柳川堀割物語/1987年作品 | 全国一斉 鞆の浦検定(鞆ペディア)

柳川堀割物語/1987年作品

今(2009年)から12年前に作られたドキュメンタリー映画

柳川堀割物語 [DVD]

¥3,076
Amazon.co.jp

柳川堀割物語
1987年作品
文化記録映画

毎日映画コンクール文化記録映画賞受賞

製   作:宮崎 駿
脚本・監督:高畑 勲
撮   影:高橋 慎二
監 督 補:宮野 隆博
監 修 ・ 脚本協力:広松 伝
アニメーション原画:田中 敦子
          二木 真希子
美 術:山本 二三
色指定:保田 道世
ナレーション :加賀美 幸子(NHK)
        国井 雅比古(NHK)
テーマ 音 楽 :間宮 芳生
プロデューサー:久保 進


__________

福岡県柳川市。無数の小川を有した都市である。市民の多くは、柳川市の誇りは堀割であると答える。
映画「柳川堀割物語」は、市民の誇りであり全国的にも有名な観光名所である柳川が、辿ってきた過程を示している。
柳川が直面した問題は、全国の都市や町村でも遅かれ早かれ直面した問題である。柳川はどう対応したのか。何を選択したのか。それをこの映画は追っている。
全国的に平野部都市部の小川が死の川と変貌したのは、昭和45年、公害問題のピーク時と重なる。
その対策をほとんどの都市は下水道に求めた。柳川でも下水道に求めようとした。しかし、柳川には独自の水の歴史があった。「もたせ」。
「もたせ」とは、雨や上流からの水をできるだけ滞留させて利用しつつ、雨が堀の能力を越えると緩やかに田を浸すしくみをいう。
「もたせ」こそ水利と治水の一体システムであった。「もたせ」の思想を維持するか、環境問題を合理的に解決するか、柳川は選択を迫られた。
死に瀕した川は、回復不可能なまでに汚濁している。かっての管理組織が消滅し、清掃されず放置されたも同然の有様で、川は選択を待っている。
「物語」は選択によって生まれた。柳川は「もたせ」の思想を選び、3つの実施計画を決めた。

第1、浚渫によって水路を復元し流水を確保する。
第2、排水規制を強め浄化施設を増やし汚水の流入を抑える。
第3、維持管理体制をつくり市民参加の清掃を復活する。

川とのつきあいはわずらわしかった。だから、一度こわれた連帯感は取り戻すのは難しい。
それを乗り越え、実施計画を推進した行政の行動は、わが国では希有である。
水路だけでなく、市民の潜在的なエネルギーを掘り起こした「物語」である。


【プロローグ】
◎第一章 堀割は生きている - 水路点描 -
◎第二章 汲水場とお濠端 - 水路網の特色と利用 -
◎第三章 柳川三年肥後三月 - 水路の仕組み -
◎第四章 福岡県令 飲用河川取締規則 - 水路が清浄だった頃 -
◎第五章 列島改造の時代 - 水路の荒廃 -
◎第六章 海のつくった平野 - 堀割のなりたち -
◎第七章 水を「もたせ」る - 水利システムの完成 -
◎第八章 水の一滴は血の一滴 - 矢部川水争い -
◎第九章 直訴と英断 - 水路再生に向って -
◎第十章 自然を生かし共に生きる - 城堀水落ち -
◎第十一章 住民と行政の連帯 - 水路再生の歩み -


【この映画の問いかけ】
大型公共事業が最善の策なのか?
物語の序章(起)では、堀割の急速な環境悪化という問題と同時に、暮らしと密接に関わってきた堀割を失うことに対する不安が焦点となる。漠然とした住民の不安が、広松係長の問題提起によってコミュニティの危機として捕らえられていく。この場面では、100回以上にも及んだ広松係長らの「出前講座」の積み重ねが、重要なポイントとなっている。
 第2章(承)では、行政と住民との懇談会などを通じて、危機を回避するための知恵が集められる。埋め立て・下水道化が最善の解決策にも見えたが、住民は、堀割の本来の機能を回復させることで、堀割を守るとともに生活環境を改善する道を選んだ。第3章(転)では、行政と住民がともに汗を流し、堀割を再生していく。単にごみを除去するだけでなく、周囲の景観や公園なども「市民事業」として進められた。
 「柳川堀割物語」の最終章(結)では、柳川の暮らしと文化を根底で支えてきた堀割がよみがえり、堀割再生と足並みをそろえるようにして若者がふるさとに還り、すたれかけていた祭りのにぎわいが戻ってきた。

事業費5分の1、新たな価値生み出す
住民自治の視点に立つと、次のような点が注目できる。
◎職員の熱意が行政を住民を動かした

◎堀割の価値を見直すことから住民の間に共感・共鳴が広がった

◎快適・便利な生活を求める目先の住民ニーズよりも、地域の将来を重視した

◎行政と市民との協働・市民事業がまちづくりを変えた

◎年間100万人の観光客を呼び込む産業振興につなげた

 特に、堀割再生の取り組みを「市民事業」として見た場合、当初の下水道整備計画で20億円の税金を投入しようとした公共事業に比べ、費用はおよそ5分の1で済み、しかも短期間で目標を実現したことは、公共サービスの再編を考える上で、重要なポイントだ。経済波及効果の面でも、大型土木工事が地元に落とすカネが一時的なものなのに対して、堀割の保存がもたらした水郷文化とゆとり空間の方がはるかに大きな価値を生み出しているように思える。


厄介者も磨けば宝
柳川の住民にとって「厄介者」にしか見えなかった堀割は、実は「街の中の多目的ダム」としての役割を持っていた。日照りが続けば、農業用水となり、大雨が降れば「もたせ」と呼ばれる洪水調整機能が巧みに働く。現に埋立が議論されているさなか、有明海沿岸を高波災害が襲った際にも、柳川は最小限の被害で済んだ。
 水理工学の専門家の分析では、堀割を埋め立てて下水道を整備した場合にも、土地の保水力が失われることにより、大雨が降れば街の大半が水没するという。柳川の住民は、長い堀割の歴史の中で、この「もたせ」の恩恵を直感的に知っていたのだろうと、宮崎駿は指摘している。堀割の機能を保全することが、結果的に地域に眠っていた潜在資源を文化資源・産業資源として目覚めさせたことになる。


祭りに表れるコミュニティの活力
また、まちづくりのエネルギーの結集という点では、柳川においても住民同士の間の「絆」が重要な要素となっていることが見て取れる。
 映画の中で宮崎駿は、地域の人々の間の連帯を育んできた「祭」の衰退と堀割の荒廃とを関連付け、自治意識の薄れが、行政頼み・公共事業依存につながったと見ている。また、北海道大学の宮脇淳教授は、著書「公共経営論」の中で「戦後日本では行政の関与する領域が拡大する一方で、国民・住民の行政依存は強まり、地域のコミュニティの形骸化が進む中で、公共サービスの行政サービス化が進んでいる」と同様の指摘をしている。
 学者とは違った視点からではあるが、祭や村といった日本の原風景に目を向けてきた宮崎監督だからこそ、住民自治と公共サービスの関わりやその変質に気付いたのだと思う。
 改めて、戦後日本における公共サービスの変遷をたどると、次のように区分できる。
 第1段階は、水道や電気、道路、教育などの分野を中心とした「シビルミニマムの量的充足」の時代。続いて、医療や福祉、環境、文化など「シビルミニマムの質的充足」の時代。そして、現代は、介護や子育て支援に象徴される「シビルサポート」の時代へと踏み込んでいる。


行政肥大化・お上頼みの悪循環を断つ
政治学者の松下圭一・法政大学名誉教授が「医療は元々ゲンノショウコ、道路はヨイトマケだった」(日本の自治・分権)というように、介護や子育ての問題も本来は家族や地域の中で解決されてきた。ところが、過疎化・核家族化・高齢化が進んだ現代では「私」や「周りのみんな」で手に負えない問題となってきている。
 「公共サービスの行政サービス化」が進んだ結果、行政サービスは他分野に及んで総量は増大し、専門化していった。さらに、加速するこの流れは、「社会コストの増大」と「コミュニティの劣化」という双子の問題児を生み出した。特に、コミュニティの劣化は、地域の自治機能の低下がさらにオカミ頼み・行政の肥大化につながるという悪循環を招いている。
宮崎監督が柳川堀割物語で警鐘を鳴らした問題が、実は今も根本的に解決されず、合併問題や税財源をめぐる都市と地方の対立、世代間のひずみを象徴する年金問題などの形で吹き出してきているのが、現在の状況といえる。


NPO、アウトソーシングに落とし穴
こうした状況下で、多くの自治体が公共サービスの再編に取り組みつつある。住民ニーズの拡大・多様化に伴ってこれまで行政が抱え込んできた公共サービスのあり方を見直し、再編することが解決策の柱となっているが、現状はどうか。一般的には、厳しい台所を抱えた自治体が、尻に付いた火を消すことに腐心する余り、「行財政改革」という名の「切り詰め型リストラ行政」に走っているケースも少なくない。再編の方策としてNPOやアウトソーシングに対する関心が高まっているが、都合の良い「受け皿」に対する安易な「下請け」に走ってはいないか。
 宮崎駿の視点に立てば、行財政改革と住民自治を変革の両輪にして、コミュニティの再生と公共サービスの再編を同時進行させることこそが重要だと思う。

◎再編に当たってのチェックポイント
◯住民と行政の役割分担について双方が十分な理解に立っているか
◯公共サービスの担い手となるNPOや町内会が機能不全に陥っていないか
◯住民個々に自助や相互扶助の意識が醸成されているか
◯現状のサービス体制やコストなどの情報が整理され、公開されているか
◯サービス評価の目安・しくみはあるか
◎再編を進めるためのキーポイント
◯どんな公共サービスがその地域で必要かは、住民自身が考えて決める
◯公共サービスの担い手はさまざま、高齢者・子供・学生など地域の潜在パワーを呼び覚ます
◯民の発想と人のネットワークを最大限に活用する


上記すべてを否定するNPO組織の記事
          ↑消されてますね・・・むっ
書いては消し、書いては消し、
火のないところに煙を立てて・・・


<関連記事/まちづくりとは?




鞆の浦検定は上記作品にリスペクトしています
__________

第二回 全国一斉 鞆の浦検定

全国一斉 鞆の浦検定



受検期間:平成21年5月2日(土)10時~31日(日)17時
開催場所:鞆の浦及びインターネット(PDF)で問題用紙配布
鞆郎PNG

『鞆の浦いいもの再発見!/Discovery! 鞆の浦』
◎みんなで考えよう「まちづくり」
 一人百歩の前進よりも、百人一歩の前進を!*

【鞆のための「まちづくり書籍」一覧】
http://ameblo.jp/thinktomo/entry-10155533035.html

画家/(故)藤井軍三郎さんが、遺してくれた言葉です

◎「ゼロ・エミッション」
http://ameblo.jp/thinktomo/entry-10151433157.html#main

◎環境にやさしい「無洗米」の提議
http://ameblo.jp/thinktomo/entry-10167263345.html

◎「地産地消」産業
http://ameblo.jp/thinktomo/entry-10149169892.html

◎EM団子を鞆港に!
http://ameblo.jp/thinktomo/entry-10145054472.html

◎えひめAI-2を作ろう!
http://ameblo.jp/thinktomo/entry-10192884833.html

◎鞆の浦を訪れる日曜画家の方々へ
http://ameblo.jp/thinktomo/entry-10183706643.html



にほんブログ村 旅行ブログへ
にほんブログ村 地域生活(街) 西日本ブログへ
にほんブログ村 美術ブログへ
ブログランキング・にほんブログ村へ