東京国立近代美術館で「上村松園展」を観た! | とんとん・にっき

東京国立近代美術館で「上村松園展」を観た!



東京国立近代美術館で「上村松園展」を観てきました。上村松園(1875-1949)は、女性の姿を気品よく描いたことで知られています。僕は最近では、講談社野間記念館での「鏑木清方一門と近代美人画展」と、出光美術館での「日本美術のヴィーナス」展で、上村松園の作品を観ました。また、山種美術館では「美人の粋 上村松園」展でまとまって松園の作品を観ることができました。山種からは「山種美術館の上村松園」という小冊子が出ていて、これが松園の作品を理解する上で役に立ちました。

松園は明治8年、京都市下京区で生まれます。12歳で京都府画学校に入学、鈴木松年に師事します。18歳で鈴木松年の許可を得て幸野楪嶺塾に入ります。20歳で師・幸野楪嶺の没後、竹内栖鳳塾へ入ります。今回の「上村松園展」は、本画88点、素描37点を集めた大規模な回顧展です。展覧会の構成は、画風を模索した明治期、方向性を探った大正期、そして画風を確立した昭和期、と概ね年代順に、変遷をたどることができます。他に附章として、素描が出されていました。


先日出光で観た「四季美人図」、4人の女性を4幅の画面に描き分けています。これは素晴らしい、初期の傑作でしょう、と僕は思います。今回の目玉、狂うほどの嫉妬を描いたという「焔」(前期展示)は、大正7年の作品です。松園が制作の壁に当たった時の絵だと言われています。精神のバランスを崩した女性を描いた「花がたみ」はそれだけ観ると、ちょっと異様に見えますが、「焔」と対として見れば納得がいく、と考えるのは僕の勝手な見解ですが。「楊貴妃」など、歴史画や、中国の美人図を描くようになったのもこの時期です。やはり大正期が興味深い作品が数多く展示してあったように思います。


昭和期、松園の晩年の作品は、描かれた着物の柄などは単純化され、省略されるようになってきます。しかしながら「序の舞」(後期展示)は、さすがは重要文化財、松園の傑作であることには変わりはありません。僕は東京芸大で「序の舞」を何度か観ています。「舞支度」の発表から20年後に描かれたものです。「蛍」あるいは「簾」を描いた作品は、山種で何度か観ました。よくぞここまで描くかと、最初に観た時は驚きました。「人生の花」や「汐くみ」など、同じテーマで何点が松園の作品があることは、僕は今回初めて知りました。「母子」は、松園のもう一つのテーマでした。


昭和23年、松園73歳の時、女性で発の文化勲章を受章します。翌昭和24年、74歳で肺ガンのために逝去。今回展示されている「初夏の夕」が絶筆でした。


展覧会の構成は、以下の通りです。

1章 画風の模索、対象へのあたたかな眼差し

2章 情念の表出、方向性の転換へ

3章 円熟と深化

3章-1 古典に学び、古典を超える

3章-2 日々の暮らし、母と子の情愛

3章-3 静止した時間、内面への眼差し


以下、小冊子「山種美術館の上村松園」より

絵について

私はたいてい女性の絵ばかり描いている。しかし、女性は美しければよい、という気持ちで描いたことは一度もない。一点の卑俗なところもなく、清澄な感じのする香高い珠玉のような絵こそ私の念願とするところのものである。その絵を見ていると邪念の起こらない、またよこしまな心を持っている人でも、その絵に感化されて邪念が清められる・・・といった絵こそ私の願うところのものである。芸術を以て人を済度する。これ位の自負を画家は持つべきである。
雅号

松園という雅号は鈴木松年先生が、先生の松の一字をとって下さったのと、絵を学び始めた頃、私の店で宇治の茶商と取引があり、そこに銘茶のとれる茶園があったことで、それにチナんで園をとり、「松園」と名付けたものである。


1章 画風の模索、対象へのあたたかな眼差し



2章 情念の表出、方向性の転換へ



3章 円熟と深化

3章-1 古典に学び、古典を超える


3章-2 日々の暮らし、母と子の情愛


3章-3  静止した時間、内面への眼差し


「上村松園展」

京都に生まれ育った上村松園は、若くしてその頭角を現し、文部省美術展覧会(通称文展)など各種展覧会を舞台に気品あふれる人物画を次々と生み出しました。その作品には単なる女性美ばかりでなく、画中の人物のさまざまな感情のひだが、市井の人々の営み、歴史や物語、謡曲などの題材にのせて表わされています。松園は近世初期風俗画や浮世絵など人物表現の伝統の厚みを受け止める一方で、対象の内面や精神性の表現が追求された近代という時代と向き合い、自分ならではの人物画を模索したのです。本展覧会では、松園の画業を大きく3期に分け、代表作約100点によって創作の軌跡をたどるとともに、その本質を改めて探ります。


「東京国立近代美術館」ホームページ

とんとん・にっき-syouen 「上村松園展」

図録

編集:

中村麗子、鶴見香織

小倉実子、尾崎正明、松原龍一

発行:

日本経済新聞社





とんとん・にっき-yama12



「山種美術館の上村松園」
小冊子500円










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