いのちの食べ方(2005独/オーストリア) | CINEPHILIA~映画愛好症~

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気づいたら11月。もうすぐ1年終わっちゃいますねー。今月はフィルメックス見に行かれたらと思ってます。

いのちの食べ方1 いのちの食べ方2

手ごわいドキュメンタリー
を観てしまいました。「手ごわい」といっても、マイケル・ムーアのようなガナリ立てる種類のものではありません。ナレーションもなく、インタビューもなく、音楽もなく、聞こえるのは機械の音。ストーリー性もなく、5分程度の短い映像が脈絡なく続くのです。これは…寝られますよぐぅぐぅ

OUR DAILY BREAD is a wide-screen tableau of a feast which isn't always easy to digest - and in which we all take part. A pure, meticulous and high-end film experience that enables the audience to form their own ideas. (IMDbより)

淡々と、恐ろしく客観的視線で、食を大量生産する現場を映していきます。多くのシーンは固定カメラで、牛などを乗せたベルトコンベアが画面の左から右へと移動して、何かの加工を受けてゆくのです。その傍らで作業する人間は、無表情にルーティンをこなしてゆくバイトの若者や、パートのおばさん。それをずーっと見つづける長い間(ま)。そんな映画だから、色々なことを考える余裕があります。「私は小さい頃、ヒヨコが欲しかったな」とか、小学校でヘチマ栽培したことや、最近美味しいモノを食べたかなど。…と思うと、寝てしまうか、心のまぶたが閉じているので、非常に危険です。

そして、一定の時間ごとに(おそらく、工場や農作業の休憩中)、食事する人間が映されます。会話せず、黙々と、食べる。ルーティンの作業のように無表情で食べる。

私の心に大きな波がないまま、92分の映画は終わりに近づきます。(もちろん、一定のスピードで淡々と映画が流れているので、終わりの兆候など全くみえない) が、牛のシーン、電気ショックを受け、無造作に扱われる、吊るされて胃液や血液が滝のように落ちてくる、そんな姿を見ていたら、急に物悲しくなってきたんです。私が万一、食用牛に生まれてきていたら、悲しみや不条理を感じながら死んでいくんだろうかと…しょぼん

監督さんのメッセージは、「現在の食を見直そう、生に対する感謝を思い出そう」というものかと思うんです。そして、見方を押し付けず、映像美へのこだわりも感じる、異色のドキュメンタリーでした。私には周囲が評価しているほどには伝わってくるものはなかったし、これからも肉・魚を食べつづけると思いますが、なんとも印象深かったです。

* ほとんど説明がないので、鑑賞後にプレスを読んで初めて「なるほど」と思うシーンが多かったです。観たい方は止めませんが、よく睡眠を取って臨むことを勧めます。


11月よりイメージフォーラムにて公開予定
満足度:★★★★★☆☆☆☆☆