血と砂 (1965年 岡本喜八版) | キネマの天地 ~映画雑食主義~

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(ほぼ)一日一本のペースで映画の感想を書いてます。

血と砂 [DVD]/三船敏郎,佐藤允,団令子
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内容:三船敏郎と岡本喜八監督が『侍』に続けてコンビを組んだ豪快無双の戦争活劇大作。昭和20年の北支戦線。三船敏郎扮する小杉曹長は戦闘経験のない少年軍楽隊員たちと共に“焼き場”奪回を命じられるが…。伊藤桂一原作の「悲しき戦記」がモチーフ。 (Amazonより)


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はい!今週の岡本喜八 監督枠は、1965年製作「血と砂」です!





昭和20年夏の北支戦線で、歴戦の勇者・小杉曹長(三船敏郎)は佐久間大尉(仲代達矢)の命により、八路軍の猛攻によって全滅したヤキバ砦の奪還に向かった。従えるは、何と軍楽隊の少年兵たち。今まで楽器しか持ったことのない彼らを叱咤激励しながら、小杉は砦の奪取に挑むが…(Amazonより)









  ・°・(ノД`)・°・




はい、大傑作です!! この作品は喜八作品の中でも決して知名度が

高い方では無いと思いますが、それだけにビックリしました。

凄ぇじゃん、コレ!!(ノ゚ο゚)ノウオオー!!



昭和二十年夏、北支戦線。佐久間大尉(仲代達矢)率いる大隊に、銃を撃った事も無い

少年軍楽隊と、彼らの前線配属に反対し転属を命じられた小杉曹長(三船敏郎)

やってくる。折しも前線では八路軍との戦闘の拠点であるヤキバ砦を奪われ、

守備隊の中でただ一人生き残った小原見習士官が敵前逃亡罪で銃殺されたところだった。

そしてその経緯に疑問を抱き事のあらましを調べようとする小杉に、軍楽隊を率いて

ヤキバ砦を奪還するよう命令が下る。こうして小杉は戦闘経験も無い十余名の少年兵と、

小原士官の銃殺にあたった炊事兵の犬山一等兵(佐藤允)、墓掘り係の持田一等兵

(伊藤雄之助)、そして戦闘を拒否し営倉に入れられていた志賀一等兵(天本英世)

率い、八路軍の待つヤキバ砦へと向かう…というお話。



あらすじをご覧いただけばお分かりいただけるかと思いますが、この作品は

「独立愚連隊」「独立愚連隊西へ」 、そして「どぶ鼠作戦」 と続く“愚連隊シリーズ”

連なる作品ですね。はみ出し者の集団が時に軍規に背きながらも自らの信念の為に

戦っていくという構図はシリーズ全作品に共通する所です。



ただし今回の“愚連隊”はおそらく過去最弱でしょう、なにせまともに戦力になるのは

三船敏郎さん演じる指揮官小杉軍曹と佐藤允さん演じる犬山一等兵ぐらいで、

あとは銃を撃ったことすら無い少年軍楽隊と伊藤雄之助さん演じるちょっとオツムの弱い

持田、そして戦争の無意味さを説き戦闘を拒否し続けている志賀だけですから。

 そんな「役立たず」たちを率いてヤキバ砦を奪還せんとする小杉の奮闘と、度ね重なる

戦闘の中で次第に成長していく少年兵たちの姿を描いていく前半は、これまでの

“愚連隊”シリーズと同様にアクションとユーモアがたっぷりでなんともワクワクドキドキ

ニコニコさせられますよ♪ とりわけコミカルな要素を一身に担う伊藤雄之助さんの

怪演ぶりは必見です(笑)



ただこれまでと違うのは後半の展開です。・・・もうね、あまりの壮絶さに言葉も

ありませんよ。。。( p_q)

ネタバレになっちゃうから詳しく言えないのが何とも残念ですが、戦争への憎しみや哀しみ、

不毛さという反戦のメッセージを、しかし過度に感傷的にならないようあくまでシニカルな

ユーモアを織り交ぜつつドライに描いていく岡本監督の演出がとにかく素晴らしい!!

特に圧巻だったのが少年兵たちの描き方で、原作では彼らは普通の新兵だったそうですが、

映画化に当たって岡本監督が「軍楽隊」という設定に変更したんですね。

これがもう素晴らしいアイディアでしたねー! オープニングから響き渡る戦場にはおおよそ

不似合いなディキシー・ジャズの明るく力強い旋律、これが戦争という悲惨で無情な

環境の中でも明るさと希望を失わない少年兵たちを象徴しているかのようで、楽しい半面

余計に哀しさが募るんですよね。。。(ノ_-。)

そしてクライマックスに響き渡る誰もが知る名曲“聖者の行進”!! こんなに哀しい

“聖者の行進”は初めてですよ・・・°・(ノД`)・°・

また、小杉を一途に愛し続ける慰安婦お春(団令子)を通して描かれる「女の悲哀」や、

捕虜にした八路軍少年兵との交流などの要素も痛烈でしたねぇ・・・。





総評。

「独立愚連隊」から始まるシリーズの、一つの到達点では無いでしょうか。

エンターテインメント性とメッセージ性が極めて高い次元で融合した素晴らしい作品です!!

御泪頂戴があざとく匂う凡百の戦争映画なんかよりもはるかに胸をうちますよ。

レンタルで普通にあったから借りて観たんだけれど、これは絶対買います、ウン。

迫撃砲降りしきる戦闘シーンなど、アクションシーンの迫力も凄いですし、

ぜひ多くの方に観ていただきたい作品。

ってワケで強く強くオススメです!!!!