鳥取市文化財団理事長 住田 高市さん 62(鳥取市)
博物館や遺跡 集客アップ
鳥取市歴史博物館、重文・仁風閣、青谷上寺地遺跡など市内七つの文化・観光施設を指定管理する鳥取市文化財団。今年、設立10周年を迎えた財団の陣頭指揮を執るのは、全国各地で博物館設立を手がけた住田さんだ。2000年の財団設立前後の7年間は市歴史博物館のオープンに向けて奔走し、07年以降は各施設の集客力アップや展示内容の充実を目指す住田さんに、苦労や今後の展望を聞いた。
――鳥取に来たきっかけは
1995年に、市歴史博物館の00年オープンを目指していた鳥取市に招かれたのが縁です。「47都道府県のうち、鳥取、青森、沖縄は行ったことがなかったから」と、気楽な思いでの赴任でした。
――開館準備は大変だったそうですね
博物館開館は一般的に10年間かけて準備するのですが、与えられた時間は半分の5年間だけ。
所蔵品集めにも苦労しました。寺社や地元の人たちに文化財の寄贈、貸し出しを依頼しても、開館前で認知度ゼロなので断られてばかり。鳥取城を復元したCGや模型を配置し、所蔵品が少なくても見栄えが良くなるような工夫をせざるを得ませんでした。
開館後、徐々に認知度が高まって文化財が集まり始め、今では書物や土器など約3万点をそろえるまでになりました。
――02年に野口英世記念会(東京都)に移り、学芸部長などを経て07年に鳥取に復帰。市に健全運営を求められる立場ですね
市からは経費削減、展示内容の質の向上、集客力アップを追求するように言われています。しかし、不景気などで集客数は落ち込みがち。新たに収蔵品を購入する財政的な余裕もない。少ない予算でいかにファンを増やすか、学芸員らとともに常に考えています。
――実行に移した対策は何ですか
各施設を渡り歩いてもらえるための工夫をしています。今月から12月まで、全7施設を訪れるとノートパソコンなどが当たるスタンプラリーを行っています。
仁風閣ではカフェを開いたり、ライトアップをしたり、人を引きつける工夫をしました。その結果、09年度の来館者は、前年度より1万1000人も多い3万2200人に増えました。
――学芸員のスキルアップも進めるそうですね
市民の注目を集めるには、企画の面白さに加え、その展示品がいかに面白いのかを分かりやすく伝える力も必要です。このため、昨年から企画力など約40項目で学芸員を評価する制度を始めました。実績、実力をチェックできるし、各学芸員も自分の仕事の見直しに役立てられるはず。今後、給与体系を年齢給から能力給に改め、意欲向上を後押ししたいと思っています。(聞き手 松田卓也)
【トークメモ】 堺市出身。大学卒業後、日本博物館協会(東京都)に22年間勤務し、福岡市博物館など全国各地で博物館の開設に携わった。鳥取市文化財団では学芸課長、副理事長を経て08年から理事長。市歴史博物館長も兼務する。家族を横浜市に残しての単身赴任生活。趣味は散歩で、休日には15~20キロ歩く。「早朝に歩くと、洗濯や料理の音、家族の会話が聞こえる。生活感のある鳥取の町並みが好きです」