『ハトはなぜ首を振って歩くのか』藤田祐樹 | すっぴんマスター

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(※注:ゲーム攻略サイトではありません)書店員。読んだ小説などについて書いています。基本ネタバレしてますので注意。気になる点ありましたらコメントなどで指摘していただけるとうれしいです。

■『ハトはなぜ首を振って歩くのか』藤田祐樹 岩波科学ライブラリー

 

 

 

 

 

 

 

「気がつけばハトはいつでもどこでも、首を振って歩いている。あの動きは何なのか。なぜ、1歩に1回なのか。なぜ、ハトは振るのにカモは振らないのか…?冗談のようで奥が深い首振りの謎に徹底的に迫る、世界初の首振り本。おなじみの鳥たちのほか、同じ二足歩行の恐竜やヒトまで登場。生きものたちの動きの妙を、心ゆくまで味わう」Amazon商品説明より

 

 

 

今年初読書は小説でも評論でもなく、科学ふしぎ本だ!

ぼくは喫煙者なのだが、以前の店にいたとき、屋上しか吸うところがなかったので、昼休憩はまるまる屋上でとっていた。座れるところもないので、すみっこの段差みたいなところに段ボールを敷いて、座ってパンとプロテインを摂るのである。

夏は暑いし冬は寒いのだが、ひとりになれるということもあり、ぼくはその場所を気に入っていた。すぐ近くに駅があるので、電車など眺めたりできるのもよかった。そういう、限られたのんびり空間に、鳩がよくやってきたのである。もともと鳩は好きだったが、別に餌をやるでもないのに、ポーポー、独特の音をたてながら、なにかもらえるとでもおもうのか、やってきては去っていくのだ。あとのあのホーミーみたいな鳴き声やまん丸の目、ふっくらした胸と、眠ってるんだかなんだか、寒いときなどによくやっている、顔が胴体にめりこんでいるポーズなど、見ていてこれほど回復する生き物もないが、彼らにもっとも特徴的な動作が、首振りである。歩いているときのあの、前後に忙しく顔を動かすしぐさだ。本書はこれがなんのために行われているのか、くだけた口調で検証していくものだ。

 

結論を書いてしまうと、彼らは厳密には「首を前後に動かしている」のではない。ただ、前に伸ばしている。その顔に、胴体が歩行とともに追いつき、すぐに顔が前に出る、ということをくりかえしているのである。本書でも言及があったが、ちょっと前に流行った動画で、ニワトリを手で抱えて、正面からカメラで撮影して、このからだをぐるぐる動かしても、ニワトリは顔の位置を変えないというものがあった。あれと原理的には同じなのだ。要するに、彼らは顔を静止するタイミングをつくるために、歩き進むとともに首振りのような動作をとるのだ。

ではなぜ静止させるのかというと、本書では電車に乗っている我々が外の景色を目で追ってしまうことに照らしてる。これは、ブレを防ぐためのものであるという。実は他にも可能性は考えられる。たとえば、わたしたちが両眼視で奥行きの認識を(あるいは立体的認識を)しているように、鳥は瞬間的にふたつの箇所からの視点を獲得して立体視しているというものだ。だが、ひとまずは景色の移動に合わせて首振りが行われているというダンラップとモウラ―の実験結果を踏まえて、そういうことと考えていいだろう。電車でいうと、わたしたちが目で追う景色は横側を流れていくものである。じっさい、ぼくらが仮に運転席に座っていたとしても、景色を目で追うということはないだろう。横向きだから追うのだ。そして鳥の目は、ちょうどわたしたちが電車で景色を見るときに近い角度にあるのだ。

次になんのためにブレを防ぐのかというと、ひとつにはやはり採食ということになるようである。ここにかかわる要素は、視力や、ハトに限らず首振りを行う鳥たちが生きている環境など、さまざまであり、一概にはいえないが、著者はくりかえしの観察でその可能性にたどりついたのだった。たとえば、当然出てくる問いとして、カモのようにあまり首を振らない鳥は、なぜそうなのかということだが、そういう鳥はどうやらふだん足元を、つまり近くを見ていないようなのである。であると同時に、足元で虫を探すときには首振りを行うというのだ。

 

岩波科学ライブラリーはこういう理想的な科学読み物が多い印象だが、まさしくこのレーベルの1冊という感じだ。ここに至るまでのほとんど雑談のような・・・といって無関係ということではなく、必要な検証ではあるのだが・・・話題もとてもおもしろい。「モノ」を知っていく1年のはじめにいい1冊に出会えたという感じだ。

 

 

 

 

 

 

 

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