Love is | In The Groove

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a beautiful tomorrow yea

 
その夜、スーザン・モローはセックスをした。彼女のアーノルドと、自分たち二人の流儀で、二人で歩んだ25年の歴史を背負って。彼女はそれを期待していなかった。彼の疲労、彼女の苛立ち。何であれとにかく気の散ること。自分が数々の犠牲を払ってきたことへの不満感と自己憐憫。彼女にとってはアーノルドにとってのニューヨークの冒険と同じくらい重要なこと、最新の例がエドワードのあの小説だが、そういった彼女の冒険的な経験に対して、無視を決め込むアーノルド。完全な無関心。だから期待もせずに、眠りの扉を開けかけたとき、彼の熊のような手が、親しげに、当然のことのように触れてきて、いきなり彼女を連れ戻したのだった。

オースティン・ライト著『ミステリ原稿』より

 

恋愛映画を堪能した2015年上半期

 

ミラノ・ファッション・ウィークが閉幕した。前回のブログで「ドナルド・トランプ」に注目した際、表のテーマを「番外編」に決めた一方、その裏の隠しテーマは「バブル(泡沫/うたかた)」だったわけだが、『アメリカン・サイコ』繋がりで、80年代の高度消費社会をイメージしながら、メラニアパリス・ヒルトン、そしてローレン・マイコラスちゃんのライフ・スタイルに少しばかり言及したが、80年代に一世を風靡したブランド群と言えば、他でもないイタリアの高級ファッションであり、華やかなミラノ・コレクションの数々だったのだ。

 

本題に入るが、2014年上半期に劇場鑑賞した映画について、2014年7月6日付ブログ“When Doves Cry”で綴ったが、あれから約1年、2015年も早いもので半年が経過しようとしている。ところで、今年のブログの隠しテーマを“LOVE”に決め、2015年上半期の私的なオススメ映画について、1月8日付ブログ“Falling in love again(前編)”(テーマ: 「本・雑誌」)及び1月9日付ブログ“Falling in love again(後編)”(テーマ: 「映画」)の2回に分けて綴った。前者ではヘルマン・ヘッセの恋愛に関するいくつかの名言をはじめ、澁澤龍著『快楽主義の哲学』やヘッセ著『愛することができる人は幸せだ』、そして他の本も数冊例に挙げ、恋愛について触れ、後者では2015年上半期の私的なオススメ映画について、いつもとは異なるテイストで、恋愛映画を中心にセレクトしたが、いずれの作品も興味深く、シャンパン片手に批評するには最高のそれだった。

 

本日6月25日時点で、今年劇場鑑賞した作品は、1月9日付ブログで取り上げた作品をはじめ、18本を数えるが、その中から恋愛映画を中心に、ブログで10作品の感想を綴った一方、下半期に日本公開となる映画の多くは、恋愛映画とは趣を異にするハリウッドの超大作が控えており、少しばかり戸惑っている(笑)。なぜなら、2015年下半期も、上半期同様、珍しく、恋愛映画を堪能したかったというのが本音だからだ。こればかりは、思い通りにはいかないみたいだ。

 

2015年下半期のオススメ映画について

 

現時点で、年末までの劇場公開作品がすべて確定したわけではないが、それがほぼ判明する秋頃に、改めて追加してブログを更新するかもしれない。上半期は「恋愛映画」がとりわけ目立ったが、下半期は『マッドマックス』『ジュラシック・パーク』『ターミネーター』『スター・ウォーズ』シリーズなどなど、過去に大ヒットしたハリウッド超大作の続篇が目白押しであり、『ミッション・インポッシブル』及び『007』の新作に限れば、私的にも待望の公開であり、オトナも十分に楽しめる、2015年の超目玉作品だ。ボンド、ジェームズ・ボンド、この響きもまた最高だ。2015年下半期に劇場公開される数百本の中から、いくつか作品名を挙げると、6月20日(土)公開となったシャーリーズ・セロン出演作『マッドマックス 怒りのデス・ロード』をはじめ、
 
今週末27日(土)公開のカート・コバーンのドキュメンタリー映画『
COBAIN モンタージュ・オブ・ヘック』及びエットレ・スコーラ監督作『フェデリコという不思議な存在』、7月11日(土)公開の「昆虫の世界」を撮った3D邦画『アリのままでいたい』、
8月8日(土)公開のフランソワ・オゾン監督最新作『彼は秘密の女ともだち(英題: The New Girlfriend)』、8月22日(土)公開のジェイク・ギレンホール主演作『ナイトクローラー』、
 
11月公開予定のタランティーノ絶賛のジル・ソロウェイ(女性)監督最新作『午後3時の女たち(英題:
Afternoon Delight)』、12月18日(金)公開の『スター・ウォーズ フォースの覚醒』などなど、少しばかり気になっていた作品もあるとはいえ、スペースの関係上、多くは語らないが、私的なオススメの5作品を今回紹介したい。
 

 
M: I
ローグ・ネイション  8月7日(金)公開 *現時点で上映時間は未定

期待度★★★★★

本作は、トム・クルーズ主演のスパイ・アクション大作『ミッション・インポッシブル』シリーズの第5弾目にあたるが、物語の詳細はさておき、本作で監督を務めるのは、トム・クルーズ主演作『ワルキューレ』『オール・ユー・ニード・イズ・キル』で脚本を担当し、同じくトム主演作『アウトロー』で脚本・監督を務めた、トムが全幅の信頼を置いている映画人<クリストファー・マッカリー>その人だ。新ヒロインには、スウェーデン出身の女優<レベッカ・ファーガソン>(今年32歳)が大抜擢されている。

 
EDEN エデン  9月公開予定 131分

期待度★★★☆☆

本作は、東京が今年まだ肌寒かった頃まで遡るが、2月27日付ブログ“Big City Nights”の中で取り上げた。当時のブログで、<ミア・ハンセン=ラヴ監督最新作『エデン』(2014年/仏)が、昨年のサン・セバスチャン映画祭、トロント映画祭、ニューヨーク映画祭に続いて、今年のサンダンス映画祭でも上映され、今夏7月24日から英国で劇場公開されることが決定した。内容は、90年代に台頭してきたフレンチ・エレクトロに焦点を当てた物語となっており、ダフト・パンクやカシアスにインスパイアされたようだ。尚、劇中、ダフト・パンクの楽曲が3曲使用されている>と記したように、若かりし頃に夜遊び(クラブ)に明け暮れた人や、ダフト・パンクを古くから知るファンには、ノスタルジアを覚える作品になり得るはずだ。なぜなら、音楽は甘い記憶を呼び覚ますからだ。

 
恋人まで1%  9月公開予定 94分

期待度★★☆☆☆

本作は、ニューヨークを舞台にした、ザック・エフロンくん主演のラヴ・コメディであり、相手役にイモージェン・プーツが抜擢されている。今年3月、ミュウミュウ青山店のオープンに伴い、同ブランドの2015年春夏キャンペーンの広告(写真: 一番上)に起用されていた彼女が来日し、3月31日付ブログ“Young and Beautiful”の中でも注目したが、マイケル・ダグラスと共演した映画『ソリタリー・マン』(2009年/米)及びジェームズ・マカヴォイと共演した傑作『フィルス』(2013年/英)に関しては、当時のブログで感想を綴ったとはいえ、本作は幼稚な内容かもしれないが、人生には遊びが必要であり、息抜きするには最高なそれかもしれない。本作を、上半期に日本で公開されたニューヨークを舞台にしたシリアスな恋愛映画(4作品)と比較してみるのも悪くはないが、コメディ要素が強いそれであるのも否めず。それゆえ、ジョセフ・ゴードン=レヴィット、スカーレット・ヨハンソンジュリアン・ムーアが共演したラヴコメ『ドン・ジョン』と同レヴェルのそれだと想像しているのは俺だけではないはずだ(笑)。

 
サンローラン  今秋公開予定 150分

期待度★★★★☆

近年、サンローランと題した伝記映画が、シャネルのそれ同様、次々と公開されたが、私的には本作が一番観たかったサンローランのそれ(闇)であり、主演を務めるのが『ハンニバル・ライジング』で一躍有名となったフランス人俳優<ギャスパー・ウリエル>その人だ。彼に関しては、過去(例えば、シャネルのフレグランス広告に抜擢)何度か取り上げたように、同作品は昨年の第67回カンヌ国際映画祭で上映されたため、映画ファンの間では記憶に新しいはずだ。付け加えるならば、レア・セドゥルイ・ガレルなども出演しており、興味を惹かれたのは確かなのだ。尚、レア・セドゥは、『M: I ゴースト・プロトコル』(2011年/米)で殺人者を演じ、世界的に有名となり、『アデル、ブルーは熱い色』(2013年/仏)でブレイクしたフランスを代表する若手女優のひとりなのだ。

 
007 スペクター  12月4日(金)公開 *現時点で上映時間は未定

期待度★★★★★

前作『007 スカフォール』に関して、2012年12月2日付ブログ“Kiss M Goodbye”で感想を綴ったが、あれから早3年、トム・フォードの高級スーツを身に纏い、アストン・マーティン(DB10を運転し、ボランジェのシャンパンを愛飲するダニエル・クレイグ演じるジェームズ・ボンドをスクリーンで目にする日が、今からとても楽しみだ。今回のボンドガールは、モニカ・ベルッチをはじめ、レア・セドゥなどなど興味深い面々が勢揃いしている。監督は、俺のお気に入り映画『アメリカン・ビューティー』のサム・メンデスその人であり、私的には、近年稀に見るほど期待度が高い作品であるのは確かであり、配給元がソニー・ピクチャーズ・エンタテインメントゆえ、ボンドが劇中で使う電子機器がソニー製品であるのも愛嬌だろうか。Can’t wait!

 

トム・フォード監督の次作『Nocturnal Animals

 

 
ブログ冒頭で、ニューヨーク生まれの知的な作家<オースティン・ライト>(1922-2003/享年80歳)が刊行した1993年の小説『ミステリ原稿(原題: Tony and Susan)』から一部引用したが、先日同書を読み終えたばかりなのだが、とりわけオススメもしないが、映画化させるには面白い小説だと(も)思った。

 

あらすじを簡単に言えば、3人の子供を持つ49歳の平凡な主婦スーザン・モロー宛に、前夫エドワードから、彼が書いた小説『Nocturnal Animals(夜の野獣たち)』が届けられ、医師である現夫アーノルドが学会出席のため、ニューヨークに3日間出張する際、同小説に3日間目を通す話しなのだが、小説に登場する大学教授の主人公トニーの物語と、スーザンの日常のそれとを対比させながら、物語が進行していくという二重、三重の構造が特徴だ。私的に面白いと思えたのは、彼女が小説を読み始めた日、子供たちが自宅で興じていた遊びが、モノポリーだったことだろうか。要は、トム・フォードの初監督作品『シングルマン』同様、本作も「人生とは何か?」を主題にしており、今回もまた、彼らしい脚本の選択だと、俺の眼には映ったのだ。

 

本作は2016年に全米公開が予定されており、スーザン・モロー役にエイミー・アダムスが、トニー役にジェイク・ギレンホールがそれぞれキャスティングされている。現時点で、それ以外の詳細は明らかにされておらず。ホアキン・フェニックスがキャスティングされているのであれば、彼の役は、トニーがハイウェイで出逢う暴漢3人組のひとりかもしれない。でなければ、現夫のアーノルドもしくは警部補のボビーだと思われるが、現時点では情報がないため、憶測で書いても意味がない。トム・フォードが同作品にどう息を吹き込むのか、彼の「研ぎ澄まされた美的センス」と「映画への熱い情熱」がどう働き、カタチになっていくのか、今から完成がとても楽しみだ。

 

尚、ニューヨーク・タイムズ紙は、同小説に関して「賞賛すべき作品。文明と野蛮。正義と復讐の間の境界に踏み入る、苦悩に満ちた探検。記憶と想像との間のぐらぐらの垣根についての解釈も、ウィットに富んでいて面白い」と高評価している。

 

最後になるが、明日26日(金)から29日(月)までの4日間、有楽町の映画館において、フランス映画祭が開催される。私的には、フランス映画先行上映会と言ったほうが的を射ているとも思う。先述した『彼は秘密の女ともだち』及び『EDEN エデン』が、27日(土)にそれぞれ先行上映される。本日のブログのタイトルは、先日深夜に、高級ヘッドフォンで聴いていた音楽のそれであり、2007年のブログで取り上げたDefectedの『In The House: Miami 2007』のオープニングを飾ったJadaの“Love isLove Breeze”に決めた。特に意味はないが、「愛とは、そして人は変わるものなのだろうか」がトム・フォードのメッセージなのかもしれない。 

 

 

Have a beautiful day!