降旗康男監督、高倉健主演の「居酒屋兆治」を(再び)観た! | とんとん・にっき

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降旗康男監督、高倉健主演の「居酒屋兆治」を観ました。もう何度も観ていますが、実は 9月7日9:30から、BS-TBS日曜朝の映画館で放映された「居酒屋兆治」(2H24M)を録画しておいたので、先日観たわけです。そろそろブログに書いておこうと用意していました。「居酒屋兆治」は、もう何回も観ている作品ですが、どういうわけかブログには書いていません。たぶん観たのは、僕がブログを始める前のことだったようです。


函館の街を舞台に小さな居酒屋を営む男と初恋の女とのすれちがう想い、その店に集まる人々の人生模様を描いた作品です。山口瞳原作の同名小説の映画化で、監督は同じ高倉健主演の「駅/STATION」を監督した降旗康男です。「駅/STATION」も、僕は何度も観て、ブログにも書いています。なぜか高倉健といえば、僕のなかでは「居酒屋兆治」と「駅/STATION」の2本です。もちろん「幸せの黄色いハンカチ」も観たし、「鉄道員(ぽっぽや)」も観ています。ほかにも見ていると思いますが、なぜかブログに書いていません。僕は「幸せの黄色いハンカチ」以前の高倉健の初期の作品、つまりやくざもの任侠ものなどは一切見ていません。


藤野伝吉は、函館で居酒屋「兆治」を、愚痴一つ言わない女房の茂子(加藤登紀子)と営んでいます。兆治は勤めていた造船所で総務課長に抜擢され、オイルショックの時に同僚社員の首切り役を命じられ、それに反発して会社を辞めていました。寡黙で実直な兆治の店は、毎晩常連が集い、そこそこ繁盛していました。なぜ「兆治」なのか?藤野伝吉は高校時代ピッチャーをやっていて、ロッテの村田兆治に憧れていたからです。


後に名監督となる伊丹十三、役柄は近所の酒癖の悪い先輩で、タクシー会社を経営している河原、その河原が兆治に向かって「煮えきらねえ野郎だな。てめえんとこの煮込みと同じだ」と言います。何かにつけて兆治に突っかかりちょっかいを出す、ホントに嫌味な役どころです。しかし、河原の言うことはそのものずばり、的を得ています。何が煮え切らないのか?それはこの映画の主題である兆治とさよ(大原麗子)との関係です。


兆治が肩を壊して野球をあきらめた頃、地元の青年会でさよと知り合います。恋人と言ってもいい関係でしたが、旧家の牧場主との縁談がさよに持ち上がった時に、貧しかった兆治はさよの幸せを願って身を引いたのでした。さよは子供を二人生みますが、若い男と駆け落ち騒ぎを起こしたりもします。しかし、さよは兆治への思いを忘れられません。結婚してからも思い続けます。そんなある日、さよの不注意から牧場が出火し、燃え落ちてしまいます。この火事のシーンは圧巻です。


さよは姿を消します。そんな事件も落ち着いた頃、兆治の店にさよが現れ、「あんたが悪いのよ」と言い残して去って行きました。かつては恋人同士だったとはいえ、今はそれぞれの家庭があります。取り返せるはずのない過去に、さよは突き進んでいきます。妄執といってもいいかもしれません。怖いですね。


「兆治」は相変わらず常連客で賑わっていましたが、河原の嫌味な言動に兆治は我慢できずに、河原を殴り倒します。この事件で兆治は警察にとらえられます。警察の調べは、兆治とさよの関係だけに集中しています。二人の関係から、牧場の放火事件を疑っていたのです。釈放された兆治は、妻の茂子や店の常連に迎えられます。そうしたなかで、さよをすすき野で見たという話が伝わってきます。


兆治は昔のさよの写真を手に持ち、すすきの野の繁華街を訪ね歩きます。偶然、造船所時代の後輩に会います。後輩はサリーというホステスと結婚するという。そのサリーこそがすすきの野のキャバレーホステスに身を落としたさよでした。兆治はさよの部屋を訪れます。自暴自棄になり、酒で身体を病み、兆治の写真を手に、兆治を想いながら死んでいきます。大原麗子が一人で亡くなったことと重なります。「居酒屋兆治」は、大原麗子にとっても代表作といえます。


糟糠の妻・茂子は、人が人を思うことは誰にも止められないとつぶやきます。加藤登紀子も抑えた演技で、彼女にとっても代表作といえるでしょう。


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tyou1 「居酒屋兆治」

出演:高倉健、加藤登紀子、

    大原麗子、田中邦衛、伊丹十三
監督:降旗康男
販売元:東宝

DVD発売日:2005/01/21

時間:126 分






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高倉健さん死去 83歳「網走番外地」「鉄道員」
朝日新聞:2014年11月18日夕刊

任俠(にんきょう)映画の「健さん」として一時代を築き、「幸福(しあわせ)の黄色いハンカチ」「鉄道員(ぽっぽや)」など寡黙で一本気な「日本の男」を演じ続けた俳優で、文化勲章受章者の高倉健(たかくら・けん、本名小田剛一〈おだ・ごういち〉)さんが10日、悪性リンパ腫のため、都内の病院で死去した。83歳だった。最後の作品となった12年の「あなたへ」まで、生涯に205本の映画に出演した。


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