「狐狸の恋」/お鳥見女房第四弾 | 旧・日常&読んだ本log

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流れ去る記憶を食い止める。

2005年3月10日~2008年3月23日まで。

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諸田 玲子
狐狸の恋 お鳥見女房  

目次
第一話 この母にして
第二話 悪たれ矢之吉
第三話 狐狸の恋
第四話 日盛りの道
第五話 今ひとたび
第六話 別の顔
第七話 末黒(すぐろ)の薄
第八話 菖蒲刀


この巻で特筆すべきは、矢島家の当主、伴之助に密偵役を命じた張本人であると思われる、水野越前守忠邦が失脚したこと。この事は、矢島家の皆にとって大きな影を落とす・・・。

お鳥見女房 」から始まったこのシリーズ。珠世のまろやかな肝っ玉母さんぶりは、シリーズを通して変わらないけれど、登場人物たちは段々と成長しています。

前作「鷹姫さま」においては、矢島家次男の久之助が、父伴之助を救うために活躍。それは家を継ぐ事の出来ない、冷飯食いの次男である事の鬱屈とも無縁ではなかったが・・・。嫡男というだけで、苦もなく役を貰える跡継ぎである事を引け目に感じていた久太郎も、鷹匠の横暴に苦しむ村人を救う事で、自らもまた救われる。見習い役から本役を命ぜられた久太郎、既に以前感じていたお鳥見役への嫌悪感は微塵もなく、そこで生きていく事に迷いはない。

「悪たれ矢之吉」において描かれるのも、源太夫の一家の次男、源次郎の鬱屈。長男、源太郎が嫡男として扱われ、自らもまた自覚を持っていくのに、取り残されたように感じてしまうのだよね。彼らにも以前の悪戯小僧の面影はない。

さて、表題にもなっている「狐狸の恋」に見られるように、本作では様々な恋が語られる。「末黒(すぐろ)の薄」に登場するのは、逃れられない役目を追いながら、女と睦み合ってしまう浪人もの。それが上意であるならば、愛した女にあってでも、お役目を語ることは出来ないのだ。そしてお役目を果たした後は、そっと姿を消す他はない・・・。タイトルの末黒の薄とは、野焼きをした後に生えて来る薄を言うのだという。役目の中で、図らずも女と睦み合ってしまうのは、実はこの浪人だけではなく、珠世の父、久右衛門の過去でもあった・・・。女を助けた久右衛門の心の中には、勿論、過去、役目のために捨てるような形になってしまった、母子がいたのだろう。野焼きの後に生えて来る薄。久右衛門と、綾の間にあった確執も解かれることになる・・・。


そして矢島家の恋模様。久右衛門と綾との確執が薄れたことで、久之助と綾との間の障害もなくなったし、和知家の娘、鷹姫さまこと恵以を久太郎に嫁がせるウルトラCは、珠世母さんのアイディアの賜物。この先も楽しみです。

・第二弾「
蛍の行方

 ← お、文庫化されているのですね。
・第三弾「鷹姫さま」

 ← 記事にし損ねました・・・。でも、シリーズものは、書いておかないと忘れてしまうのでキーケーンー。