サッカーの指導理論も進化する | 坪井健太郎のブログ from スペインバルセロナ

坪井健太郎のブログ from スペインバルセロナ

2008年からバルセロナでサッカー指導者。プレサッカーチーム代表: サッカー指導者の育成アカデミーを運営。
オンラインコミュニティ「サッカーの新しい研究所」運営

こんにちは。
今日はSayFoot指導実践会の日でした。今週から2週間ペースで実践会を開催することにしました。というのも、嬉しいことに人数が増えてきたこともあってみんなに指導実践を行う機会を得てもらうためと、みんな体がウズウズしているようなので頻度を増やしたわけです

今日は、今シーズンにコーチングスクールに通っているコーチに担当してもらい、コーチングスクールで実際に学んでいる内容をみんなと共有することができました。今日実践してもらったことは、Metodologiaという科目の分野のSSPというトレーニング方法。ここまででもうすでに???になってしまう方もいらっしゃるかと思うので詳しく説明していきますね。

Metodologiaという科目は、『サッカーを「どう(How)」選手に教えるか』を学ぶ科目です。
「何を(What)」にあたるものが戦術や技術とすると、それらの内容をどのようにして選手に伝えていくのが良いかを勉強する科目なのです。そして、SSPとは何かというとスペイン語でSITUACIÓN SIMULADORA PREFERENCIAの略なのです。

SITUACION=シチュエーション・状況
試合で頻繁に起こる状況を分析し、その『シチュエーション』をトレーニングします。

SIMULADORA=シュミレーション
シュミレーションをするということは同じその状況と同じ設定にします。時間、人数、ポジション、スペース配分はその状況と似ている必要があります。

PREFERENCIAL=優先、優遇的
チームが何に向かってプレーすることをトレーニングするのか、ということです。要するに監督が選手にトレーニングで習得して欲しいコンセプトですね。

直訳の3つの意味をサッカー的に繋げると、このSSPというトレーニング方法は試合で頻繁に発生する局面を取りだしてそれをシュミレーション的にプレーさせて、そこにチーム・個人のプレーコンセプトを注入していくトレーニング方法ということです。
これは、チームコンセプトの浸透に近いものなので対象年齢は14歳以上というのがコーチングスクールで僕も習ったのを覚えています。
SITUACIONとSIMULADORAに関してはとても簡単なものなのでここでは割愛させて頂きますが、今日の指導実践でテーマになったのはPREFERENCIALの部分。チームのコンセプト=週末にチームに望むプレーの方法とすると、それをプレー基準にトレーニングでも選手はプレーをしてもらうことになります。
例えば、サイドからの攻撃をコンセプトに置くのであればボランチの選手は優先的にボールをサイドに配球する必要があります。このようにして、いくつかの項目を優先的は基準としてプレーすることを選手が覚えるために「どのように」トレーニングするのか?というのがMetodologiaの科目で学ぶ重要なポイントなのです。

ここで3つの重要なファクターが出現します。
1,Cognitivo(認識・判断)
2,Condicional(スペースや時間やルールの調節)
3,Coordinativo(コーディネーション)

の3つです。これらはコンセプトを浸透させる為のアプローチの方法となる要素たちです。

Cognitivo(認識・判断)
プレーの向上を求める選手に対して、状況認識と判断の視点からアプローチします。例として、サイド攻撃を実現したい時のボランチのプレーはサイドにボールを配球することを目的にした場合、それを「いつ?」「どの様な状況で?」「なぜ?」「どの様な方法で?」という質問をしていくことで選手が効果的なプレーはなんなのかが理解できるように導いていきます。

Condicional(スペースや時間やルールの調節)
トレーニングに条件を付けることでチームや選手が自動的にコンセプトとなるプレーを実現するように導くアプローチ方法です。例えば、2タッチでプレーすることを設定すればゲームのリズムは向上しますし、攻撃に時間の制限を付ければプレースピードを上げることも可能となります。この様にして、コンセプトに沿ったプレーに近づくように設定を調節します。

Coordinativo(コーディネーション)
特定の選手に対して、特定の条件下でプレーのノルマを付けるアプローチの方法です。これで監督が望むプレーの反復回数が増え選手が動きを習得することが狙いです。例えば、2トップの選手がセンタリングに合わせに動く際に必ず交差して動くという条件をつけることで、ゴール前でのアクセントの付いたモビリティを何度も反復することになります。この反復が動きの習得を生むとも言えます。


大事なのはこの3つの視点を持ってアプローチをすることです。1つが正しくて、他は今日は使わないというのは無いと思います。2つが共存することもありますし、3つの要素が入ることもあっていいはずですしね。

さて、いかがでしょうか?
僕もこの記事を書くにあたって昔のコーチングスクールの資料を引き出して復習をさせてもらっています。今日は、実際にトレーニングをしながら授業の内容を思い出したり、このように昔のノートを引っ張りだして頭のメンテナンスをする良い機会を頂きました。
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実践後のディスカッションで、少し前にコーチングスクールに通っていた人の話を聞く機会があり以前は似たような内容はあったけども、このような伝え方というのは無かったということでした。ヨーロッパでも、ここ数年で指導理論は進化しているのですね。勉強はどこまでしても終わることはありませんね。