冷やし京子は如何ですか? -6 | 妄想★village跡地

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スキビ二次元創作物の残骸がある場所です。閉鎖いたしました。
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いつもお世話になっている『リク魔人の妄想宝物庫 』さんからお預かりした罠です。

1.5周年のお祝いと、頂いていたリクエストが上手くこなせないお詫びを兼ねてのドボンです。



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この世の中に一点しか存在しない、『冷やしキョーコグッズ』

これを手に入れたのに、蓮の心はちっとも休まらない。

一時は休まったのに、あのCMに続きがあると分かっただけで…。


(いらいらする…)


キョーコに当たっても仕方ないことだし、社に行っても仕方のないことだ。

頭では分かっているのに…。


「…第三弾って、どんなのなんでしょうね?」



たんたんっと、ハンドルを叩く指。

その音に、社は責められているような、一歩一歩断頭台に近づく様な…。

そんな気分になってしまう位、車の中は冷え切っていた。



「………知りたいか?」



「社さん、知ってるんですか?」



「知ってるっていうか…。お前にもオファーが来てるんだよ」



「出ます」



内容も聞かないのに、蓮の言葉は即決だった。



(っていうと思ったよ…)



社としても想像出来たことだ。

だからこそ、言い出しにくかった部分もあるのだ。



「相当タイトなスケジュールになるぞ? 向こうも、ダメもとで打診してきてるみたいだから…」



社は鞄に仕舞い込んだ書類を引っ張り出した。

丸2日拘束されることになる。

それでなくても、みっちりと詰め込まれているスケジュール。

遣り繰りは出来るが、前後に振り分けると



「深夜撮影っていう日が、4日も続くんだよなぁ…」



ままある事とはいえ、出来ればこんなタイトなスケジュールは組みたくない。

コンディションにも影響するだろうし、なにより…



「丸々2日キョーコちゃんといられるスケジュールと、二人だけで過ごせる時間があるスケジュール。どっちがいい?」



このCMを突っ込まなければ、2日ほどはキョーコと食事をとれるような、ゆとりあるスケジュールなのだ。

ある意味究極ともいえる選択に、蓮は物凄く迷った挙句…。



「CMを、入れてください…」



と、丸2日一緒にいられる方を選んだのだ。

内容も確認せず、受けることはあまりないのだが…。


(キョーコちゃんが出るから、こんな無理をするんだよなぁ…)


社も想像できたことだ。

オファーが来れば、必ず受けるだろうと…。


「グループ会社が出してる、汗ふきシートのCMみたいだ」


「随分飛びますね」


「売れ行きがあまり良くなかったんじゃないか? 元々第三弾何て、企画されてなかったみたいだし…。あのCMの人気にあやかって、知名度を上げようっていう腹なんだろうよ。で、キャスティングが決まっているのは、第二弾のときのメンバー。そこに、もう一人『いい男』を加えて、三人で撮影するそうだ。良い役だといいな」


「その三人目候補に選ばれたんですね?」


「うん。他にも声をかけてったみたいだから…。本当に、ダメもとなんだろうな」


社のからかいに、蓮は無表情だったが…。

その心の中では、そうあってくれと…。

願っていたのだった。

社の素晴らしい手腕によって、調整されたスケジュール。

みっちりと詰め込まれたそれをこなす間は、キョーコに会う事が出来なかったが…。


(丸々二日、一緒にいられるんだ…)


そう思うだけで、どんなつらい仕事もタイトなスケジュールも、あの嫉妬心を呼ぶCMを見ても、なんとか耐えることが出来たのだった。

そして、待ちに待ったCM撮影当日。


「お待たせ」


蓮はキョーコを言いくるめて、だるま屋まで迎えに来ていた。

まだ朝も早く、交通機関も不安定だからと…。

良く分からない説得に、キョーコも応じてくれた。


「ありがとうございます。わざわざ…」


「気にしないで。どうせ途中だったんだから」


東京の少し外れにある、スタジオ。

そこに行くのには、だるま屋の傍を通るのも事実だった。


「今日は一緒に頑張ろうね」


「はい…」


蓮はまだ何の説明も受けていない。

けれどキョーコは、衣装合わせも兼ねて絵コンテを見ているらしい。

蓮の言葉に、少し困ったように瞳を伏せたキョーコ。


「…あの…、怒らないでくださいね…?」


「??」


キョーコの言葉の意味は、全く分からなかった。

その時は…。


(……これの事を言ってたのか…)


現場につき、絵コンテを見せられた蓮は納得してしまった。


(他の奴にやったんなら…。怒っただろうけど…)


説明を受け、自分だけ衣装合わせがなかった意味も、理解した。


「じゃぁ、上半身裸で、いればいいんですね?」


「うんそう。セリフはこれだけ」


「…結構パターンがあるんですね?」


「テコ入れしたいみたいなんだよな。何パターンも作って、垂れ流したいみたいなんだ」


「わかりました」


キョーコが着替えをしている間、蓮は簡単に打ち合わせを済ませた。

広いスタジオの中には、一人暮らしの男の部屋が作りこまれている。

散らかったそこには、乱れたベッドや脱ぎっぱなしの服。

使ったままの食器などが、リアルに再現されている。

洗面所や風呂場も、しっかりと作りこまれている。

こんな部屋に入ったことのない蓮は、興味深くセットの中をうろうろとした。


「あんまり引っ掻き回さないでくれよ?」


監督の言葉にうなずいて返事を返して、キョーコの登場を待ったのだった。


「京子さん、はいります!!」


セット内をうろうろすること暫し。

衣裳さんの声と共に、キョーコが鮮やかなブルーのパレオを身に纏い姿を現した。


「よろしくお願いします!!」


白で南国の花や葉っぱが染め抜かれているそれ。

南国の海出来る様なホルタ―ネックのドレスは、今までのCMの中で一番布の面積が多い。

それに安堵しながら、がっかりしている自分もいて…。


(まぁ、むやみに肌を晒さない方がいいよな…)


がっかりする己を、そう慰めたのだった。


「最上さん、よろしくね」


「よ、よろしくおねがいします…」


共演者としての挨拶も交わして…。

挑んだCM撮影。


蓮はこのCM撮影に、なぜ2日も時間を取られたのか…。

身をもって知る羽目になった。



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