「日本工業倶楽部会館」を観た!
丸の内にある「日本工業倶楽部会館」を観てきました。武庫川女子大学東京センター主催の講演会シリーズ「わが国の近代建築の保存と再生」の第1回「わが国の近代建築保存の歴史と先進諸外国の状況」という、難しそうな長ったらしいタイトルの付いている講演会に参加し、その講演会が開催された「日本工業倶楽部」の保存と再生の解説とその建物の見学があったので、普段は見られない建築を見学することができました。講演会の詳細は別項に譲るとして、「日本工業倶楽部会館」の着工から竣工までの映像で流され、設計に携わった三菱地所設計の野村和宣氏により補足説明があり、その後建物内の主要な箇所を見学しました。以下、配付された資料(作品選集2006抜粋)より。
日本工業倶楽部会館は、わが国工業界のシンボルとして大正9年に竣工した歴史的建築物である。このプロジェクトは隣接敷地との一体開発により、都心部における民間所有の歴史的建築物の保存・再現と最新の超高層ビルを実現させたものである。会館の保存・再現にあたっては、委員会によって多角的に検討された。そして、その方針に基づいて特定街区制度や登録文化財制度を活用し、保存・再現を可能とするスキームを導いた。最小された歴史継承手法は、建物の3分の1を保存し、残りは再現(仕上材再活用)して関東大震災で甚だしく被災している躯体を更新するというものである。保存建物の下部に地下構築物を建設し、その上に免震装置を介して会館全体を載せ、タワーを建設するという画期的な工法を採用している。これにより、会館の動態保存を図ると同時に、タワーは金融系本店としての高い機能性、快適性、安全性を実現することが可能となった。会館の保存部・再現部においてはその歴史的価値を継承すべく伝統的な工法を用いて丹念に修復・再現光寺を行うとともに、タワーと同様に今後100年を見据えた新しい機能の道入や設備の更新も図られている。
日本建築学会の作品選集の「選評」で、川瀬貴晴は次のように述べています。東京駅の目の前で、保存と再開発を両立させるために保存建物を高層ビルの足下に組み込むという手法を開発して建設されたビルである。・・・建物内部も保存、再生、新築という3つのフェーズを、たぶん多くの手間と時間を要したであろうが、その苦労を感じさせずに、うまく調和させている。この建物は、計画のプロセス、施工のプロセスも含めて、保存と開発という問題に対する現代の社会・技術・経済のひとつの解答といえるであろう。
以下に、画像を載せておきます。