冷やし京子は如何ですか? -7 | 妄想★village跡地

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いつもお世話になっている『リク魔人の妄想宝物庫 』さんからお預かりした罠です。

1.5周年のお祝いと、頂いていたリクエストが上手くこなせないお詫びを兼ねてのドボンです。



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「ふぐっ…」


蓮の腕の中にいたキョーコが、変な声を上げて固まった。

これで何回目のNGだろう?


「もうちょっとだよ」


少し気落ちした空気がスタジオに漂い、それを敏感に感じ取ったキョーコも申し訳なさそうに謝罪を繰り返す。


(……役得だけど…、これは不味いかな?)


空気の悪くなっているスタジオ。

一つのカットに掛かりっきりになっているので、ちっとも進行しないのだ。


「もう一回、確認しようか?」


「…はい…」


しゅんっと気落ちしているキョーコを腕の中に収めたまま、セットの外にある椅子に誘った。

蓮もそこに掛かっているガウンを纏い、キョーコの隣に腰かけた。

置かれていたコンテを取り、もう一度動作を確認した。


絵としては簡単だ。


まず、もう一人の出演者が布団から起き上がり、セリフ。

枕元に置いてあった、汗ふきシートを取り体を拭く。

シートがキョーコに変わり、抱き着いてセリフ。

汗もすっきりしたもてない男は、いい男に変わっていて…。

キョーコのセリフの後、


「ここで止まっちゃうんだね」


二人で確認しながら、必ずキョーコが止まる場所を確認する。


「ほっぺだよ?」


「ぁぅ…」


「一回練習してみる?」


蓮の言葉に、キョーコは激しく頭を振って、拒絶の意を表した。

そこまで拒絶されると、仄かに傷つく恋心。

キョーコに思いを寄せるのに、こんな事で傷ついてはいられない。


「昔、俺がしたみたいにすればいいんだよ?」


「で、できませぇぇぇん…」


うるうると絶叫するその顔。

この後何パターンか撮影しなければならないのに、初っ端でこけてもいられないだろう。


「最上さん、最上さん」


ひらひらと手を振り、キョーコの意識を少しだけ上に持ち上げる。

え? っと淡く開いた唇に己の頬を押し付けた。

ぷちゅんっと、可愛らしい感触が蓮の頬に広がった。

思わずにやけそうになるのを何とか堪え、


「ね? 簡単だろう?」


と、キョーコの方へ視線を戻すと…。

蓮の頬の押し当てられた唇を両手で覆い、顔を真っ赤に染めて…。


「も、最上さん!?」


ぼろぼろと涙をこぼすその顔に、蓮の方が驚いてしまった。

不破の時とは、また違うその反応。


(そんなに嫌だったのか…?)


計りかねて、化粧が零れている涙をそっと指で拭う。


「ご、ごめんなさい…」


しゃくりあげる声の中、小さな謝罪魔が混ざる。


「ほら、腫れちゃうから…」


キョーコの頭を纏っているガウンに押し付け、きちんとセットされている髪を撫でた。

ひくひくと、しゃくりあげる声は中々止まらない。


「……そんなに嫌なら、変更してもらおうか?」


恋する男心は、ずたぼろだったが今は彼女を落ち着かせるのが先決だ。


「それとも、違うパターンから撮影してもらう?」


落ち着かせるような蓮の声に、キョーコはふるふると首を振った。

どちらも、否定。


「頑張るの?」


今度は細やかに、頷かれて…。


「じゃぁ、泣き止んで。メイク直してもらおうか?」


(『頑張る』か…。そこまで、嫌がられるなんて…)


嫌われてはいないだろうと、と思っていただけに傷口に塩を塗り込められた気分だ。


「良い役だと思ったのにな…」


今までの嫉妬心など、吹き飛ぶくらいいい役だと思ったのに…。

中々上手くはいかないのが、世の中の様だ。


瞼を冷やしてもらい、メイクを直してもらっているキョーコの横顔を見て…。

己の恋の行く末を苦い気持ちで噛み締めたのだった。

少しぎこちなさはあるものの、何とか撮影を終えることが出来たのだ。

初日はそんな風に終わり、キョーコを送るべく車を走らせたのだった。


「ごめんなさい…」


しょぼんっと肩を落とすキョーコ。

何とか2パターンの撮影は終わったが、残りの2パターンは明日へ持ち越しだ。


(2日間も抑えられてるはずだよ…)


CMの撮影にしては、長すぎる拘束時間。

その理由に、ようやく納得することが出来たのだ。


「NGばっかりで…」


(俺との絡みの時のみね…)


次のパターンの時も、蓮の体を撫でるという演技があったのだが…。

それも何回も撮り直すことになったのだ。

その度に、蓮の体の上をキョーコの手が這いまわり、ちょっとだけ嬉しい思いもしたのだけれど。


「明日は頑張ろうね。早く上がれば、フリーだし。明日は今日ほど密着するのもないし」


「はぅぅ…。ガンバリマス…」


少なくとも、今日ほどNGを出すことはないはずだ。


(明日は、俺が頑張ればいい話だし…)


そう、明日は蓮のターンなのだから。



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