「エンド・ゲーム」/裏返される?? | 旧・日常&読んだ本log

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流れ去る記憶を食い止める。

2005年3月10日~2008年3月23日まで。

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恩田 陸
エンド・ゲーム―常野物語

光の帝国 」に出てきた、拝島母子の戦いの話。

「光の帝国」に収録された「オセロ・ゲーム」では、夫の失踪後、一人孤独に「あれ」との戦いを続ける、母、拝島暎子の危機を娘、時子が救い、母を救ったことで、時子もまた「あれ」との戦いに参戦せざるを得なくなった、というところで話が終わっていた。

で、この物語は、その後の拝島母子の戦いは、一体どうなっていたのか?というお話。十数年間が過ぎた今、失踪した父はどうしているのか?、また、その父が頼るようにと残したけれど、暎子が決して連絡を取らなかった電話番号の意味とは?

例えば、「光の帝国」の他の短編においては、常野の人々が持つ力は、もっと実際的に役立つものだった。遠目、遠耳、つむじ足・・・。同じ常野とはいえ、ただひたすらに「あれ」との戦いを続け、「裏返すか?」「裏返されるか?」と、日々その身を危険に晒すものの、それが何の戦いであるのか、その戦いが何の役に立っているのか、皆目分からない拝島母子の能力は、随分と異質なもの。

母、暎子が裏返され、「洗う」「包む」能力を持つ「洗濯屋」なる人々が現れ、時子の高い緊張感が、読み手にも緊張を強いるのだけれど・・・。

ラストは二転、三転。

そして、終わりの始まりの雨が降る

ラスト、鮮やかに、冷ややかに振り向く時子には、覚醒を果たした「麦の海に沈む果実 」の理瀬を思い出す。恩田さんは、クールな美少女を描かせたら、天下一品だよなー。とはいえ、時にクールな美少女に、置いてけぼりにされるような気分もするのだけれど・・・。ああ、私を置いて、あんな遠い所へ!

現状では不要とされ、進化の過程で淘汰されるものであっても、たとえば環境が激変した際には、必要とされる能力、器官だってある。逆に現状では必要はなくとも、過去にはそれが必要とされていたという場合だってある。「裏返す」、「裏返される」、「洗う」、「包む」、「包まれる」。これらの能力が必要とされるのは、一体どんな状況、どんな時代なのだろう。