抑えられたのではないか…?行方不明者は今も10数名にのぼる。

防災のための情報が、何の役にも立っていない。

福島原発事故の時のSPEEDIを思い出さないか?


(報道ステーション 9月10日)


■ これは不作為だ


日常、大雨による増水で道路が冠水することは、僕たちでも予測ができる。河川の付近に住む人たちにとって、河川が氾濫(オーバーフロー)する事は、ある程度、心構えがあるかもしれない。

しかし、堤防決壊までは誰にも予想できないだろう。そこまで心構えがない、それが普通ではないか。

国交省には詳細なデータがあって、堤防決壊シュミレーションまで出来ていた。つまり堤防決壊予測がある程度可能なのだ

NHKを通じて避難勧告や避難指示を出していたら、住民の対応はまるで違っていただろう。地震と違って時間は十分にある。人的被害は最小限に抑えられる。そのための情報収集ではないのか。

これは明らかな不作為だ。

情報収集のために使われた税金が水の泡だ。


<③につづく>