渋谷区立松濤美術館で「素朴美の系譜」展を観た!
渋谷区立松濤美術館で「素朴美の系譜」展を観てきました。副題には「江戸から大正・昭和へ」とあります。
小杉放庵、萬鉄五郎、岸田劉生、熊谷守一、梅原龍三郎、中川一政など、著名な画家の作品も出てきます。また富岡鉄斎、夏目漱石、武者小路実篤、など著名な作家の作品も出てきます。時代も平安時代から昭和まで、南画、絵巻、墨絵、版画、陶器、油絵、本の挿絵などが重要文化財含め、前後期合わせて全76点が展示されています。
しかしその名の通り、西欧の写実的な絵画ではなく、まさに素朴な絵画です。正直言って決して上手い絵画ではありません。どちらかというと下手くそな絵画です。しかし、そこには捨てきれない素朴な味わいがあります。西欧に対するこれが日本の伝統的な味なのでしょう。白隠、仙厓はもちろん、芋銭もサラリと描いていますが、ほのかにユーモアが漂っています。萬鉄五郎や岸田劉生が後期に手がけたという水墨画や日本画は力が抜けた味わいがあります。実篤の絵はよく知られていますが、漱石の絵は素人らしくやや硬質でおおらかさがありません。
偶然にもギャラリートークで、「洛中洛外図屏風」を解説しているところに出くわしましたが、その解説が面白い。たしかにこんなにもハチャメチャな「洛中洛外図屏風」は観たことがありません。松濤美術館の矢島新学芸員は「西洋や中国で確立したリアリズムと違い、古来日本には技術よりも味わいを楽しむ流れがあった。飲み屋の看板などにも通じる日本美を味わって欲しい」と語っています。
松濤美術館のホームページには以下のようにあります。
日本の絵画には、リアリズムのみを目指さずに、描き手の心のうちを素朴な表現で描き出そうとしたものが多く見られます。その萌芽は室町時代の御伽草子などに求められますが、江戸時代には大津絵や禅僧白隠の禅画、自らの心情を率直に表現した浦上玉堂の南画などに、見る者の心を和ませる表現が生み出されました。そうした素朴表現は、明治の写実の時代をはさんで大正期以降に受け継がれ、リアリズムに徹した絵画には求め得ない、日本的な味わいに富んだ絵画が描かれました。本展は「写実を目指さない具象絵画」を素朴画と規定し、その近世から近代にいたる展覧会を探ろうとするものです。
主な展示内容は以下の通りです。
1.素朴表現の胎動と展開(社寺縁起絵、大津絵、俳画ほか)
2.江戸の素朴な表現主義(白隠の禅画、浦上玉堂の南画ほか)
3.近代の素朴回帰
・リアリズムから素朴へ(小杉放庵、萬鉄五郎、岸田劉生ほか)
・晩年のスタイル(熊谷守一、梅原龍三郎、中川一政ほか)
・我が道を行く素朴(横井弘三、長谷川利行)
・余技としての素朴画(富岡鉄斎、夏目漱石、武者小路実篤)
・創作版画(川上澄生、谷中安規、棟方志功、料治熊太)
渋谷区立松濤美術館