アメンバ様700人突破・7万ヒット御礼・ブログ開設2周年を記念しまして…。
細やかながら、自分お祝い祭りです。
ガラケーユーザさまには、ちょっとだけ不親切なお話です。
申し訳ありません。
注!! このお話は単独ではわかりません!!
スタートは、ココ になります。
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怠い足腰。
それらが何とか回復したのは、昼を回ってから。
島にはとっくに着岸していて、多くの人は観光に下りて行った。
「……ここが…」
「まっすぐ行くと、シアターだね」
蓮とキョーコは、案内図を手に船内をうろうろしていた。
レストランの一部やシアターなどは営業していないようだったが…。
「こっちに曲がると…」
「カジノだね」
行ってみたい? と蓮が尋ねると少し迷った様に首をかしげた。
「ベガスみたいに、本格的なのはないから大丈夫だよ」
ルーレットやブラックジャックに、スロット。
飽くまでも『船の余興』というスタンスを崩さない程度の、娯楽施設だ。
のめり込めるほどの、何かがあるわけがない。
「…ちょっとだけなら…?」
ギャンブルという所に、抵抗があったのだろう。
キョーコは蓮の言葉に、少し安堵してほわっと笑った。
「一緒に遊ぼうね」
「はい!!」
また歩を進めると、バーが見えた。
上陸しなかった人達が、楽しそうにグラスを傾けている。
「ここは、カジュアルスタイルで入れるところだね」
「ここの他にもあるんですか?」
「うん。ほら…」
蓮がパンフレットを指差すと、
「あ、ほんとだ…」
1階のデッキに設置されているこのバーと、3階にあるバーのみカジュアルスタイルで入れるらしい。
7階と10階にあるバーラウンジは、正装でないと入れないらしい。
「どうせだから、飲んでいこうか?」
「……昼間ですよ?」
日の高い時間から飲むなんて、とキョーコが眉を顰める。
蓮はその皺を指で突いて解すと…
「バカンスだから、いいんだよ」
と笑い、キョーコの腰を攫って、波の音か良く聞こえる店へ足を踏み入れた。
そこそこに混んでいるカウンター。
ラフなシャツを着たバーテンの前に立ち、
『アペロール・ソーダとコロナビールを』
『Ok』
オーダーした品はすぐに出てきて、二人はより海に近い場所に席をとり細やかな乾杯を交わした。
「遅くなったけど、この旅行を祝して」
「…一緒に来れて、嬉しいです」
キョーコにとっては初めてに海外。
それを蓮と過ごすことが出来て、本当によかったと思う。
「かんぱい」
甘いオレンジ色のお酒は、キョーコのお気に入りだ。
簡単なレシピの為、家で蓮も作ってくれたりする。
「…ビールなんて珍しいですね」
「ん? たまにはね」
何時もはウイスキーなどの洋酒を飲むことが多い蓮。
淡い黄色の液体が詰まった瓶に、櫛型に切ったライムをさして…。
風に髪を遊ばせていするがたは、惚れ直してしまう位カッコイイ。
「う~…」
動く喉仏とか、グラスを支える節高い手とか…。
瓶を傾けるたびに伸びる首筋に、口の端に流れたビールを拭う指とか…。
「だめだわ…」
会話の無い、居心地のいい空間。
こっそりと蓮を盗み見ていると、キョーコの頬がゆるゆると溶けてゆく。
「どうしたの?」
テーブルの上に臥してしまったキョーコ。
アルコールが回ったのかと、蓮が髪を梳き項に手を添えてキョーコの様子を探りに来る。
ぴくんっと跳ねたのは、蓮にも伝わってしまっただろう…。
「…ふふっ…」
蓮は何処まで気づいたのか…
綺麗に手入れされた爪で、キョーコの項を擽る。
産毛を探す様に、ゆるゆると動くそれ。
「ひぁ…」
くすぐったくてぴくんっと、肩が、体が跳ねる。
「可愛い…」
消えたはずの夜の名残。
それが、体の中でぞわぞわと首をもたげはじめる。
「…遊ばないでください…」
ぷるっと頭を振って、蓮の指を剥そうと試みるが…。
「遊びじゃないよ?」
分かっているだろうに、少し違う所に答えを落としてくる。
「…そんなひどい人なら…。ジュリママに泣きつきちゃうんだから」
蓮の親である、クーとジュリともきちんと対面している。
将来の娘として、可愛がってもらってもいる。
ジュリはキョーコの味方をしてくれるだろう。
さり気無く脅すと
「信じてるって言ってくれないんだ?」
蓮が寂しそうに零す物だから…
「……馬鹿な質問、するからです」
ぷくんっと頬を膨らませて、腕の間から蓮を見上げると…。
「ひやぁぁぁ・・・・」
先ほどよりずっとカッコよくて、ずっと甘い瞳がキョーコを見つめていた。
「ほ、惚れ直しちゃうから…。その顔止めてください~」
キョーコの理不尽な要求には、
「もっともっと好きになってもらいたいから、やめない」
と、もっと甘い言葉で答える。
体調を探っていた指は、悪戯に動くものに変わり…。
項に流れる後れ毛を、つるつると摘む。
小さな刺激に、
「も、きょうはだめです…」
「おあずけなの?」
「ん!! ん!!」
限界を訴えたキョーコは、蓮に無体を止めてくれるよう強請る。
「じゃ、我慢してねって可愛くおねだりして? ここに、ちゅー付きで」
キョーコから離れた蓮の指は、自分のおでこを突いた。
この場所で、キスをしろと言っているのだ。
「うう~…。私が良いっていうまでは、我慢してくださいね」
伸びあがって、指定された場所にキスを二つ。
一つ多くキスを贈ったのは、キョーコが勝手に条件を付けたからだ。
「……努力はしますよ?」
「努力してください。可愛く、強請ったでしょう?」
耳まで真っ赤なキョーコ。
おでこに触れた唇は、熱っぽく熟れていた。
「もっと可愛いキョーコを、知ってるから…。物足りないんだけど…」
「…しりません!!!」
摘まれた唇。
確かに自分でも腫れている気がする。
「おかわり!!」
それを、一気にアルコールを煽り、酒のせいにする。
蓮は苦笑しながらも、空になったグラスを受け取って…。
新しいお酒を取りに行ってくれたのだった。
「あ…。パーティ、またあるんだっけ…」
優雅に動く彼の背中を見て、思い出してしまった。
近いうちに、正装が義務図けられているダンスパーティがあるのだ。
「また、ドキドキするんだろうなぁ…」
蓮の正装を見たら、心臓が破れてしまうかもしれない。
そんな事をぼんやりと思いながら、キョーコの心はそのパーティに飛んでいったのだ。