銀座「あら輝」は、2010年の12月にミシュラン東京2011で初登場で三つ星を獲得して、日本で一番予約の取りづらい鮨店 寿司。「未踏 あら輝」

 東銀座駅徒歩1分 築地へ800Mの 1階店舗
 
店看板はない、近代的な自動ドアが開くと、更にもうひとつ、趣のある和風引き戸のある内玄関。
 木戸の玄関に木製の表札「あら輝」とある。
 昼一回転、夜二回転で全席が入れ替わるので、少し早めにつくと
まるで、今日最初の客のように誰もいない店内に案内される。

 50人の従業員がいる 銀座「久兵衛」とは対照的に「あら輝」は、9席のカウンターしかない。

9人が板前と対峙し、同じ鮨を、居合わせた客が同時にいただける、ちいさな店で、
 迎えてくれるは、この店の大将 荒木 水都弘(みつひろ)
 
備前ヒノキの一枚板の つけ台が奥へ真っ直ぐ一直線に伸び、奥の壁面に大きな「福助」の絵が掛かっている。 「ビートたけし」の 落款(世界のたけし の開店祝い)
 そういえば、大将 「平成教育委員会」に正解者にだけ提供される鮨の職人として、以前TV出演していた。
 
奥の席につくと、大将が向かって左(入り口側)の定位置に、
向かって右(奥の調理場側)に一番弟子の市川さんがスタンバイする。(市川さんは今年独立した)
 市川さんの後ろは、障子風のインテリアで、奥からソフトな光が透けてくる。 
 
 鮨店によくあるような、客席前のガラスのネタケースなどはないので、対面している江戸前鮨職人の調理の手元まで詳細に見える
 板場は、ショーの舞台の様に明るく、大将も輝いている。

 恐ろしく長い包丁の黒檀の柄の細工もよく見える。 銀色の長い刃は冷たく光り、迫力がある。

 時間となり、席がうまると、大将のかっ達な弁舌とともに、「あら輝」の おまかせがスタートだ。
 ビールはサントリープレミアムがでてきた。 飲物メニューはあるが、値段は入っていない。 

 - つまみ -
 季節によって、鯛、カツオ、トコブシ、肝、玉子焼きなど。
 こちらでは、付け台に直か置きだ。 カツオは皿で提供されるがその皿に立派な模様、味も見事だが、皿も見事な焼き物
 トコブシが提供されるとき、大将が「アワビよりうまいトコブシです」と注釈してくれる。
 注文した 日本酒の燗が到着した、酒器は常温とお燗では、質感の違う数種類の器で提供している。
 
 つまみで、お酒をほどよく、頂いていると、大将がマグロの大きな塊をさばき始める。 
すると、談笑をしていたカウンターの客の視線が集まり、大将が手際よく、赤身・中トロ・大トロと切り分けていく。 

 視線を感じてか、大将がおもむろに、鮪の産地などの説明を始める。 国産の 天然本鮪 しか扱わないが、鮪の産地は、様々で、築地は、石司商店の競り落とした最高の鮪を仕入れる。有名な戸井や大間だけではなく、季節時期によって出雲で捕れた鮪も提供される。

  - 握り -
 赤身、中トロ 大トロ、あおりイカ 炙り鰺、煮蛤、穴子、車海老 の他、夏はコハダの新子、秋は松茸、冬は白子など。
 ニハマや、あぶりアジ などは、大将の手から直接手のひらで受ける。
舎利は冷たくない、
大将が舎利の温度に気を遣っていることを手のひらで感じる。

 独特のあら輝カット マグロ

  
真っ平らにしない鮪のカットは、大将のこだわり
       サイドを短いスカート型にカットする
 「あら輝」の握り鮨の花形は、やはり鮪で、赤身・中トロ・大トロと二貫ずつ連続ででてくる。 仕入れた後 たっぷり店の保管庫で熟成させてあるので、柔らかく、旨味が多い。 

握る頃にネタが適温になるように、切り分け始める時間から握る順番まで決まっている、「おまかせ」 だからできる こだわり。

 鮨店のムードは、大将たたずまいひとつで、 にも 野暮にもなるが、鮨を握り初めてからは特に、大将を中心にカウンターが一体となって鮨談義になることもある。
 言葉は丁寧だが、客への闊達な つっこみは、かなりきつい。
粋な鮨屋の大将との会話もここ「あら輝」の魅力でもある。

「あら輝」の大将は、鮨に命をかけているので、ときには、
 客にも真剣な振る舞いを要求する。 つけ台の鮨が、少しでも置かれていると 大将からすぐ注意が飛ぶ。
 「お客さん、鮨は すぐに 召し上がっていいただけますか 味が変わりますから」
昨年、震災を挟んで、5回ほど お伺いしたがTVでよく見かけた有名なお顔のお客さんも多い。

ときには裏の調理場から激しい叱咤が聞こえる。(若い衆がなにかの仕込みを間違えたのか?)「俺たちは、命をかけて仕事をしているんだよそうじゃねぇのか!」 

 そして大将が客席の定位置に戻ってくると、

「すみません、若いものは、その場で叱らないと駄目なんです。 
     すみません、 後でじゃ駄目なんです。」

 職人の厳しい修行の世界を垣間見た様な気がした、 ほか、大将の名台詞 「一生懸命だけじゃ、1年しか続かないよ・・・最初の志を貫く決心があるかないかですよ。」荒木節の名調子といったところ。

 鮨は、酢飯 に新鮮なネタを のせた だけの食べ物じゃない。
江戸前鮨の技術はもちろん必要だが、その店の大将の 粋 の加減で味が変わる。
あら輝の鮨は、「今日は良い鮨屋に出会った。」 そんな気持ちにさせる名店だ。
     ツーオン



   「未踏 あら輝」