2015年9月初旬に敢行したアメリカ三州遠征の釣り開始となった二日目、イリノイ州のカスカスキアリバーのとあるダムの下で夜明けとともに竿を出した。

狙いはカープサッカーの仲間であるクイルバックだった。オンタリオ州の頃からなので、かれこれ十年以上にわたってこれまで何度も挑んで来た魚種だ。

特に今年の5月にインディアナ州北部の川で探した際には、岸のすぐ前にクイルバックが固まっているスポットを見つけることができたのだが、異常にハリやハリスに敏感で、極限まで小さく細くして、しかも竿を枝の上でバランスを取ることで魚に抵抗を感じさせないようにして、なんとかエビの剥き身に喰らい付かせることまでは二日かけて成功したものの、延べ竿だったのでハリスを切られて初クイルバックを手にすることは叶わなかった。

そこで今度チャレンジする時には小磯竿とスピニングリールを使ってハリス切れを防ごうと考えていたが、その後ここカスカスキアリバーのダム下に魚影が濃いという耳寄りな情報を得たので、急遽遠征を企てての釣行となった。

まずは情報に従って、底がはっきり見える浅場で缶入りゆでコーンの小さい粒をブッコンだ。タックルおよび仕掛は、旅行用の小磯竿である日新の精魂磯凪小継530、シマノエルフ2500、6ポンドモノライン、樽型中通しオモリ最小番、小型スイベル、ハリス0.8号、ヘラ改良スレ3号で、ここでは4ポンドラインをハリに直結でも釣られているのでハリスは0.4号にはしなかった。

浅場にコーンを置いて外道のスモールマウスバッファローやコイを見分けて釣らない戦略だったが、そもそも魚が通らないので、これも情報通り、マキエすることにした。使ったのは同じコーンと、ウォールマート で買ったウサギ用のペレット飼料だった。

すると魚が少し深い沖側に集まり出し、選別はできなかったが非常に敏感な磯凪小継の穂先も手伝ってほぼ入れ食いになり、スモールマウスバッファロー 2尾にコイ がスレどりも含めて5尾も釣れたが、肝心のカープサッカーはなかなか釣れなかった。

そこでこの日はこれで引き揚げて、先にジョージア州でショールバス を釣ろうと考え、最後にコーンではなくナイトクローラー(ワームサイズのドバミミズ)の頭でやってみることにした。

するとツンといったアタリがすぐにあり、アワセたが空振りでエサがなくなっていた。すぐにエサを付け替え、同じスポットへ。またすぐにアタリがあり、軽くアワセると今度はしっかりとした手ごたえがあった。

少しフワッと浮き上がった後、魚は走り出した。だが力強い走りではなく、コイではないなと思った。走りながらもヒラ打ちは感じられ、体高のある魚を意味していた。

そして浮いてきた。金色の体色だった。ということはバッファローではない。やった、カープサッカー類だ!

ランディングネットを取り、寄せに入る。水面から顔を出している魚は、口の端から体表のヌメリでこてこてになったハリスを出していたが、ハリは見えなかったので、バレる心配は低いなと思った。

十分弱っていたが竿がやわらかすぎるせいか、なぜかネットまであと少しのところで止まっていた。少しリールを巻き、竿を後方に傾けると、寄ってきた。あと少し、あと少し。

そしてネットインの瞬間、「やったやったー!」と思わず叫んでいた。上流側で釣っていたファミリーは、大鯉でも全く喜ばなかったのに、はるかに小さな魚を釣ってなぜにあんなにうれしいのかといった顔をしていた。

ネットの中でまずは下唇を確認。乳頭状の突起はない。ということは、クイルバックだった。やった、とうとう釣ったー!破顔一笑、ホントにうれしかった。

 


初めて釣ったクイルバック、38センチ。感無量。
 
初クイルバックの口。リバーカープサッカー とは違って下唇の中央にニップルとよばれる乳頭状の突起がない。
 
その名の通り、背鰭の前端が高く伸びていて、とてもクールな外観だ。特に先端が破損していない若い個体の水中で泳ぐ姿は浮世離れした印象を受ける。
 
初クイルバックの俯瞰。春の産卵期にはオスは黒っぽくなる。
 
初クイルバックの腹側
 
白く縁取られた淡い色の胸ビレと腹ビレは濁った水の中でも目立ち、居場所を教えてくれる。
 
初クイルバック別影。高い背ビレを持ったコイフナといった感じだ。多くの個体でウロコはところどころ不規則になっている。
 
黒目の部分が縦に伸びているように見えるカープサッカー類特有の目をしている
 
初クイルバックの近影
 
クイルバックのハビタット
 

コイ目サッカー科カルピオデス属。クイルバックとは、クイル(羽ペン)のような背中という意味で、高く伸びた背ビレの第一条から来ている。学名 Carpiodes cyprinus はコイ(Cyprinus carpio)のようなものという意味。最大全長71センチ。あらゆる濁度のクリークおよび河川のプール、バックウォーター、および本流、あるいは湖の、砂底~シルト底の場所に棲む。適水温22~26度。50年前後まで生きる。アメリカ東半分の大部分の州とカナダのケベック州からアルバータ州にかけて分布する。無脊椎動物およびデトリタス食性。超敏感な口や感覚器官を持つため同じサッカー科の他の魚種に比べて釣られにくい。見釣りで泳ぐ方向に先回りしてエサを置くか、鋭敏な穂先やウキでアタリを取る必要がある。

 

寄せ餌に使ったウサギ用ペレット