ACIDMAN「ALMA(初回盤)」
今回は、ACIDMANの8thフルアルバム「ALMA」をピックアップします。まずは各曲紹介から。
【各曲紹介】
緑:素晴らしい曲、青:良い曲・まずまずの曲、黒:普通・及第点の曲、赤:イマイチな曲、茶:駄曲
1.最後の国(introduction)
インストナンバー。まるで夜がどんどん明けるかのように、どんどん音が厚くなっていきリズミカルさが増すロックサウンドが展開されています。
2.風が吹く時
「苦悩や葛藤を持ちつつ恐れることなく生きていきたいという気持ち」を描いたアップテンポチューン。パンクテイストがあって明るさ・キャッチーさを持ってるこの曲、その反面切なさと退廃的な部分もあるのが印象的ですね。単なる「盛り上げ曲」でとどまらない世界がそこには広がってます。
3.ONE DAY
死に間際を描いたようなかなり儚くも切ないものになってる歌詞が鮮烈ですね。静かながらリズミカルにメロディが動くメロ部分&Dメロ部分と、一気に加速してダークさと激しさを爆発させるサビ部分とのコントラストが聞きどころ。やや変則的なコードを鳴り響かせる演奏隊のパフォーマンスもお見事というほかないです。
4.DEAR FREEDOM
「自由の名の下に消えていった命の儚さ、そしてそれを繰り返す人間の愚かさ」をテーマとした曲。とにかくダークで力強さ・激しさに満ち溢れてるのが特徴的で、それでいてメロ部分で静かなる退廃感?を出したり強弱に富んでるのが良いですね。個人的に底から這い上がるような力強さがボーカルにもう少し欲しいような気も。
5.ノエル
「平和の願い」をテーマとしたスローテンポナンバー。序盤はストリングスを織り交ぜつつ淡々と唄われていきますが、2番が終わった途端一気に空間が広がっていき、重厚なロックサウンドのもとまるで聞き手を壮大な愛で包み込むかのような温かさと壮大さを放つという構成になってます。この厚みがありつつもふんわり感のある2番以降が大好きですね♪
6.ALMA
「人類愛」を描きつつ「愛を持って精一杯生きていこうとする姿」を唄ったロックバラードナンバー。とにかく聞いてるとまるで心の汚い部分がすべて浄化されるような気分になります。サビでの昇華するような開け方?が絶妙だし、淡々と進む中輪廻転生を織り交ぜつつ説得力のある世界が広がってるライティング・また微妙に緩急の付いたボーカルもあって飽きることなく聞けます。
7.真っ白な夜に(instrumental)
インストナンバー。ギターの音色がなんともいえない儚さや叙情感を演出し、タイトル通り?夕方から夜にかけてのたそがれ感?が出ていると思います。静と動のメリハリのついた演奏にも注目。
8.レガートの森
「人を含めてさまざまな動物が互いに命を紡ぎあって世界を生きている」というさまを唄ったアップテンポチューン。シンプルな構成でキャッチーなんだけどとにかくアコギの音色とそれに絡むベースの音色が美しくて、それが歌詞の世界観が合わさり地球の細々さと壮大さを感じられます。最後リズム隊とシンクロしていく感じも良いと思います。ただここからの後半4曲すべて、サビメロが淡白すぎるのがマイナス点になっちゃってますね…
9.Final Dance Scene
ダークテイスト全開で人間への皮肉・人類の終わりへの危機が込められているリズミカルな曲。終始ダンスをしてるかのような畳みかけを魅せますが、特にメロからサビへのリズムの移り変わりとそこへのメロディの動き・そして間奏部分で見事にギミックを入れつつクオリティの高さを魅せつけている演奏隊がホント魅力的。コーラスも入りつつリズミカルさを増すサビ部分もインパクト大!
10.2145年
「心の大切さと美しさ・脆さ」を描いた曲。2番終わりまでは切なさが出つつ穏やかさも垣間見えたりしつつ、その中でオオキさんの切々としたボーカルがとても活きています。そして2番が終わるとそこから音数が多くなって音の厚みが増し演奏に切迫感が出て、最後には温もりが再び出るという不思議な展開に。この部分は演奏隊の力が光ってる、ということで1曲の中の展開の移り変わりの中でそれぞれのメンバーが魅せているという印象を受けますね。
11.ワンダーランド
愛をテーマとしたスローバラード。こちらも静と動のメリハリのついた曲で、壮大さと温もり全開のサビ部分の突き抜け方が聞いてて気持ち良いですね。なんか歌詞カード通り夜が明けるかのような雰囲気もあります。
【総評】
全体の評価は100点満点で、
100点~95点:紛れもなく名盤
~90点:かなり良い作品
~80点:良い作品
~60点:まずまず・及第点の作品
~40点:イマイチ…
それ以下:駄作
評価:90点
2002年にメジャーデビューした3ピースバンド・ACIDMANの通算8枚目となるフルアルバム。名前は知ってたけどまったく曲に触れたことが今までなかったんですが、シングルとしてリリースされた「ALMA」を聞いて「良い曲!」と思い、フルアルバムが出たということで買って聞いてみました。点数が表す通りなかなか素晴らしい作品のように思えました。
以前と比べることは(過去作品を聞いてないので)できませんが、各所のレビューや情報サイトによると、
①叙情と風景描写が織り交ぜられた抽象的な詞の世界観(ここ数作では終末観と生命の対比を描いている)
②静と動を生かしたロックサウンド、それでいて様々な音楽の要素を取り入れている
③美しい旋律をエモーショナルに歌い上げるヴォーカル
というのが彼らの魅力の様子。それをもって今作を聞いてみるとその良さが色あせることなく反映され、魅力として活きている印象を受けました。
特に①については、星や夜空など地球を身近に感じられる情景や風景を取り入れつつ、地球への敬愛・そして人類への皮肉と愛を込めた聞きごたえ・メッセージ性がすごくあるものになっており、今作の中で最も独特の魅力・センスを放ってるとも言えます。それでいてアルバム全体で昼→夕方→夜→夜明けの移り変わりを表現しているのも素晴らしいし、その世界観を見事に再現した歌詞カードが見ごたえ十分の情景を作り出しているのが素晴らしい!聞いてて惹きこまれます…
また②に書いた通り、シンプルなロックサウンドを基調としつつもさまざまな音楽の要素がさりげなく入っており、また静と動のメリハリの付け方がとても上手いですね。時には変則的に動きつつしっかりとした安定感・聞きやすさのある、それでいてひねくれた演奏パフォーマンスをうまく魅せてくれてます。③についてもオオキさんのエモーショナルなボーカルが緩急つけて常に展開されます。個人的にはちょっと上ずってるというか底から這い上がるような力強さがもう少し欲しい気もしますが…
ということで、以上のような彼らなりの魅力を出しつつキャッチーさと孤高さの両立がうまくなされてるのが良いですね。Amazonでは賛否両論だけど個人的にはちょうど良いしそもそも曲のクオリティの高さは確かなので惹きこまれました。ただインストを挟んだ後半が前半に比べると弱いのがちょっと残念。色評価自体は後半4曲もすべて青ですが、緑評価に近い・緑評価な前半と比べると後半はインパクトが薄いからか弱く感じます。この部分にもう少し惹きこむ曲が1曲でも並んでいたら当ブログの名盤の目安としてる95点は超えてたかもしれないです。またそれを含めてシングル曲に比べてアルバム曲が弱めなのもマイナス点。あとサウンド的にはどちらかというと静かさが際立ってる作品なので(特に中盤~終盤)、そこらへんをどう捉えるかで評価が分かれそうですね。
惜しいところもありますが、ロックファンのみならずぜひともその歌詞の世界観に触れて欲しいところ。奥深さと説得力のあるメッセージに惹きこまれることでしょう。