私がカナダに初めて渡ったのは1999 年の秋だった。場所はカナダ最南端に近いウインザー市という所で、そこにある大学で働き出したのだが、最初の一年は仕事最優先ということと、英語を含めて生活環境に慣れるのに精一杯で釣りは全くしなかった。

二年目になって職場が変わったことに伴い、同じオンタリオ州内のキッチナー市へ移った。暮らしにも余裕が出て来たので、いよいよカナダの釣りを始めることにした。

私は淡水の小物釣りが特に好きで、たなご釣りのような日本独自の文化とも言えるような釣りを海外でしてみることに憧れていた。しかし残念ながら、アメリカのハドソン川下流域にヨーロッパから移植されたたなごがいるらしいことを除けば、北米にはたなご類はいないことがわかった。ならばたなごの代用になるようなものをと思い、自分で探すことにした。

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後にも先にも買った図鑑はこれだけだったが、大変お世話になっている。北米全てをカバーし、特に魚種別の分布図が便利だ。


何はともあれカナダでの釣りにはライセンスが必要なのだが、ライセンスと言っても試験があるわけではなく、オンタリオ州の場合はアウトドアーズカードというものを釣具店等で買うだけだった (次の年からはシールを買ってこれに貼っていくだけ)。

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2006 年末まで有効だったアウトドアーズカード。モデルはウォールアイ


ライセンスには2種類あって、スポーツフィッシングとコンサーベーションフィッシング。後者の場合キープできる魚の数が少ないが、その分ライセンス料が 10 ドルほど安く、当時は年 20 ドル弱だったと思う。私は釣った魚はほとんど食べないので、コンサーベーションの方を購入することにした。購入時に身長の他に目の色を聞かれたことが、さすが多民族国家だなと思わせた。

カナダ渡航時には全く持って行かなかったので、釣具は現地調達で揃えたが、 振り出し竿だけはどこにも売っていなかった。そこで日本からシマノのホリデー白糸という万能竿的なへら竿を取り寄せ、仕掛けは現地の釣具店で曲がりなりにも日本的な仕掛けになるようなものを集めて作った。

道糸やハリスはいずれも号数ではなくポンド表示だったので、適当に目見当で選んだ。ハリはハリス付きの袖バリなど当然なかったので、フライフックの12 番などを使った。ヨリモドシ類は結構小さいのもあった。オモリは板オモリはなかったがガン玉の小さいのはあった。ウキはコマ型の一番小さいものを選んだが、なぜかウキ足の末端が環状になっていて、そのすぐ上にバネが巻き付いていた。後で判明したが、これはウキゴムの代わりにラインを固定するためのものだった。だが私はこのバネを取り去り、仕事場で見つけたシリコンチューブをウキゴムの代わりにして使った。エサはナイトクローラーという、ワームサイズのドバミミズしか売っていなかったので、ペットショップでミールワームを買って使うことにした。

こうして一応準備が整い、春を待った。