兎の角ふたたび | クラスタ民主主義システム研究室

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昔、兎の角 について記事にしました。


兎の角は決して実在しない幻だが、それは言葉や人の想像の中にある。


つまり、人間は幻想の中で生きている…



兎の角


NHKスペシャル「狂気の戦場 ペリリュー ~”忘れられた島”の記憶~ 」を見ました。


私たちは、他の人々の証言を聞いて、その昔に起きたことを伝聞に基づいて想起します。テレビや映像を見たり新聞や本を読んだりしても、実際に体験したり目にしたわけではありません。だから、タイムマシンでも発明されないかぎり、それが本当に起こったことなのか私たち現代人は一生確かめることはできないのです。


この番組では、日本兵が三人の米兵を木に縛り付け、切り取ったペニスを口に詰め、銃剣で50回以上突き刺していたという米兵の証言が紹介されていました。その惨劇を目にした米兵は怒髪天を衝き、洞窟の中に隠れていた日本兵を発見した時、武器が尽きていたにもかかわらず日本兵17人を復讐のために皆殺しにしたと言っていました。


日本兵が捕虜を練習台にしていたことは様々な資料に証言がありますから、この例でも生きている間にペニスを切りとった可能性もあるでしょう。日本兵が米兵を惨殺した動機も、仲間を米兵に洞窟ごと惨殺されたり焼き殺されたりした復讐だったに違いありません。実際の戦争が狂気の中で行われる実例だと思います。


また、映像記録係だった米兵は手足を縛られて斬首された日本兵を見つけていました。軍機違反か敵前逃亡の処罰として日本兵が斬首したのでしょうか…。NHKスペシャルの中では、神経に異常を来した米兵が紹介されていましたし、前線で気がふれた米兵が大声で叫び続け仲間を危険に晒したため、米兵が米兵をシャベルで殴り殺したことも証言していました。


しかし、その場で本当は何が起こっていたのか、どんな動機でやっていたのか…、もう私たちには本当のことは判りません。


ペリリュー、ガタルカナル、フィリピンなどの極限の飢餓の中ではカリバニズムが発生していたことを証言した旧日本兵もいますから、おそらくペリリューでもあった可能性があります。水もなく食料もなく弾薬もなく玉砕も許されなかった…、そんな中で生き延びる苦しみは計り知れません。


ただ言えるのは斬首は戦場では常態化するということです。いまイスラム国でも米国人を斬首したことが報道されていますが、それを実行したのは発音解析から英国人だと言われています。しかしながら、その場の真実はどうなっていたのか?…。殺人や解剖に興味を覚える英国人が欲望を満たすためにシリアへ向かったのか…。または、忠誠心を試されて、捕虜を斬首するよう上官に強いられたのか…。遠く離れた日本では何を考えても幻想にすぎません。


捕虜を殺したり、虐待を受けた上官を殺したり、仲間を見殺しにして見捨てていったり、敵前逃亡する兵士を打ち殺したり…、ソビエトやアメリカの戦争映画、プラトーンなどで盛んに描写されていますが、これらも全て幻想ですが、私たちは幻想の中に真実との相似性を見つけようとします。あるいは、真実を幻想の中に描こうとするのかも…


最近の日本における戦争映画の代表作は「永遠のゼロ」と「少年H」でしょう。


最近、玉音放送が話題になることが多いですね。そこで家内に尋ねてみました。旧日本軍の一部が玉音放送を放送させないために皇居へ攻め込んだことを知っているか?と…。もちろん、家内は皇居騒乱のことなど知りません。人間、自分に都合が悪いことを歴史に刻もうとはしないものです。


永遠のゼロを見て、日本人は特攻隊員の慙愧と美徳を胸に刻むのだと思いますが、あの映画ではゼロ戦しか出てきません。実際の戦争でさくら弾機や赤とんぼが特攻していった悲惨さは幻想の中にさえ決して描かないのです。


現代のシリアで斬首があり、ペリリュー島で斬首があったように、戦争なら何処でも斬首はあったはずですし、日本軍は斬首できる軍刀を常用していました。中国大陸でも斬首はあったはずと容易に想像することができますし、一般市民を巻き込んで殺害したことも間違いないでしょう。なにしろ、イラク戦争で笑いながらヘリコプターに搭載した機関銃で一般市民を撃つのが戦争ですから、狂気の市街戦の中でなら何が起こっても不思議はありません。仲間の日本兵を平服のレジスタンスに殺されたら、親友を殺された日本兵が復讐しても不思議はないでしょう。


最近は8月になると、毎年毎年、日中韓の間で非難の応酬が繰り返されます。


従軍慰安婦問題においてクワラスマミ報告書が一番参考にした証言は「白馬事件(スマラン事件)  」に関する証言でした。この事件は、日本軍管轄の捕虜収容所から日本軍がオランダ人女性を拉致し、慰安所で性行為を強要した事件です。その状況は次のように書かれています「女性達は毎日強姦された。給料は払われず、暴行され、その上、性病を移された者、妊娠した者がいる」。


同様の事例はフィリピンでも報告されています。その想いを「永遠のゼロ」のようにフィリピン人が映画にしました。その映画が「戦場のアンジェリータ」です。いまはレンタルできないので私は観たことはありませんが、ネット上にはあらすじ が書かれています。


世界世論は、そうした従軍慰安婦制度の問題点を明らかにした上で、いま議論しています。こういった問題がある例が全体の何%あるかはわかりませんが、決してゼロではないわけで、本来であれば、日本政府が従軍慰安婦の配置や輸送状況を克明に調べ、問題点を明らかにすべきだったと思います。


しかし、過去も今も、日本政府は、こうした拉致の惨状を明らかにしようとはしません。まるで現代の北朝鮮の態度のようです。


従軍慰安婦に関する日本兵の証言には様々なものがあります。本来であれば、日本政府が正しく歴史認識して日本人の記憶に刻むべきでしょう。もちろん、ラバウルに慰安に行き、笑い、手を振りながら帰国していく様子を記録した証言もありますが、満州の前線で、従軍慰安婦たちに塹壕を掘らせ、撤退の時には置き去りにした証言もありました。どんな実態だったのか、まずは調べてみることが大切です。


「STAP細胞はあります」と日本人は結論ありきで思考しますが、先ずは調査・研究することから始めるべきなのです。。


もちろん、戦前は遊郭が世界中に常在していましたし、1920年ごろまでは日本人も今の韓国人のように世界中に身を売りに出かけていました。現代でも日本人女性の40~50人に一人くらいは身を売って生計を立てた経験があるでしょうし、保育所を完備した風俗で救われている母子家庭もあります。


売春行為は人間とは切っても切り離せませんし、今は世界中で個々の意志を尊重し、買売春を合法化したり、オープン化して安全性を高める方向に向かいつつあります。


ですが、従軍慰安婦問題の特殊性は「軍隊が兵站の一部として慰安婦を管理し輸送した」ことにあります。南方の基地周辺に慰安所を開設し人員を調達する行為を軍属とともに行っていました。なぜなら、当時の東シナ海や太平洋を横断する輸送艦は全て日本軍が管理していたわけですから、業者が騙したり人さらいして拉致した例があれば日本軍にも責任が及ぶことは明らかでしょう。


国家として恥だから隠すか、人権を重んじて白日の下に明らかにするか、どう選択するか考えてみるべきだと思います。もちろん、北朝鮮のように人権に反した拉致行為を隠蔽し続けるという選択もありますし、それはそれで東アジアらしい選択です。


最後に、兎の角の記事の中の楞伽経 から転載します。


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愚かな者は、みだりに物に『有』『無』を分別して執着する。けれども、物には、兎に角がないように、『有』も『無』もない。仏の智慧によって見るものは、愚かな者の考える『有』『無』の境界(きょうがい)と異なるのである。

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ウサギ